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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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屈しない精神



---



 メルガディスと交代したのは、奴の姉であり悪魔四神の一角でもあるメルギィスという名の悪魔。奴は“触れた対象を朽ちさせ消滅させる”能力を持っている。



 有を無に帰す力。無から有を生成するメルガディスとは、対を成る能力と言える。正直……やりにくい。生み出す力は、それに対して消してしまえばいい。だが逆はそうもいかない。



 いくら攻撃を放っても、奴の前には消滅させられてしまう。どんなに速く、強大なものでも。その手に触れるだけで。



 目に見えないほどの速度で攻撃を……と考えても、そううまくはいかない。奴は動体視力もかなりのもので、ことごとく私の動きにも対応してくる。



 能力的にも身体能力的にも、メルガディスとは大違いだ。



「ふん……人間の中じゃあんた、随分やるじゃないか。弟がやられるのも納得できるね」



「それはどうも……」



「ま、納得したからって許さないけどね!」



 消し去るだけでなく、当然攻撃も相当なものだ。が、それが大したことないのは私も同じ。



 奴の攻撃を避けた直後、カウンターの要領でレーザーを撃ち込むも……奴の手に触れたそれは、無惨にも消え去っていく。



「ちっ」



 さっきからこの攻防の繰り返しだ。奴の攻撃が当たることはないが、逆に私の攻撃が当たることもない。平行線だ。



 一気に勝負を決めようと……懐に飛び込もうものなら、奴に触れられてしまうリスクが大きくなる。が、やられるのが怖くてこのままあしぶみしているわけにもいかない。



 何せ生徒達が、今まさに最悪の状況下にあるのだ。己の身がかわいくて時間を無駄にするなど、そんな愚かな行為はできない。



 かといって無策に突っ込んでやられてしまえば、それこそ本末転倒だ。



 さて……



「ったく、じれったいねぇ!」



 ……考える暇も与えてくれないらしいな。そう、私から触れないように気を付けていようとも……奴から触れてくることだって、充分に考えられる。



 痺れを切らしたのか、私に向かって飛び込んでくる。反撃の攻撃も、やはり打ち消されてしまう。くそったれ……!



「ならば……」



 私はその場から下がりながら、その間も反撃を忘れない。単なる直線攻撃ではなく、四方八方から光のレーザーを奴に仕掛ける。



 四方八方からの攻撃。これならば全てを同時に触れることはできない。これで仕留められれば楽なのだが……



「しゃらくさい!」



 すると奴は、悪魔の翼を広げ超加速で包囲網を脱出する。レーザーを追尾させても速度では追いつけず、そのうちにも次々とレーザーは消滅させられる。



 あの速度を振り切るとは……!



「ちっ」



「次はこっちの番だ!」



 奴は上空へと飛び立ち、闇のエネルギーを収集させる。それを振り下ろすと、エネルギーから無数の弾が放たれる。上空からのそれはまるで闇の雨だ。



 次々と降り注いでくる闇の雨を、私は体をひねり、下り、回転し……最小限の動きで、その全てを避ける。



「へぇ……無差別な連続攻撃を、大きな動作もなしに避けるとは」



 怪しく舌なめずりをするメルギィスは相変わらず不気味な態度で私を見下ろす。私の攻撃を防ぐ術があるとしても、自身の攻撃は通じないのに何がおかしいのか……



「くふふ……あはははは! やるじゃないか人間……さっさと消してしまおうと思ったが、そう簡単にはいかないらしい」



 高らかに笑い、狂気の瞳を向ける。闇のエネルギーは奴の体を中心に膨らんでいき、力が増しているのがわかる。



 だがいくら力を増したところで、私には通じない。どんな妙な策を講じようと、それらを全て打ち砕いてやるさ。



「はっはぁ……こりゃあきれいに勝とうなんて、甘いこと言ってられないなぁ」



「……っ!?」



 ……次の行動は何か……それは予想外のものだった。油断……していたわけではないが、完全に不意をつかれた。奴はエネルギーの全てを速度に変換し、私に突撃する。



 いくら速度を上げようと、私に狙えないものはない。だからこそ無謀な特攻はしてこないと踏んでいたのだが……



 向かってくる奴に向けて、私は無数の弾丸を放つ。あの速度でこの数の弾は避けきれない……確信があり、そしてそれは実際に当たった。



「っ……!」



 避けない素振りがないわけではない。だが奴は、最小限の動きでしか弾をかわさず、一直線に進むのみ。その身に幾つもの弾丸を受ける姿は、まさに捨て身の特攻。



 まさか、この場面で捨て身の策に出るとは……!



