最悪の相性
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「うぁ、ああアアァああアア!!?」
……聞こえた声は、およそ人間のものとは思えないものだった。
まるで、世界が終わってしまうんじゃないかと思えるほどの、獣にも似たそれは、それでも怒りに頭が支配されていた私に冷静さを取り戻させた。
この声は……まさか、ヒロトさん? 尋常じゃない声だ……一体何が起こったというの……?
「……あーらら、どうやら始まったみたいじゃない」
相対するゴディルズは、何が起こっているのかを理解しているようだった。その理由を問いただそうにも、うまく声が出ない。
「はぁ、はぁ……!」
天使の力を解放し、悪魔四神と渡り合うことが出来ていた……いや、最初はこちらが有利でさえあった。それが、今は少し押されている。
いくら攻撃してもゴディルズの肉体には大した効果はなく……その巨体から放たれる攻撃は、徐々に大きな力の差となって表れる。通用していた私の力が、通用しなくなっている。
「どうした……もう終わりかハーフ天使ちゃん? 最初の威勢はどした?」
「はぁっ……くそ……!」
もちろん、簡単に勝てるとは思ってなかった。けど、予想以上に……手強い! こっちはいっぱいいっぱいなのに、あいつは息切れすら起こしていない!
「おいおい、まさかその程度じゃないだろ? せっかくなんだから楽しませてくれよ」
正直な話、そこまで力の差はない。……いや、なかった。初めのうちは。
だが……私の天使の力は、時間に制限がある。それに加えて奴の能力のせいで、苦戦を強いられている。
「“時間が経てば経つほど力が強くなる”……厄介だなぁっ……!」
口の中の血の塊を吐き捨て、これまでの戦いで推測した奴の能力に舌を打つ。力が通じなくなってるのは、私の力が弱まっているからだけじゃない。
私の力が弱まっていく。それに反比例するように、奴の力が強くなっているようにしか思えないのだ。そして奴も、それを否定しない。
「おれぁスロースターターでなぁ。……時間をかけねえと体が起きてくれねえのよ」
一見すると、大して強い能力には思えないかもしれない。強くなってしまう前に倒せばいい……と感じるからだ。けど、奴だって悪魔四神。素の戦闘力だって弱くはない。
それが長期戦になるにつれ、向こうは力を増していく。一方でこちらは体力が削られるばかりなのだ。こんなに相性の悪い相手もそうはいない。
じりじり戦いを長引かせると、戦力は開くばかり……最初こそむしろ私が押していたのに、今じゃすっかり形勢逆転だ。奴に傷をつけられたのも、最初の内だけ。
「俺の能力を見抜いたはいいが、対処できないんじゃどうしようもねえよなぁ。時間を掛ければ俺の力は更に上がる。対してお前さんは……今でも危ういのに、近いんじゃない? タイムリミット」
「くっ……」
やっぱり、バレてる……この天使の力が、限定的な制限のあるものだということが。このまま勝負を長引かせれば、私に勝ち目なんてないことが。
"限定解除"……そう称している、天使の力の解放。元々使うことの出来なかったこの力は、お姉ちゃんの友達であったカーリャさんという天使のの下で修業したおかげで力を扱えるようになった。
とはいえ、まだまだ未熟だ。
それに、神力学園に入ってからは天使の力を解放することはめっきり減ったし……久しぶりに全力を出したから、まだ体が着いて行かない。
私がこの力を扱えるのは、そう長くはない。それに、もし制限時間を過ぎてしまえばそれだけ体に掛かる負担が大きくなっていく一方。
無理をして力を解放し続ければ、どうなってしまうか……
だからこそ、短期で決着をつけたかったのに……! それに、こうやって考える時間も惜しい……!
どうする……この最悪の相性相手に、どうすれば最速で勝つことができる……?




