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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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みんなの役目



 狂気に歪んだ笑みを浮かべ、立ちはだかるのは神力学園生徒会長であるアラタ・ナルジヤ。対峙するのは俺、リーシャ、そして生徒会副会長であるネコ先輩の三人だ。



 数の上では圧倒的にこっちが有利だろう。だけど……



 会長はAランク。対してこっちには同ランクのネコ先輩がいるとはいえ、負傷してしまっている。



 それにCランクのリーシャでさえ試合では歯が立たなかったのに、Eランクの……神力を打ち消すことしか出来ない俺に何が出来る?



 普段なら、神力使いにこの神力を打ち消す神力は大きなアドバンテージとなるだろう。だが今の会長には、あの剣がある。



 リーシャと会長は、あれを魔剣と言った。つまり、悪魔の攻撃に対して何の効力もなかった俺の神力では、何の役にも立たない可能性が高いということ。



 だから数では上回っていても……状況的に不利なのはこっちである。しかも俺は役に立つかすらわからない。



「にゃはは、私一人でいいのに」



「何言ってるんですか、その傷で」



「そうです。会長の神力なら打ち消せるので……他は何とかしてください」



 できるのは、来るかもわからない会長の神力を打ち消すことだけ。くそ、情けねえ……辛そうな先輩に、結局は託すしかないなんて。



 ネコ先輩の傷は自身の神力で塞がったとはいえ、派手に動けばまた傷口が開いてしまうだろう。それをわかっていて、何もすることができない。



「じゃ……行く、にゃ!」



「あ、先輩ちょっと待って。傷の手当てを……ってちょっ、待っ!」



 聞く耳持たずに飛び出すネコ先輩の動きは、とても腹部を刺された人のそれとは思えない。リーシャの呼び掛けにも応じるより前に飛び出し……



「はぁああ!!」



 常人では反応出来ないような速度で、会長の懐に飛び込む。そのまま顎から殴るように拳を打ち上げるが……その拳は空を切った。



 会長は大きな動作なく、ただ体を後ろにそらすだけで避けたのだ。



 さすがは生徒会長か……ネコ先輩のあの動きに反応するなんて。



 だがネコ先輩も負けてはいない。避けられても顔色一つ変えることなく、次の瞬間には行動を開始していた。体を一回転させ、回し蹴りの体勢に入っていたのだ。



 ……が、それすらも会長には当たらなかった。否、当たるはずだったのだ……ネコ先輩の“右足が繋がっていれば”。



「っ、あ……ぎ、ァアアァア!?」



 何が起きたかわからない……それは本人も同じだろう。攻撃したかと思えば、次の瞬間には自分の右足が失われていたのだから。



 膝より先を失った右足だけではバランスを保てないのか、崩れ落ちるネコ先輩。切り口からはおびただしい量の血が流れていて、見ているのも痛々しい。



「先輩!」



「次はあなたですよ」



 ネコ先輩の緊急事態に気をとられていたせいか……気付けば会長が、リーシャの目の前に現れ剣を構えていた。



「さようなら、可愛い天使さん」



 横払いに、一線……次の瞬間には、胴体が上と下にわかれたリーシャの姿が……頭をよぎる。最悪の光景は、現実となって……



「っ……! デスピアが……」



 だが聞こえるのは、困惑した様子の会長の声。斬られたと思っていたリーシャは……彼女のいた場所は、光が輝いていた。



そしてその中に、純白の翼を羽ばたかせるリーシャの姿があったのだ。



これが、彼女の言っていた……天使、という存在なのだと、直感した。



「リーシャ……その姿……」



 その姿を見るのは初めてだ。話には聞いていたが、こんなにも神々しく、温かな存在だとは思わなかった。いつものリーシャからは想像できないたくましさも醸し出ている。



「くっ……ついに出しましたか、天使の力」



 会長の放った魔剣を、素手で弾き飛ばしたのだ。全く動じることなく、的確に。その様子からも、力の上昇具合がうかがえる。



 これが、天使の力ってやつなのか。



「面白い……さあ、僕と殺しあいをしま……」



「邪魔!」



「っ!?」



 圧倒的に実力が向上したリーシャを前にしても怯むことなく、会長は戦いを再開しようとする。だがそんな会長に構うことなく、リーシャは会長を吹っ飛ばしたのだ。



 あまりに衝撃的な光景に、開いた口が塞がらない。まさか、吹っ飛ばすなんて……



「先輩!」



 吹き飛ばした会長を気にもとめず、リーシャはネコ先輩への下へ駆け……いや、飛び寄っていく。その手に、切断された足を持って。



 腹部を貫かれた上に足まで切り落とされたネコ先輩は、意識を保つのがやっとといった感じだ。むしろ、まだ意識を保てているのが不思議なくらい。



「はぁ……あれ、てん……し?」



 混濁する意識の中、目の前に現れたのが天使だと錯覚するネコ先輩。だがそれは錯覚なんかじゃなく、本物の天使だ。その正体がリーシャだとまでは思うまいが。



「先輩、待っててください」



 もう切断されてしまったのにどうしようというのか……その答えはすぐに出る。切り落とされた足を、断面部にくっつけるように置き、触れる。



 すると、温かな光が手を包み……それはやがて、切断部を、そして先輩をも包んでいく。



「これは……」



「いたた……油断しましたよ」



 リーシャがネコ先輩に施している何かを見終わるより前に、吹き飛ばされた会長が起き上がる。その手に剣はないものの、その目は確実に俺達を狙っている。



「殺しあいの最中よそ見とは……随分余裕ですね!」



 叫び、その手に青く燃える火の玉を出現させ……それらを無数に投げつける。リーシャは力を使っている手前、別のことに気を回す余裕はない。つまり、俺が対処するしかない。



 俺には、何もできない……以前までの、俺だったら!



