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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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裏切りの刃




---



 時同じくして、とある一室。ここは、各会場の様子がモニターできる部屋だ。



 普段は数人の教員しかここには配置されておらず、会場で問題が起これば、すぐに連絡が行き渡り現場にいる者が対処する、という仕組みだ。



 しかし今回、そのような対処はされなかった。なぜか……それは、ここにある惨状が物語っている。



「……どういう状況か、説明してもらおうか」



 部屋に足を踏み入れた人物……ティファルダ・アラナシカは、静かに部屋の中央に立つ男に問いかける。その声には、隠しきれない怒りの感情がある。



「これはお前の仕業か……? なぁ、アラタ・ナルジヤ生徒会長」



 そこにあったのは……無惨にも血を流し倒れている教員達、見るのもためらわれるほどにむごたらしい血なまぐさい光景だ。



 そしてその中心にいた男こそ、この神力学園生徒会長であるアラタ・ナルジヤだ。



 それだけでは彼の仕業とは言い切れないものの……その手に持つ紫色に光る剣、刀身に滴る赤黒い血……何より、その狂気の笑みを見れば一目瞭然だった。



「……これはこれは、アラナシカ先生。駆けつけるのが一足遅かったですね」



 ティファルダの質問に、肯定も否定もしない。しかしその返答こそが、答えであるとも言える。この場で、この惨状を引き起こしたのは彼だ。



 とはいえ、ここにいるのはいずれも実力のある教員達だ。それを一方的に殺したというのか。彼も相応の実力者だが、一人でこの惨状を作り出したとは考えにくい。



「不思議ですか? ここにいる先生方がなぜこんなぼろ雑巾みたいに転がってるか……信頼とは怖いものですね。まさか生徒に後ろから刺されるなんて思ってなかったんでしょう」



「貴様……!」



 楽しげに笑うアラタの言葉に、すべてを察した。悪魔が現れ、誰もが混乱している状況。教師として生徒を守る立場にはあっても、まさか生徒から背中を狙われるとは思わない。



 その心理を利用し、手にかけた。生徒が、それも品行方正で通っている生徒会長の行為に誰しもが混乱し、混乱に混乱を重ね……誰もが状況を理解できないうちに、全員を殺した。



 今会場では悪魔の侵攻が行われている。そこに誰も教員が駆けつけないのは、おそらくあらかじめアラタがこの部屋に全員を集めておいたのだ。



 そして邪魔をしに行かないようにいっぺんに始末した。



 他の会場でも、同じようなことが起こっているとしたら……事態は、深刻だ。一刻も早く対処に向かわなければいけない。



「話は後でゆっくりと…………お前、その禍々しい剣は……?」



「あぁ、気づきました? 魔剣『デスピア』って言うんですよ、かっこいいでしょう?」



「魔剣……どうして、そんなもの……」



 アラタが手にしている得物……それは間違いなく、人間世界には存在してはならないものだ。禍々しい気配を放つそれを、彼は魔剣と呼ぶ。



 そもそもだ。なぜアラタがこんな凶行に及んだのか。なぜ悪魔が侵攻しているのか。そして魔界に存在するはずの魔剣をアラタがなぜ持っているのか……これが偶然なはずがない。



「ナルジヤ、貴様……悪魔と手を組んだな?」



「ご名答! 理解が早いようで」



 そこに、ティファルダのものでもアラタのものでもない第三の声が響く。その声の主は、アラタの後ろからゆっくりと姿を現して……



「お久しぶりですねぇ、先生どの?」



「メルガディス……!」



 それは以前、ヒロト達を襲った悪魔四神の一体、メルガディスであった。アカリと死闘を繰り広げ、寸前のところでティファルダが割って入り追い返したのだ。



 その際、奴の腕一本を消し飛ばしたはずなのだが……



「またその顔を見ることになるとはな。だが……はて、おかしいなその両腕。お前の腕は片方消し飛ばしたはずだが」



「私の力をお忘れですか?」



 消し飛ばした腕が再生している。あの悪魔には再生能力でもあるのだろうか……しかしメルガディスは、己の能力によるものであると応える。



 その能力とは、無から有を作り出すことができるものだ。



 つまり……



「なるほど、消え去った自身の腕の模倣品を作り出した……そんなところか」



「またまたご名答。しかし、さすがに元の腕のようにとはほど遠くてねぇ……!」



 ティファルダの指摘に愉快そうに笑いながらも、その額には青筋が浮かんでいる。どうやら腕を消し飛ばされたときのことを思い出しているようだ。



「貴様がナルジヤをそそのかしたな?」



「それは心外。彼はあくまで、自分の意思で我々に協力を申し出たのですよ」



「……何?」



 この状況を生み出してしまった罪は消えないが、悪魔にそそのかされたなら、まだ情状酌量の余地はある。しかし、これはアラタ自身の意思によるものだという。



 確認のため視線を向けるが、アラタは小さく頷き……



「そうですよ先生。これは全部僕の意思でやったことです」



「そんな……なぜ!」



「先生……僕はね、悪魔になりたいんですよ」



「……は?」



 ティファルダの問いに、当たり前のようにこう答えた。悪魔になりたい……それだけの理由で悪魔と手を組み、手引きし、人を蹂躙したのだ。その理由に吐き気すら覚える。



「そのために、この魔剣……デスピアに血を吸わせているんですよ。そうすれば……」



「そうか……もういい、しゃべるな」



 決して生徒に向けられることのない……殺意という感情が、部屋を多い尽くす。それはティファルダから発せられる凄まじいもので、気配だけで相手を圧倒してしまう。



「やれやれ、この学園の中でも厄介な二人がぶつかるこの時に侵攻を開始したのはよかったと思ったのに。まだあんな力を残してるのが誤算だったと思ったが……やはり一番の厄介は先生、貴女のようだ」



 悪魔の侵攻をこの時に指定したのは訳があった。それはアカリとオルテリアが試合で消耗しきったところを狙ったためだ。



 だが二人は、そんな消耗がないかのように悪魔を相手に戦っている。



 それだけでも誤算だったというのに、その上ティファルダの存在は厄介この上ない。だが出てくるのは、わかっていたこと。



 力の差は歴然。それでも策でもあるのか、アラタもメルガディスも不敵な笑みを浮かべている。



「メルガディス、今度は全身を消し去ってやる。ナルジヤ、お前は生徒だ……三分の二殺しで留めといてやる!」



 殺された同僚達を前に、ティファルダの怒りが爆発した。

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