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七十八話 日本を密かに牛耳る巨大組織が結成され始めている!

 穂村の予言、日本のディストピア化を避ける事が出来ず俺自身も化物になってバッドエンド。からの過去改編での世界再構築で逆転勝利して俺達は何とか日常に戻ることが出来た。もう洒落にならないレベルの大事件だった。何で無事に終われたのか未だに分からんくらい。

 この結末の8割が安倍晴明の筋書き通りだったと言うんだから頭がおかしいと思う。アイツの介入を最初から調べてみたら拓巳に忠告のフリをして、戦力を引き連れていく必要があると翔太を置いていかないよう唆してやがる。掲示板に意味深な書き込みをするだけで、安倍晴明はSCP財団エージェント『包帯男』を誕生させる為の布石を打っていたのだ。


 今回はこれ以上ないハッピーエンドに終わったが、安倍晴明は場合によっちゃ誰かを人柱にして事件を収束させるタイプだな。あまり当てにしない方が良い。

 たとえば俺が正気のまま邪神に侵食された現神と対峙をするのに、ヒュプノスにオーディンの神格を取り戻させるのに、田中沙織の自殺が必要だと判断したら安倍晴明は躊躇なく上司を煽るだろう。その仮定だと、後でエインヘリヤルとして復帰するのを見越した上で犠牲を許容している節もあるから判断に迷う。

 おそらくユカリから良識を消して、未来視の能力を与えたのが安倍晴明なのだ。ユカリもまたポン太が陽子を殺したと判明した時、あらゆる手段を使って不死身の殺人鬼を殺しきった才媛だからな。チート云々じゃ計り知れない次元の、計略が裏で張り巡らされていたのだ。


 もう考察するだけでお腹いっぱいだが、その安倍晴明でさえ現神には抗えないらしい。

 じゃなきゃ日本を窮地から救う為にポン太を前もって殺すなり逮捕させるなりしただろうし。そうしなかったのはロキ、遊戯の現神に禁止されていたからかな。面白いかツマラナイかで判断する現神の琴線に触れるような計略でないと引っ繰り返されるのだろう。そして陽子が死んでしまえば伊邪那美命が動き出す。陽子の死と日本の黄泉化はセットなのだ。


「伊邪那美命が陽子の死をトリガーに眷属を誕生させていたのは、本当に陽子の哀しみに同調したからかもな。安倍晴明に陽子を救わなきゃ世界は救えないのだと釘を刺して、犠牲にさせないよう動いていたんだと思う」

「……その為に数千万人が死ぬような事態を招いたってのか。日本で毎年何件の殺人事件が起きてると思う。山川陽子だけが特別扱いなのは何故だ?」

「そりゃ簡単な話だ。陽子の声が黄泉の伊邪那美命に届いた。そんだけだよ。俺にはちょっとだけ気持ちが分かる」


 事件の関係者を集めた会合の際、公安警察の渡辺刑事にそう俺は答えた。

 俺もまたクトゥルフクリーチャーと混ぜ合わされて世界の礎みたいになってた時期があるからな。触れ合える位置にタラコ唇さんがいなかったら、耐えられなかったと思う。反応は出来なかったけど、確かに声や暖かさは伝わって来てたんだ。


 納得いかなそうな渡辺刑事に神に寵愛された人間が神話に登場する事は稀によくあるだろって言ったら、そういうモノかと呑み込んだようだった。

 公安は邪神系のカルトに対抗しなきゃならんから、ある程度はオカルト知識を知る必要があるのだ。これからは八咫烏の協力を得られるはずだが、根本的に手が足りないからな。

 それに事件が未然に完璧に防がれた事で逆に公安警察の上層部はオカルトを認めようとしなくなったから連携も取りづらいし。公安警察でも何とかオカルト派閥を結成しようと渡辺刑事は請け負ってくれたが、端から見たら洗脳されたようにしか思えないしな。ちょっと厳しいかも。


 今回の会合は事件の顛末をそれぞれの視点から補完し合うだけではなく、日本の霊的防衛網を復活させようという試みのつもりだったんだが、まだ時間が必要らしい。まあ、宮内庁に通じる八咫烏と民間の霊能結社である稲荷の会と森田刑事の入った警察のオカルト派閥に世界的な秘密結社であるフリーメイソン日本支部にチートを配れる俺と世界を救った穂村が集まって連絡先を交換したってだけでも十分な成果だ。

 これからは『囁くもの』の影響で民間の異能者も自然と生まれてくるだろうし、公安も何時までも知らぬ存ぜぬでは立ち行かないだろうしな。


 いやその前に、新世界創造計画が本格始動すりゃ無視できないか。もう八咫烏を通じて宮内庁には知らせてあるし。

 これから裏でユカリと宮内庁のお偉いさんの会議をセッティングしなきゃならなくなったセイは既にウンザリした顔をしてたな。その気持ちはよく分かる。

 俺も場合によっちゃ政治家と会食しなきゃならんらしいし今から憂鬱だ。


「叔父さん。生きてるならもっと早く説明して下さいよ」

「あー、すまんな拓巳。霊能力を育てる邪魔になっちまうんじゃないかと思ってな」


 その前に甥へ釈明する羽目になったが。ま、嬉しい悲鳴って奴か。日常が戻らなきゃこんな苦労を感じることも出来なかったんだ。

 やっと、時間にして20年ぶりの平和な日々。共感してくれるのは穂村や遠い世界のもう一人の翔太くらいだろうが、もう世界なんてしばらくは救いたくはないな。



「それで先輩。あの私はどうしたら?」

「沙織はワンダーランドのマネージャーとして働いてくれりゃいいんだぞ?」

「いえあの。私って社会的には死人なんですけど……」

「あ」


 …………。ユカリ経由で政治家に便宜を図って貰うっきゃないな。

 めんどくせぇから、沙織はもうちょっと死んでて。

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― 新着の感想 ―
[一言] 世界何て救わなくていい、俺たちは日常いちゃラブパートがみたいんや!
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