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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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役立たずの葛藤



---



 会場は、すでに火の海と化していた。辺りには悪魔が飛び交い、みんな逃げ回るばかり。中には俺のことを見下していたようなやつらが、声を荒げて逃げているのだ。



 その姿を見てスカッとはしないが。



 人間というものは、弱い者を見下し自分と違う外見、内面の相手を恐れる傾向にある。今回のそれが、いい例だ。



 アカリとオルテリア……先人切って奮闘する二人を見てか、中には共に戦い始める生徒達も次第に増えていく。



 だが、神力によるテストや授業ではなく、実戦……それも未知の生物相手にだ。皆動揺している。



 加えて、アカリやオルテリアにとって簡単に倒せてしまえる悪魔でさえ、並の神力使いは手を焼いてしまう。



 どの悪魔も同じ姿で、モブみたいなくせにすんなり倒せるとはいかないらしい。



 中にはリーシャのように自分の得手不得手を理解し、それをうまく使い分けることで戦いに加わっている者もいる。



 例えばリーシャなら、コントロールがずば抜けているのでそれを活かし、うまく攻撃を回避したり急所を狙い戦っている。



 逆に、俺程ではなくても力が弱くて戦えない者はそれぞれ火を消したりして、少なからずサポートに回っている。



 戦える者と戦えない者に分かれていく。ここは学園とはいえ、神力という力を扱える生徒の数がかなり多いわけでもない。だから、数の上では悪魔には敵わないのだ。



 それをカバーしているのが、Aランクの神力使い……特に、アカリとオルテリアだ。Aランクほどの力ともなれば、悪魔程度なら対して苦戦はしないらしい。



 それでも押しきれないのは、地下からとめどなくあふれてくるからだ、悪魔が。



 この状況を好転させるには、地下に空いた穴を何とかしないと……



「……くそ!」



 何も出来ない自分に腹が立つ。俺は戦いにも参加出来ず、被害を抑えることも出来ないでいた。なぜなら……



「うおぉおおお!」



 俺はEランク……考えなくても、最底辺の俺なんかが太刀打ち出来るはずもない。以前までの俺なら、そう思っていたのだ。



 だが、この新しく手に入れた神力なら、もしかしたら何とかできるかもしれない。そう思い、神力を込めた弾丸を、悪魔が放った攻撃に放つ。



 これならば、邪悪な闇の塊を消し飛ばせるかも……



 ……パンッ



 だが弾丸は黒い塊に触れた瞬間風船のように割れ消滅し、勢いを殺すこともなく闇の塊は俺に向かって来る。俺の神力は、悪魔相手にはまるで意味がなかったのだ。



「ヒロト!」



 逃げるのも間に合わない……だが闇の塊に呑み込まれる寸前で、塊が弾け飛ぶ。何が起きたのか……考える前に俺の目の前に立つ背中がある。それはアカリだった。



 悪魔の攻撃に対して神力を込めた拳を打ち込み、消滅させたのだ。レベルが違いすぎる悪魔の攻撃は、アカリの前に跡形もなく消え去った。



「ヒロト、大丈夫!?」



「あ、あぁ……」



 俺を守るように、立つアカリは……小さい背中がとても頼もしくて……



「安心して、ヒロトは私が守るから!」



 ……とても、惨めな気持ちを覚える。俺は……結局、何もできない。何も変わってないのだ。戦うどころか周りのようなサポートをすることすら出来やしない。



 せっかく発現したこの神力も……効かないんじゃ、意味ないじゃないか! 神力を打ち消す神力なんて、こんな時には何の意味も持たない。



 以前と同じ……いや、役に立たない力を得た分余計以前以上に役立たずだ。



「くっ……」



「グルァアアア!」



 何も出来ない自分への憤り……その気持ちが膨らんでいく中、人間ではない……悪魔とも違う声が聞こえた。理性をなくした、まさに獣のような叫び声が。



「うぉっ!」



 叫び声の先には、犬……いや狼? 黒い毛に包まれた獣が、赤い瞳を光らせこっちに突進して来ていた。あれは何なのか、考える間もなくその鋭い牙がぎらりと光り……



「あよいしょー!」



 ……獣は、この緊迫した場に合わないような、気の抜けた掛け声と共に振り下ろされたハンマーによって消滅した。その光景に、あっけにとられてしまう。



「ふぅ……いっちょ上がり!」



「え、エルシャ!?」



 獣を潰して消滅させた人物……その正体は、人の身長ほどもある金色のハンマーを軽々振り回すエルシャだった。彼女はハンマーをぶんぶん振り回し、肩に置くとこちらへ視線を向けた。