「いっけー!」



 すかさず銃を取りだし、放たれた火の玉へと放つ。見事に火の玉に命し、俺の神力……『神力を打ち消す神力』は、はるかに格上のはずの会長の神力をも打ち消す。



魔剣だか何だか知らないが、神力が介入するならば俺にも何かできる!



「! それは……なるほど、あらゆる神力を打ち消す。見ていたときよりも存分にその力を感じられますよ。神力使いには厄介この上ない」



「俺だって、何もできないままは嫌なんだ……!」



 とはいえ、神力を打ち消すだけでは会長には勝てない。試合のように、接近戦に持ち込んだとしても会長相手だとすんなりとうまくいくとは思えない。



 やはり決定打が……



「やるねぇ、後輩」



 バリバリッ……激しい音を立てて、何かが横切る。その瞬間、耳元で囁かれた言葉は……確かにネコ先輩のものだった。しかし先輩は、後ろで倒れていたはずだ。それも、足を斬られて。



「ネコ……!?」



 会長も気づくが、すでに遅い。おそらく、俺に意識を向けていたせいか反応が遅れたのだ。



 先程腹部を刺され、足を切り落とされたネコ先輩は会長の真正面へと移動しており、その速度には俺も会長も反応できない。



 驚く会長の顔に、思い切り拳を突き刺さった。



「びりびり……パァンチ!」



 懇親の一撃は、会長を吹っ飛ばすには充分な威力で。再び吹き飛んだ会長を目で追いつつ、着地を決めたネコ先輩へと意識を向ける。先輩は立っている……両足で。



「にゃ、嘘みたい……体がかっるいよ。すっごい」



 驚いているのは本人も同じようだ。先程まで動けなかったのに、あんな機敏な動きができることに。……斬られたはずの足が、繋がっていることに。



「ごほっ……ネコ、その足……」



「これが、天使の力だよ」



 さすがに効いたのか、会長は鼻から血を流している。対峙するネコ先輩の隣には、リーシャが立ち……会長の驚きに、答える。



「程度にもよるけど……斬られた体の部位さえ残ってれば、治すことが出来る。これが、天力」



 にわかには信じがたい話だ……だが、現にネコ先輩の足は繋がっている。千切れた体をくっつけるなんて、恐らくアカリでも無理だ。それだけ、天使の回復力が凄まじいということか。



 神力とは違う、天使の力……天力!



「すげえ……すげえよリーシャ!」



「あはは、ありがとうございます。まあさすがに、死者を蘇らせたりは出来ないんですけどね」



 どれほど致命的な怪我であろうが、治すことができる。それでも、死者を甦らせることはできない。そう語るリーシャの横顔は……とても、寂しそうに見えた。



「くくく……いいでしょう、二人一気に相手にしてあげますよ。来なさい」



 神力を使い魔剣を引き寄せ……手に取る。これで再び得物を手にしたことになり、またも状況は先ほどと同じに。



 だが会長は軽くでもダメージを負い、ネコ先輩は回復。リーシャに至っては天使の力を解放している。



 これならば……勝てる!



「じゃあ先輩、一気に……」



「……いや、ここは私だけでいい。ここは私がやる」



 一緒に戦おうとする提案を、何とネコ先輩は断った。予想外の台詞に、思わず驚いてしまう。だって三人で戦った方が、確実なはずだ。



「先輩!?」



「……キミ達のその力は、必要なものだよ。なら、私よりもこの状況を収めるためにその力を使って」



 そう言って指すのは……今、アカリ達が対応している悪魔の大群。確かに、あれをあのままには出来ない。今こうしている間も、状況は悪くなる一方だ。



 それにリーシャの力も、時間制限がある。ここで少しでも消耗するより、悪魔の対処に使った方が効率がいい。



「私なら大丈夫。これ以上後輩に頼るわけにもいかないし。さ、行って!」



 敵うかわからない相手。だがネコ先輩はそれを承知で俺達に行けと言っている。ならばおれ達が出来る行動は……安心して、先輩が戦う舞台を作ること!



「わかりました……ご武運を!」



「そっちこそ!」



 互いの武運を祈り、俺とリーシャはその場を離れる。向かう先は、地下に空いたあの大穴……あれを何とか塞ぐために、行く!



「どきなさいネコ……僕に敵うと思ってるのですか?ましてや今の僕には魔剣がある。三人で叩けば勝機はあったものを……キミがそんなにバカだったとは」



「はは、かもね。でもさ……勝てないなんて、誰が決めることでもないよ。あの子達にはあの子達の役目がある。私の役目は……会長、あなたを止めること!」



 ……後ろで、激しい爆発音が起こる。ネコ先輩と会長が戦っているのだ。だが俺達は振り返らない。ネコ先輩の想いを無駄にしないためにも。

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