「くっ……これ、は…………!?」



 捨て身に出るとしても、もっと追い詰められてからだと思っていたため……不意をつかれてしまう。それでも、対応できないほどではない。



 触れられないために後ろに跳躍しようとした瞬間……悪寒を、感じる。



 謎の悪寒……それは一瞬の隙となり足を止めてしまい……右腕が、奴に触れられた。



「っ、離れろ!」



 とっさに体を捻り、回し蹴りを放つがすでに距離をとられる。今しがた触れられてしまった右腕をすぐに確認。



 ……私の右腕は、腐り朽ちていた。



「! これは……!?」



「あぁ、外しちまったか。失敗失敗」



 どうやらメルギィスは、狙って右腕を朽ちさせたわけではないらしい。とっさの判断から、体に触れられるのを腕でガードしたためだ。



 だがこのままでは、腐敗の侵食は全身にまで及ぶ。



 状況を判断する最中でも、すでに私の右腕は肘の辺りまでが腐り落ちており、まるでサビが腕全体を侵食していくように蝕んでいく。



 もう一刻の猶予もない。一瞬の隙……情けない!



「くははは!どうだ、腕が無くなっていく感覚などないだろう?もはや助かる道はない! 右腕、そして体全体を腐らせ、最後には存在が消滅し死ぬ!

 顔でないのは残念だが、そうやって徐々に自分が朽ちて死んでいく恐怖に泣き叫ぶがいい!」



 奴の言うように、右腕から体全体を蝕む死から逃れる術はない。……いや、一つだけある。



 それは……全身を侵食されて手遅れになってしまう前に、大元を絶つこと! それは即ち……



 ズバッ……!



「っ! ぎぁ、ん、んんんんんんぅううう!!!?」



 全身への侵食を食い止めるため、侵食が進んでいる右腕を……切り落とすこと! 右腕と体とを切断してしまえば、右腕からの侵食が体全体に移ることはなくなる。



「んぐっ、んんぅ!!」



 己で己の腕を切り落とす……その衝撃はこれまでに経験したものとは比較にあらない。意識が奪われそうになり、汗が噴き出す。本能的な叫びが口から出そうになる。



 しかし、声を出さないために……右腕を切り落とした左手に噛みつき、声を抑えた。それこそが、来る痛みへの精一杯の抵抗。



 切り落とされた右腕は消滅し……後少し切り落とす判断が遅れていたら、侵食が体全体に回り取り返しのつかないことになっていただろうことをうかがわせる。



 一連の私の行動に……さっきまで笑っていたメルギィスは唖然としている。



「……驚いた、まさかそんな方法で浸食を防ぐなんて。……あんた、狂ってるよ」



 神力で血は止められるが、さすがに失った腕までを再生させることは出来ない。しかも右腕は失われてしまい、くっ付けるなんてことも出来ないだろう。



「腕を無くす……はっ。どうだ、弟と同じ痛みを味わった気分は」



 やはり根に持っているのか、弟である悪魔の話をぶつけてくる。……そういえばメルガディスの腕は、私が消し飛ばしたんだったっけな。



「……奴のは、治せるからいいだろ……」



「“治した”んじゃない。“作った”んだ。バカにしやがって」



 ……時間が経つにつれて、少しは落ち着いてきた。無論まだまだ痛いが……話せるくらいには、回復した。



 血も止めることが出来たし、失血死の心配もなさそうだ。



「叫び声を上げれば、少なからず生徒に動揺を与える……そんな理由で声を殺すなんて、全く教師の鏡だねぇ。理解できないが」



 ……奴に理解されているのは気に食わないが、その通りだ。ここで私が叫び声など上げようものなら、周りに少なからず動揺を与えてしまう。



 ただでさえ混乱している中で、そんなことは出来ない。



「その心意気は立派だが……どうする? 腕一本失って、私に勝てるとでも……?」



 ……確かに、腕一本失ったことで私の力は大幅に失われた。だが……だからといって、それが私の負けに繋がる理由にはならない!



「……あいにくと、腕一本なくしたところで貴様程度に殺されてやるほど私は親切ではないのでな」



「……言ってくれるな、クソ人間」



 あぁそうさ。こんなことで屈してはいられない。あれだけ油断すまいと思っていた結果がこれだ……この痛みを教訓に、そんな甘えは一切捨てる!



 それにこんな奴に時間を取られてもいられない。何とか生徒も頑張ってくれている今の状況だが……状況は、悪くなりつつある。



 それは単に、時間が経つほどに悪魔が増えるから、ではない。あんな雑魚悪魔、確かに数は驚異だが一体一体は大したことはない。



 ……だが何だ、先ほど感じた悪寒の正体。何か強大な力が、出現したということか……?

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