#10 Magmoor/灼熱洞窟
ここはガオ火山。海岸や遺跡同様、有名な観光地だが、あまりの高熱ゆえか観光客が少ないらしい。この火山に到着したばかりのレベッカ達はまだ、灼熱洞窟に足を踏み入れてはいなかった。
「ここはすごく暑い。長くはいられない。」
「当たり前だろうが。暑い洞窟に入れないっての。」
「ねえカイル、君の水魔法ならどうかな?」
「出せたとしても蒸発してしまう。どうにもならん。」
マーシーの独断なのか?勝手に動き回った。
「おっさん、うろつくんじゃない。」
「まあ落ち着いて。マーシーには何か考えがあるだろう。」
マーシーの向かっている先にミアがいた。いつも通り、王様直々の指令でレベッカ達のサポート役を担うつもりでいた。
「ミェオゥ?誰このおっさん...。」
「ミコ...いやミアか。ヴァルキリーと同じくサポーターかい?」
「そうミェオゥ。それより、このおっさん誰ミェオゥ?」
「マーシーの事かい?え、知らないの?」
「知るわけないミェオゥ。それとオミャー、ここすごくアツくて耐えられないミャろう?そんなオミャーのためのアイテムを用意してるミェオゥ。ミェオー、バリアローブミェオゥ。」
レベッカの手に渡したものは、バリアローブという耐火アイテムだった。
「これが耐火ローブか。すごく暑くて堪らない私にとって頼もしい防具ね。恩に着る。」
「好きなだけ持ってミェオゥ。みんなの分も用意してあるミェオゥ。」
「君は着なくてもいいの?」
「私は平気ミェオゥ。」
「ミコと同じ炎の使い手なら平気か。」
マーシーはバリアローブを不思議そうに見ていた。
「マーシー、これがあれば高熱だってへっちゃらだよ。着てみる?」
2人は早速バリアローブを着用した。驚くことに暑くない、気温を調節しているみたいにちょうどいい着心地だ。
「おっさんを追いかけてここまで登ってきたのに......もうヘトヘトだよ......ん?」
マーシーを追いかけて登ってきたネメシス達もローブを見つめていた。
「耐火ローブか?私によこせ。」
すぐにバリアローブを手に取り、着用した。
「着心地いいな。それどころか暑さが和らげてくれる。多めにかいた汗が引いていく。」
ネメシスは気に入ってくれたみたい。
「よし、灼熱洞窟に入ろう。」
ミア以外全員がバリアローブを着用したところで本題に戻り、目的のマトリクスを手に入れるために、灼熱洞窟に立ち入った。温度100℃を超える高熱環境、今のレベッカ達にはバリアローブがあるので、熱によるダメージを防ぐ、高熱環境でも自由に動ける。奥に進むと、あちこちにマグマが溜まっているフロアだ。どれもアツそうだが...。
「モンスターいないのか。」
「アツすぎるこの洞窟にモンスターがいるわけないミェオゥ。」
「そうよね。こんな暑いところにいるわけないよね。」
「お主、そこの頭蓋骨は何だろうか?」
「うわぁ、焼き付かれてお陀仏な死骸......ま、どっちでもいいけどね。」
頭蓋骨はただの死骸ではなかった。
「あのぉ~。何かいいましたか~?」
頭蓋骨が喋った。
「なんだ、生きていたの。」
「ワタシは死骸ではないのですよ~。洞窟で焼かれくたばることで生まれ変わったモンスター・スカルファイアです~。」
「怖っ、でも大丈夫か。マトリクスを探してるんだけど。」
「ご存じありません。だって、ここで倒れたのですから~。」
「なんだ、知らないのか。ところで火山に来た目的は何かな?」
「もちろん、火山に眠っているお宝です~。」
「マトリクスだね。火山に眠っているお宝はこれ以外にないってことだよ。」
「マトリクスだかは存じないですけど、そういうことにします~。」
「おっさんと同じシチュエーションだな。さっさと進もうや。」
急いでるところで次のフロアへ。
何もないサウナフロア。灼熱洞窟にサウナとはいかに?