「危なかったわねー、今の魔物に食い殺されるとこだったわよ? まあアカリちゃんがいるなら大丈夫か」



「まも……てかお前、そのハンマー何?」



「これ? 僅かにでも戻った私の力なら、こういう武器を出現させることも可能なわけよ」



 どうやらエルシャ自身の力で作った武器のようだ。獣を一撃で消滅させたことから、相当攻撃力の高いものだとわかる。



 エルシャ……やっぱり、こいつはとんでもない奴なんだな。



「全く、うじゃうじゃうじゃうじゃ……嫌になるわね」



 口調こそ軽いが、その声は暗く重い。さらに、表情もこれまでにないほどに真剣だ。この現状とエルシャに何かしら関係があるのか、それはわからない。



 だけど以前、悪魔に襲われた時にリーシャが言っていた。



 襲われたのは、エルシャがいるせいだから、と。エルシャがいるから俺達にも飛び火し、危うく命を落としかけた。そしてエルシャ自身も、それを否定しなかった。



 だとしたら、今回の件も責任を感じているのかもしれない。



「……エルシャ、これは一体……?」



「……見ての通りよ。理由はわからない。けど……悪魔連中が学園を襲撃してきた、ね。けど……何か、変。私が狙いだとしたら、被害を拡大させすぎてる。

 最初から、私一人を狙えばいいのに……まるで、何か他に狙いがあるような……」



 自分の責任を軽減させるため、ではないのだろう。エルシャが言うには、この状況は変なのだと。確かに、エルシャ一人を狙ったにしては規模がでかすぎる。



「それにこいつらの数……異常よ。もしかしたらだけど、この学園に悪魔を手引きした奴がいるかもしれない」



 続いて信じられない推測……それは悪魔を手引きしてる奴の存在。にわかには信じられないが、俺も気になっていた。襲撃のタイミングが、まるで図ったもののような気がするのだ。



 アカリとオルテリアの勝敗が決するかどうかという瞬間。そのタイミングでの襲撃。それは二人の消耗を待っていたようにも、思えるのだ。



「おい、もしそうなら……」



「ま、もしかしたら、の話よ。諸々考えるのは、この状況をどうにかしてからね」



 ……あぁ、エルシャの言う通り今はそんな話をしている場合じゃない。こうしているうちにも、悪魔は増え続けている。



「ったく、せっかくのお祭りが台無しじゃないの」



 そう言って構えるエルシャは、アカリと並んで悪魔達と向き合っている。情けないが、ここは二人に任せるしかなさそうだ。



 神様の力ってやつは、本人曰く残りカスのようなものらしいが……それでも俺達からすれば、とんでもない力だ。しかも悪魔には有効らしく、次々倒している。



 ……戦況は、向こうは数に対してこちらは力で押し切っている。どっちが勝っているとも言い難い状況。五分五分だ。



 だが、やはり動揺が消えないのか……正体不明の敵に対して、ほとんどが力を出しきれていないようだ。それも当然か、俺だって怖い。戦えもしない俺が何思ったんだって話だが。



 何か一つ、敵を圧倒するような何かがあればいいのだが、そんな都合のいい力なんて……



「ヒロトさん!」



 そのタイミングで、俺に声をかけてくる人物が一人がいた。



「……リーシャ?」



 それは、エルシャと同じくこの状況を正しく認識しているであろううちの一人、リーシャだった。



 彼女はCランクの神力使い。だがその正体は、天の力を宿す天使と人間のハーフだ。彼女ならもしかして、この状況を打破することが出来るのかもしれない。が……



「リーシャ、確かキミの力って……」



「えぇ……時間制限付きです。数が多い上に、敵の親玉の姿が見えないのでは無闇に力を使うわけには……いざというときに力が尽きては困りますし」



 問題はある。“限定解除”と呼ばれるそれは、リーシャが普段の神力でなく天使の力を解放するものだ。



 だがその力と引き換えに時間には制限があり、一定の時間を過ぎてしまうと体が壊れてしまいかねないのだとか。




ここまできて正体を隠すつもりはもうないらしいが、この状況では使えない。時間制限つきのそれはいわば切り札のようなもの。おいそれと使うわけにはいかない。



 だがだとしたら……この状況を、どうする? どうすれば、切り抜けられる?

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