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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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再来の悪魔



 会長の相手をネコ先輩に任せた俺とリーシャは、地下に空いた大穴をどうにかすべく走っていた。



 その間も悪魔が襲ってくるが、天使の力を解放したままのリーシャの敵ではない。時間制限のある力だが、力を抑えれば長持ちはするらしい。



「あの悪魔達、全然減ってない! やっぱ大元を絶たないと……」



「ですね!」



 一般的な神力に比べて、リーシャのような天使の力は悪魔には効果的らしい。さらにリーシャは力を抑えているため、このままのペースで行けば問題なく大穴へとたどり着けるはずだ。



 どうかこのまま、何の問題も起きないでくれ……!



「危ない!」



 問題なく……願った直後、危険を知らせる声が響く。弾かれたように辺りを見回すと、死角から悪魔が迫っていた。しまった……リーシャが近くにいるからって、油断していた!



 まずい、避ける時間さえ……



「せいや!」



 来る衝撃に覚悟を」決めたが、それより先に悪魔が吹っ飛ばされる。それを行ったのはアカリであり、悪魔の顔面に蹴りを入れたらしい。何というか、とてもたくましい。



 うまく着地したアカリは俺だとわかっていたのだろう、「大丈夫?」と声をかけてくれる。おかげさまで、怪我はない……



 続いてリーシャに目をやるアカリだが、今のリーシャはアカリの知っているリーシャではない。気づくかどうか……



「……リーシャ? どうしたのその恰好……」



 ……心配は、なかったようだ。確かに天使の翼が生えているし、髪と瞳の色こそ違うが……それくらいで、親友を見間違えるはずがないのだ、アカリは。



 対するリーシャは……今まで自分の正体を秘密にしてきたためだろうか、とても気まずそうにしている。



 だが見られてしまった以上……こんな状況になってしまった以上、もう隠すつもりはないようだ。



「アカリちゃん……今まで黙っててごめんね。私、人間じゃないんだ……人間と、天使のハーフなの」



「……へ、ぇ、そうなん……あ……え?」



 当然だが……アカリは目を丸くして、固まっている。これまでに、実際に神様に会ったり悪魔と戦ったり先生からいろいろな話を聞いたり……



 困惑している周囲の人間よりはある程度の事情は把握している。それでも、目の前の光景はそれら全てを上回る衝撃度だったようだ。



 何せ、親友が……人間と天使の、ハーフだと言うのだ。はいそうですかと受け入れられる案件ではない。アカリの頭は、パンク状態だ。



「あ、あの……」



「ほぉ、それが天使の力ですか」



 沈黙に耐え切れずに口を開くリーシャ。その声をかき消す、不気味な声。それは聞き覚えのあるものであり、もう二度度聞きたくなかったものだ。



 聞き違いであることを願ったその声の正体は……まさか……!



「め、メルガディス……!?」



 そこにいたのは……以前俺達を襲い、アカリと激戦を繰り広げた悪魔四神の一角、メルガディス。こんな状況で……こいつが、出てくるなんて。



 確かこいつは、無から有を作り出すという力を持っている。その能力で作り出した無数の、不死身の兵隊に俺達は苦戦させられたんだ。



 あの時でさえ、厄介だったのに……今は数えるのも嫌になるくらいの悪魔がいる。またあんな真似をされては、それこそ収集がつかなくなってしまう。



 しかし、ここで疑問が。さっき見かけた時は、メルガディスは先生が相手をしていたはずだ。まさか、先生を振り切ってきたのか……?



