#11 Revealing/魔王城
王都が襲撃されているという光景を確認したレベッカ達は、早急に向かうことになった。とはいえ、こちらもマトリクスを取り上げるつもりで向かっていることを忘れずに。到着し、状況確認のため城内に入り、玉座の間へ駆けつけた。その頃に襲撃者は既に去っていた。そこに王様が倒れていて、ボロボロ状態だ。
「魔王だ。魔王にマトリクス取られた。」
王様の言う限り、イレギュラーの仕業ではなさそうだ。そこでネメシスは王様に問いかけた。
「どの魔王だ?」
「おまえら知らないのか?魔物の王、モンキングに余のマトリクスを奪われたのだ。」
「マトリクスを奪われたのはわかった。それで本拠地に心当たりはあるのか?」
「過去に魔王を倒すよう、いくつかの勇者を送り出したのでわかる。グリズリーの森のすぐそばだ。」
レベッカの反応は聞いての通り。
「うぇ...。魔の巣くつそのまんまじゃない...。」
「そのルートを教えて。すぐそばだけじゃわからない。」
「ウルフマンに任せるとよい。」
「ああそう。本当はわからないだろ?何もわからず、生半可な王様なぞ信用できんな。」
「ちょ、黒お主、王様に対してなんという無礼をしている!!」
「カイル、よせ。いいのだ。余は生半可な王様なのだよ。」
王様はあっさり認めた。
「いくぞ貴様たち。」
王都を後にし、グリズリーの森に向かった。当たり前のようにウルフマンが立っていた。
「部外者は断じて立ち入らせん。」
今までのウルフマンとはガラッと違うようだ。
「進入させない事情はあるのか?魔王の差し金か?」
「...そうだ。部外者を追い返すことが俺の役目だ。誰であろうと立ち入らせん。」
「お主、赤ずきんの友人だろう?なぜ魔王につく?」
「それは......。」
ウルフマンは動揺したかのような素振りを見せた。
「もしかして、赤ずきんは拉致されたとか?」
「そうじゃない!!」
ネメシスはウルフマンに剣を向けた。
「じゃあ、魔の本拠地まで案内してもらおうか。」
「わかった。(魔王の命に背くことはあってはならんのに...。)」
仕方なく、レベッカ達を本拠地まで案内した。
ここは魔の本拠地「魔王城リーッター/Reehtah」。いかに魔らしい雰囲気だ。グリズリー増殖場というゾーンがある。...ということは、増加の原因はまさにこれである。グリズリーの森は魔王モンキングの管轄下にあるという事実を知ってしまうレベッカ達であった。
「いびしい養熊場ねぇ。え、これって魔王の趣味?」
「熊を飼育して何になるというのだ?」
最近の熊出没頻度高と繋がっているような言いぶりである。
「あら、柵がない。どうして?」
「なるほど。放し飼いならぬ野放しというわけか。このままでは村が危険だ。」
「案ずることはない。村に接近できないよう結界を設置してある。」
「丁重なご説明ありがとうウルフマン。」
それを聞いて安堵しているうちに、城の入り口まで来た。見張り、門番がいるみたいだ。ウルフマンは門番に交渉を持ちかけた。
「城内に入れさせてくれないか?」
「おめえ、部外者を連れてきたんだろ?」
案の定、面倒なことが起きることに。
「さてさて...どうしよう...。」
「ワタシを忘れては困りますよぉ~。」
振り向くと、前回では出番少ないスカルファイアがいた。
「スカルファイア!?どうしてここに?」
「やだなぁ~。ワタシはただの空気かと思ったら大間違いですよ~。で、お困りですか~?」
「かくかくじかじかだよ。」
密かについてきたスカルファイアに事情を説明した。
「...なるほどですね~。部外者を追い返さなかったせいということですか~。」
「さて、どうすればい......いい考えを思い付いた。」
「どうかしたですか~?」
「門番の気をそらしてよ。」
「ワタシの扱いが雑に見える頼みですが~...そんなアナタがたのために引き受けましょう~。」
「よし、そうと決まれば実行しよう。」
