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五話 祝え、仮想生命体の誕生だ

 姉、前田祥子まえだしょうこの覚醒したチートはエナジードレインだった。

 ほらサキュバスとか吸血鬼とかが人間から生命力を吸い取るやつ。姉ちゃんの感覚では寿命を延ばすだけでなく、生命エネルギーを溜め込むほど身体が活性化していき強力な個体へと変貌するようだ。


「化物やん」

「ちょっ、お姫ちん!」


 タラコ唇さんが慌てて口を塞いでくるが、こんなの家じゃ単なる軽口なんだよな。


「クククッ恐ろしいか?」


 ほら玄関に飾ってある花から精気を吸い取って枯らしながらポーズ取ってるじゃんか。

 自然からでも吸収できるなら飢えて人を襲う心配だってない。なんちゃって吸血鬼だな。


拓巳たくみにバレないようになー。姉ちゃんの子供と思えないほど堅物に育っちゃったし」

「んー、旦那と離婚して苦労かけちゃったからなぁ。近所にあるからって寺に預けたりするのは早計だったかも」


 両親も病気で早めに亡くなったので、実家は姉ちゃんとその息子の二人暮らしだ。

 幼稚園や保育園も近くにないので近所の寺の住職さんがよく面倒を見てくれていた。

 心霊体験なんかをちょくちょく経験したらしく、対策として経典を空で唱えられるほど読み込んだりもしてるので前田家の血を引いているのは間違いないんだが。

 今も何やら中学校のクラスメイトとお寺で泊って座禅をしてるらしい。コックリさんに憑かれたとか何とか。

 俺からしたら中二病にしか思えないんだが、本人達はマジでやってるから茶化すのも憚られるんだよな。


「それじゃ俺らは東京に戻るけど、会社から電話があったら上手く誤魔化しといて」

「はいはい。というかマンションの契約解除とATMから現金を引き出すのはアンタでも出来たでしょうに」

「監視カメラに姿が映るだろ」


 他はともかく他人の通帳から現金を引き出すなんてもろに犯罪だ。パスポートもないのに警察に目を付けられたくない。

 リュックには150万ほどの現金が放り込んである。チートがあろうと収入が途絶えるんだからこの金は確保する必要があった。

 失業手当も本人確認が不可能だから手に入らないしな。くそっ。

 半端に通帳に金を残したのはネトゲの月額料金の為だ。オンラインゲームの月額料金なんて数千円で済む。数十万も通帳にありゃサービス終了まで平気だろうが余計な出費は減らすに限る。


「それより同棲するってことは本当にそういう関係なのね」

「え、ええっ!? い、いえ。外国人の未成年が一人暮らしをしてるのはおかしいからホームステイをしてるって設定にするってお姫ちんが……」


 あたふたしてるタラコ唇さんを見てニヤリと笑う姉ちゃん。

 上手くやったわね、と目で語ってくる。

 だろう? と目で返答しておこう。


「それじゃ拓巳によろしくなー」

「ええ。今度、遠縁の親戚だって紹介するから、そのつもりでね」

「ウィーッス」


 これで何とか現代社会に順応できたかな。大手を振って生活できる。

 現金収入がないのは変わんないけどさ。このままじゃタラコ唇さんのヒモになっちゃうよ。

 外人だってだけで働き先は限定される上に14歳の未成年じゃバイトも厳しい。

 ブレイブソルジャーのギルド連中にタラコ唇さん以外の死者はまだ出ていないからタカルのは駄目だ。オフ会なんて開いたらタラコ唇さん諸共、オフパコ狙いの男共に群がられてギルド内の人間関係が破綻してしまう。リンクのシンクロ率を鍛える為にこれまで以上の連携が必要とされる時にそれは愚策なんてものじゃない。


 どうするか。タラコ唇さんと恋人繋ぎを楽しみながら帰宅の途についてると自然とそんな言葉がこぼれ出た。

 雑談ついでに考えてることを相談すると、アリス姫を初めてリアルで見た時と同じ目でタラコ唇さんは妄言を吐き出した。


「お姫ちん! それじゃVtuberになろうよ!!」


 オタク君さぁ……それ君が見たいだけだよね?

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