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女の子って感じの名前だと思う。

…母は財布に住所と名前を書くのだろうか。

名前は10歩譲っていいとして住所も書くのは、ちょっと。


うわ、だったら俺はあの拾ってくれた人にとって名前と住所を財布に書く奇特な人の息子という第一印象なわけか。


ちょっとヘコむ。そして気付く。このときの僕は、まだ高島美春の名前を知らなかった。

名前も聞かないで家まで届けて下さいってどんなんだよと更に少しヘコむ。



その前に財布の中に免許証が入っててそれで知ったのかもしれないと気付いてくれ。



ともかく俺は、いいところで止めているゲームに向き合った。

なんとなく集中できなくて、面白くないように感じた。スイッチを切ってからはソファに寝転がり、今の電話のことを考える。


断っておくが、この時点から気になっていたとかそういうわけじゃない。


ただ、女子と電話なんて普段しないから。僕の気持ち的には、今の空模様のようにざわついていた。どしゃぶりってわけじゃない。なんか、台風ってテンション上がらない?そう、おちこんでるんじゃなくて、ざわざわするの。



ぴんぽーん



どれくらい経ったかは知らないが、変わり映えしないチャイムが鳴る。

なるほど拾ってくれた人かなと立ち上がる。


僕は平々凡々は男子中学生なものだから、少し、美人であることを心の隅で期待する。そしたら素晴らしいロマンスがある筈だと考えた。

所詮妄想だ。


がちゃり、とドアを開けるといるのは、やはり同年代くらいの女の子がいた。

顔は、特別かわいいわけでもないが、平凡というのだろう。

目がタレ目がちなのが少し気になるかもしれない。ちょっと残念な気持ちになる。ごめんなさい。


でも、この台風の中たいへんだろうこの人。弱まってきてはいるものの。


あの、と彼女が財布を差し出そうとする前に、


「とっ とりあえず」


と僕は声をあげる。

やばいどもった。落ち着け。


「玄関、入って。雨、すごいから」


言っておくが女子と喋り慣れてない世の男子中学生なんてこんなものだ。ぼそぼそ喋ってしまうんだ。仕方ないだろ。しかも初対面の人なんだから。うまく喋れる奴はチャラ男だけなんだ。


女の子は、「あ、はい」と玄関に入った。

ドアを閉める。


そこで気まずく沈黙になりそうなところ、また声をあげてみる。聞かなきゃいけないことがある。


「あの、名前、何ていうん、ですか。」


ちなみに僕は敬語も使い慣れていない。


その子は高島美春です、と名乗った。場違いなことに、僕は、女の子は敬語を使い慣れてるんだろうなと思った。たかしまみはる。

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