スカルファイアの役目は、門番の注意を引き付ける事だ。
「誰だきさまは!!」
「ワタシは通りすがりの頭蓋骨ですよ~。」
門番の気をそらしている間にレベッカ達は、こっそりと城に進入した。
「許してくれよウルフマン。目的のためなのだから、君を捨て駒にするしかないのだよ。」
「どれだけ冷徹なんだよ貴様は。」
ここはリーッター城内。ダンジョン系ではなさそうだ。
「魔王の玉座を探さねば。」
「ここはいつも通り、二手にわかれよう。」
「私は単独でいく。」
「相変わらずだねネメシス。じゃあ、魔王を探そう!」
二手にわかれ、ドアを片っ端から開けていった。レベッカ一同が開けたドアの先には、厨房だった。一方ネメシスは、食堂の部屋に入った。そこにはポークとゴブリン達がいた。
「おお、レベッカ。お元気で。」
「わぁーい、レベッカだぁ!!!」
彼女がネメシスであることに彼らは気づかなかった。
「魔王を探しているのだが...知ってるなら案内してほしい。」
「ははっ、もちろんです!!」
この台詞を見る限り、彼らは快く受け入れてくれたようだ。厨房に入ったレベッカ達の場合は...。恐ろしいのか、厨房から出たのであった。
「今のはマルヴィナだよね?なぜ魔王城に?」
「おそらく、まともな料理人がいない理由で呼び寄せたのだろう。無理はないか。(魔物の手料理が気になるが...。)」
「それより...ん?ネメシスだ。それにゴブリン達がいる。もしかすると...。」
「魔王のもとへ案内してくれてる、ということか。後をつけてみる価値はありそうだ。」
彼らの後をつけてみて、魔王の部屋らしきの大扉前まで着いた。
「こちらです。我が英雄。」
「私が英雄?貴様たちに慕われるかは知らないが、照れるな、もう。」
大扉を開くと、魔王モンキングが立っていた。
「ここは私一人で十分だ。もう下がってもいい。」
「はっ!!」
ゴブリン達は退く一方、レベッカ達は様子をうかがうことにした。
「よくぞ我が城に来たな。マトリクスの奪還が目的で来たのだろう?」
「そうだな...。マトリクスを取り返しに来た。だが私たちは違う。王様の指令ではなくてな、反旗を翻してまで強奪するつもりなんだがな。」
こっそり隠れ聞きをしているレベッカ達の台詞。
「今、私たちって言った?もう隠れる必要ないね?」
「一理ある。堂々と魔王の前に姿を現せばいいかもしれん。」
魔王の前にレベッカ達が出てきた。
「やあ、魔王。君の盗ったマトリクスをこちらに譲ってくれないかな?」
「レベッカが二人...。うぬは勇者レベッカなのか?」
「へ、...あ、そうか。もう一人の私の事だよね?」
「あいにくだが私は勇者レベッカでも誰でもない。別世界から来た者だ。」
「どうも似ているからついに。それに小娘よ、勇者レベッカは何処?」
ずっと空気だったパメラは久々に台詞ありで答えた。
「...行方はわからない...。マトリクスエネルギーの事故で...。」
それを聞いたモンキングはレベッカ達に衝撃の真実を告げようとした。
「うぬらには王様の実態を知らぬようだから、...本当の事を全て語ろう。」
王様の思惑、陰謀。それは、世界を混乱に陥れよう仕組まれていた事だ。過去に発生した事故は、得体の知れないものを召喚しようとするも失敗、「異世界レベッカ」こと「勇者レベッカ」は消息を絶った。おそらく、それを阻止する勇者レベッカと揉め事であろう結果、永久追放という形で排除したという。草の力(緑)、極寒の力(白)、消臭の力、海の力(青)、勇者の力(黄)、灼熱の力(赤)。そして未だ力を回復していないシアンだけは王様の手元に、それ以外のマトリクスは各地にその力を蓄えるよう配置した。更に神殿の改造、仕掛け、試練を用いるといった王様の気まぐれなのか、単なる遊びなのか、彼の意図がつかめない。ただ一つ言えることは、召喚された勇者にマトリクスを集めさせたいだけなのだろう。全て揃えた時、王様は何をしようとしているかは現時点では不明だ。が、近いうちに明かされるだろう。王様は今、密かに尾行していたことをレベッカ達は知らなかった。