「サウナといえば銭湯だね。とはいえ、肝心の温泉はどこにもないじゃん。」
「頭蓋骨よ、バリアローブがなくても平気なのか?」
「既に骨だから平気ですよ~。」
「ねえカイル、ここの温度わかる?」
「測定魔法ならあるが...そうだな、測ってみよう。」
サウナフロアの温度は200℃、自然発火してもおかしくないアツさだった。
「これはまずいな。次いこ。」
すぐに次のフロアに移った。
灼熱神殿入口前フロア。岩で塞がれており、進めそうにない。岩をどかそうとするも、表面が高温のため容易ではなさそうだ。
「熱いなぁ。私たちじゃ難しいよね。」
「ワタシは平気ですが~?」
「頭蓋骨は軽すぎで無理だろうが。」
「何か方法はないかな...カイルの水魔法でも蒸発してしまうし...。」
そう行き詰まっている間、マーシーは仕掛けまたはカラクリを調べていた。
「おっさん、何をやっている。無理なものは無理なんだよ。」
ネメシスの言葉に目もくれず続けるマーシー。
「聞く耳もなしか。好きにしろ。」
「じゃあ仕方ない、私のサイクロンで試してみるとするか。」
「ダメ元でやるつもりか?私も付き合ってやるよ。」
ネメシスは前にも説明した通り、レベッカと同等の能力を持っている。ということは、サイクロンが使えるということになる。
「じゃあいくよ。同時が望ましいからね。せーのぉ...。」
二人同時にサイクロンを放った。僅かだが岩は動いた。
「これならいけそう。またいくよ。せーのぉ...。」
サイクロンを放ち繰り返すことで15分後、岩をどかすことに成功した。
「私のサイクロンは蒸発しなくてよかった。」
「わしらはその熱風にさらされるはめになったのだが......。」
「巻き込んで、すまないね。」
「おっさん、道は開いたぞ。いくぞ。」
マーシーは早速、開きたての灼熱神殿に進んだ。
「行動早っ。」
レベッカ達もマーシーの後についていき、立ち入っていった。
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ここは洞窟深部の灼熱神殿。高温環境に適応した種族「マグマン」が建設したらしいが、その真偽は定かではなく、謎が多い神殿だ。灼熱の中でどう建設したのか、構造はどうなっているのかは、気になるところだ。最初のフロアを訪れたレベッカ達は前回同様、一本道で進むことにした。
「アツアツなのに、わりと簡単な構造だね。」
「マグマンが建設したと聞くが、これっぽちの構造とは...。」
「そのマグマンって誰だよ?」
「噂によると、高温環境に適応した種族らしいが、これほどの高温だと建設に無理はありうるな。あまりの高温で、現場から逃げ出したかもしれん。」
「私たちにはバリアローブがある...ってあれ?ミアは?」
「あやつは、ここの高温に耐えきれず逃げてしまっただろう。」
「逃げてなんてないミェオゥ、失礼な!!」
「...まだいけるのか。バリアローブなしのお主には厳しいはずだが。」
「私を誰だと思ってミェオゥ。炎使いのミアだミェオゥ。炎、熱をコントロールできれば、これくらい平気だミェオゥ。」
「ならいいが。しかし、マグマンが建設したといえど、何か物足りないな。手を抜いてるのか?」
「こう言ってる間にも、マーシーに先を越されちゃうよ?」
周辺を見てみるとマーシーは一足先に進んでいた。
「あやつ...勝手な行動をしおって!!」
またまた後についていき、次のフロアへ。
なかなか凝ってるフロア。未完成のくせに、何故か神殿らしい作りだ。古代文明のものらしきが揃ってある。大昔に建設したものとみられる。先ほどの物足りないエントランスは何だったのだろうか?
