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偶像の叫び声4

 雨が降っている。

 空から絶えず鉄錆のような味のする赤い雨が降っている。


(何で?)


 陽子は動かない身体で考える。

 どうして、こんな事になったのか。


(何で?)


 陽子の近くに落ちていたスマホがザーザーと耳障りなノイズを発しながら音を奏でた。


「――リラコラボを――注目――間接的にメッセージを――――――」

「アリス姫――――アイドル――――所属しないかって――――――」


(何で?)


「――――新しい仲間――――――――――」


(何で?)


 過去と今が交わり記憶から、かつての声が呼び覚まされる。


『私らはお前の引き立て役じゃないっつの』

『何か醒めた』

『長時間粘ってキモいんだよ』


(何で?)


 そして最後に、その男の声が木霊した。


『アイドルとしても三流のゴミ屑が泣きついてきてんじゃねーよ』


 陽子は心の底からの衝動を言葉にせずにはいられなかった。



【何で、殺した?】



 アリス姫と契約を結んだエインヘリヤルが死に際に見る黄金の光が、陽子から湧き出てきた黒い瘴気に遮られていく。

 呪いが魂の穢れが陽子の目を曇らせていく。尽きることのない無念に瞳から血の涙がこぼれ落ちた。


【何で何で何で何で何でどうして何故なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで】


 疑問の言葉が陽子の口から絶えず放たれ、それが呪いの言葉になるのにそう時間は必要なかった。


【何で私だけが不幸なの?】


 陽子の一言一言が言霊になり、アイドルマインドのチートによって周囲に拡散されていく。


【何でこうなったの?】


 血の雨が豪雨のように降りしきり陽子の全身を濡らしていく。

 もう、黄金の光は何処にも見当たらない。


【何で!!】


 陽子の叫びが世界を揺るがし。

 その声は根を伝い地の底にまで響き渡った。


其方そちも裏切られたか」


 陽子の悲痛な叫びは、黄泉の国の女神の許へすら届いたのだった。

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