「あんた、どうして……先生が戦ってたはずじゃ? まさか……」



「殺した……と言えればどれだけ気持ちいいことか。ま、選手交代というやつですよ、私の姉上と」



「姉上……? それって……」



「彼女の相手をしているのは私の姉上にして悪魔四神が一角、メルギィス! 自分で言うのも何ですが、同じ悪魔四神でも私より強いですよ」



―――



 つい先程までメルガディスと戦っていたティファルダは、突如乱入してきたもう一体の悪魔と対峙していた。



 その悪魔こそ、メルガディスが姉上と呼ぶ悪魔であり、悪魔四神の一角であるメルギィスだ。



「会いたかったよぉ。アンタだろ? 私の可愛い可愛い弟の腕を吹っ飛ばした奴ってのは」



 メルギィスは、ずっと探していたのだ。弟であるメルガディスの片腕を吹っ飛ばした人物を。



 だからこそ、メルガディスと対峙していたティファルダを、それこそメルガディス本人以上に恨んでいたのだ。



「その通りだが……別に構わんだろ? 能力で作れるようだしな」



 メルギィスもメルガディスと同じく、人型に近い姿をしている。さらには肌や瞳の色も同じであり、このことからも彼女らが姉妹であることはうかがえる。



 妖艶な雰囲気とは対照的に、今にでもティファルダに噛みつかんばかりの迫力だ。



 だがその中でも一際目立つのは、頭、そして額から生えた三本の角だろう。禍々しい邪気を放つそれは、敵ながらティファルダにさえ美しいと感じられるものだ。



 そして……これまでの発言からして、相当なブラコンであるとも感じていた。悪魔の中でもそういう感情はあるんだなと、密かに思いながら。



「構わんわけないだろ! よくも私の可愛い弟の腕を……生かしちゃおかないよ!」



「そうか」



 激昂するメルギィスだが、そんなものはお構いなしだと言わんばかりに、ティファルダは大気を圧縮したものを大砲のように手の平から放つ。



 相づちがてらにさらっと軽く撃たでれたそれは、しかしかなりの大きさと力を有している。それだけにティファルダの余裕が表れている。



 これが直撃すれば、並みの悪魔など簡単に消し去ってしまえる一撃。メルギィスは避ける素振りさえなく、なぜか腕を伸ばし……手を前方にかざす。



 ティファルダと同じく何かを撃ち放つ様子もなく、大気の砲弾はメルギィスがかざした手にぶつかり……



「……ん?」



 そこで眉を潜めるのはティファルダ。確かにぶつかったはずのそれは、腕一本くらい持って行ってもいいくらいの威力のはずだ。



 だがそんな現象は起きず……今しがた放った自分の攻撃が消えたのだ。



 ……いや、消えたというには違和感がある。



「むん!」



 なので違和感の正体を確かめるために、落ちていた木の棒を槍のようにぶん投げる。ただの気の棒も、ティファルダに掛かれば超速の鉄の槍へと早変わりだ。



 目で追うことすら困難なそれに、しかしメルギィスは対応する。



 再び手をかざす。防御にしては心許なさすぎる……鉄の槍は、手の皮をやすやすと突き破り、貫通し本体へと傷を負わせるはずだ。……だが、そうはならなかった。



「……朽ちた?」



 先ほどと同じく、手に触れた瞬間に鉄の槍も消滅したのだ。そう、消滅……なのだが、ただ消えたというにはたはり違和感がある。



 ……そう、ただ消えたのではない。まるで腐った物が、砂のように朽ち、崩れるように無くなったのだ。



「ふん、これが私の力さ。驚いたかい? 私のこの手はあんたの攻撃なんざ簡単に……」



「ふむ。……見たところ、触れたものを腐らせ朽ちらせる……という能力のようだな。それも、大気のような無機物、木の棒のような有機物関係なしに……ということか」



 この能力ならば、どんな強者だろうと簡単にその存在を消すことができる……その自信があったが、こうもあっさりと能力を暴かれてしまうのは完全な予想外。



 冷静なティファルダの分析に、メルギィスは舌打ちする。



「ちっ……そうさ、よくすんなりとわかったもんだ」



「正解、か。ということは……無から有を生成する弟、有を無に帰す姉か。……少々厄介な姉弟だな」



「はん、まあわかったところでどうしようもねえさ。この手が少しでもアンタに触れるだけで、アンタは腐り朽ちていく。文字通りの消滅さ!」



 勝ち誇ったように笑うメルギィス。対するティファルダは、冷静に表情には出さないが……内心で、舌を打つ。



 いくら数が多かろうと、力が強かろうと、それにはそれの対応できる可能性が転がっているものだ。



 だというのに……触れれば終わり、というのはさすがのティファルダも頭を悩ませる。しかも有機物無機物関係なしに、だ。



 これは少々どころではない……それに、本人自身の強さも相当なものだ。さて、どうしたものか……

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