「ところで、近いうちに明かされるって?」
「じきにわかるさ、じきにな。」
とりあえず、今まで集めてきたマトリクスをモンキングに差し出した。
「君の持っているマトリクスを含めると、どうなるか。」
7つのマトリクスが揃ったとき、異世界の扉を開くというらしいが......。
「どうやら王様との取引をするまでもなかったようだな。」
「果たして、そうだろうか?」モンキングの一言で不穏な展開が来るに違いないようだ。
「いくぞ、レベッカ。」
その時、前述告げていた通り、王様が乱入してきた。
「王様!?」
「くっくっくっ。マトリクスよ、この世界を支配する力をくれ!!!」
驚きを隠せないレベッカ達、そう来ることはわかっていたモンキング。
「じゃあ、マトリクスを集めさせたのも全部!?」
「余のシナリオだ。計画の道具のおまえらにはよく頑張った。」
聞かされた衝撃の真実は本当だとわかったネメシスは、その怒りを露に。
「貴様ぁぁぁ!!!!!よくも私を騙して集めさせたなぁ!!!!」
「そこ、怒るとこ?異世界の扉を開いてるし、今こそチャンスだよ?」
レベッカは怒るネメシスにツッコミをいれた。
「マトリクスには異世界の扉を開く...そうじゃない。この世界を支配するほどの力があるってことだよ。いや、違う。力だけでも異世界の扉を開くだけでもない。王様の本当の目的は、異世界の扉を通して、私の世界へと乗り出していくつもりだ。絶対にそうはさせない!!」
「ご名答。その通りだよ。」
「じゃあ、わしの彼女は!?」
「召喚師の事か?あいつにはまだ仕事が残っているのだからな。そう簡単に返さん。」
「そんなばかな...。」
「ねえ王様、言いたいことはそれだけ?君の好きにはさせないから。」
「レベッカよ、もはやおまえに用はない。もう一人のおまえのように...いや、この場で捻り潰してくれる!!」
王様との戦いが始まった。レベッカは王様に対して全力をもって止めようと、プラズマ弾を放ちつつも、よけられた。これもマトリクスの力だ。王様の高い回避率はマトリクスの力によるであることはマトリクスを持つレベッカが、一番よくわかっている。相手がマトリクスの力を利用しているのならば、こちらもマトリクスで対抗だ。レベッカは自分持つマトリクスで対抗した。
「私のマトリクスよ、その力を解き放き、愚鈍なる王様を止めよ。」
彼女のマトリクスは光り輝き、王様を吹き飛ばした。王様の中からは禍々しいエネルギーを放出した。イレギュラーだ。実は王様はただの被害者ではない。自身の目的を異世界レベッカに阻止された時の嫉妬によりイレギュラーエネルギーを増大させた自己中心な王様だった。普段、柔らかな口調で話すレベッカが本気モードに切り替えた。
「やはりな...厄災の時と同じだ。野放しにしてはならないな。」
そのおぞましいエネルギーは再び王様にとりついた。彼の持つイレギュラーエネルギーの残留を増大させ、世界の破壊神と呼べるイレギュラーモンスターへと変貌した。
「じゃあ、荒野の秘宝は王様が仕組んだ事かよ...。」
前回の秘宝は王様が仕組んだテストであった。力のテストとして利用されていたという事実をネメシスは痛感した。王様の愚行を目の当たりにしたモンキングは、どうすることもできなかった。
「こうなることはわかっていた。傷つけてまでマトリクスを取り上げたのだが...。予期せぬアクシデントが招いた結果か。」
モンキングには気づいていないだろうが、王都襲撃もレベッカ達を魔王城に向かわせたのも王様の計算の内だ。果たして、王様の愚行で増大した脅威にどう立ち向かうだろうか?
―――――――――――――――――――――――――――――To be continued
*ログブック更新*
〇現在のパーティー
1.レベッカ
2.カイル
3.パメラ
4.ネメシス
5.モンキング
〇マトリクス
全て横取りにされた。