「ぱっと見る限り、この部屋は最近できた物ではなさそう。...神殿では当たり前のことだね。」
「その前の部屋は最近できたものなのか、はっきりしないのう。」
昔からできただろうが最近のものだろうが気にせずに進むと、そこにマグマンの壁画が描かれてあった。これも最近のものではないらしい。
「気になることがあるけど、マグマンって?」
「衰退していると聞くが...今でもこの神殿のどこかにいるかもしれん。」
マグマン、高温環境に生息する種族だが、何らかの理由で生息数が激減していた。ゆえに火山の外には彼らを見ることはない。マグマンの生き残りがいるとしたら話は別だ。
「どんな種族かな...楽しみだね。」
「きっと、神殿内にいるはずだ。是非、お目にかかりたいものだ。」
幻の種族だろう。といっても、そうとは限らない。カイルの言う、神殿内にいるに違いない。マグマンの話をしている間にも、マーシーは大急ぎで先に進んでいった。
「どれだけ急いでるだろうか、彼は...。」
マーシーは限界だと皆はそう思いながら、次のフロアへ。
恒例のボス部屋前のフロア。エントランスおよびこのフロアの造りは人為的に手を加えていた。マグマンが造りし神殿を改造したとは、立派なバンダリズムだ。その意図とは現時点ではわからない。だが、いずれ明らかになる時が訪れるだろう。
「ボス部屋前といえば、あの鍵。海底神殿の時でもそうじゃない?」
「ああ、そうだな。妙だな...マグマンが建設したとはいえど、不自然な点が多いな。」
不審な点があると思い、マグマンの神殿をあんな風にしたのは感心できないカイルであった。前々回同様、鍵を探すレベッカ。ウツボと同じパターンとは限らない。このフロアで探しても、ボス部屋の鍵は見つからず。考えられるのは意外な場所、つまりマグマンのフロアにあると確信したレベッカはその場所に戻り、くまなく探した。壁画のヒントをもとに辿ると、鍵があった。すぐに手に取り、ボス部屋前のフロアで鍵を開けた。
そこには周辺がマグマの池になっているほか、中央にフレイムドラゴンが眠っていた。赤色のマトリクスは、ドラゴンのすぐそばだった。そう簡単に入手できまいと思ったレベッカ達の選択はそう、戦いだ。ドラゴンに勝ち目はないとわかっててもだ。早速マーシーは最強技を放そうとするが直前に、ドラゴンの鼻息によってダウン。
「一筋縄ではいかないそうだ。」
レベッカはプラズマ弾を放った。結果、効果は抜群だ。ドラゴンにプラズマ系統は有効らしい。それをわかっていて放ったのだろう。ありったけで攻撃している最中に、幻のはずのマグマンが現れた。
「ヤメナサイ。」
お互いは攻撃を止め、マグマンを注目した。
「マトリクスハクレテアゲル、タダチニタチサリナサイ。」
高温に耐久性があるお肌に炎の衣を羽織っている、彼の容姿だ。幻を拝ませながらも、マトリクスを手にすることができた。赤く光るマトリクス。カイルはマグマンに問いかけた。
「この神殿の不審点がいくつかある。エントランスとボス部屋前の部屋について心当たりはあるのか?」
「コノケンノコトダガ、ナニモノカニテヲクワエテイタノハジジツ。カイゾウキョカヲシタマデ。マトリクスヲマモルタメ。」
「ボス部屋前のことはともかく、なぜエントランスだけは物足りないのか?」
「ソレハ...オソウジスルタメ、ゼンブカタヅケタダケ。」
エントランスの件は、清掃あるいは整理のためだった。
「マトリクスを守りたい気持ちはわかった。だからといって、過去の物に手を加えるのは、例え種族の末裔だろうが、あまり感心できん。次からはそうなった時に断ればいい。」
貴重な遺跡に手を加えてはならんとカイルからの警告だった。マグマンの末裔はわかってくれたみたい。無事マトリクスは全て揃えた。これより王都に戻るレベッカ達であった。残りのマトリクスは王様の手にある。それを取り上げようと考えたのだが...王都の異変が確認された。非常事態だ。
―――――――――――――――――――――――――――――To be continued
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