vs魔
戸惑い騒然となる会場。辺りが混乱に包まれる中、エルシャとリーシャ、二人だけがじっと悪魔を見据えていた。
いつものようなおちゃらけた雰囲気も、おどおどした様子も今の二人にはない。
「一体、何が起きてるんだ……何で、悪魔が……?」
「さあ、わからないわ。けど、これが夢じゃないのは確か。これを止めないと、大変なことになるってのは言えるわね」
「止めるったってどうしたら」
互いに、神様に天使と人間のハーフといった特殊な生まれであるエルシャとリーシャ。二人ならば、この状況下でも何とかできるかもしれない。そんな期待が生まれる。
だが……たった二人であの数に向かうのは、いくら何でも無理だ。神の力が少しは戻ったとはいえ、エルシャはCランクの力しかない。
リーシャに関しては、その力を目にしたことはない。メルガディスに襲われた時は、彼女と分断されていたし。
とはいえ、このまま傍観していても何も変わることはないだろう。
「どうにかして止めるのよ。それに、悪魔が現れたのはここだけじゃないかもしれない」
「え? それじゃあ……」
そうか、別にこの会場だけが襲われたという確証はないのだ。ここはA会場だが……A~D会場、その全ての会場が、襲わているかもしれない。
もしそうなら、エルシャやリーシャといった悪魔に精通した人がいない分危険だ!
「こんなところで悠長にしている暇は……って、派手なのがいるわね」
急がないといけない。そのためどこへともなく走りだそうとしたところへ、エルシャの呆れたような声が聞こえる。
その視線の先を追うと、巨大な火柱が会場をめちゃくちゃにしていた悪魔達を包みこんでいた。
「こ、これは……って、アカリ!?」
その正体は、アカリの放つ神力であだった。あいつ、さっきまでオルテリアとすさまじい戦いを繰り広げてたのにまだあんな力を出せるのかよ?
アカリは、以前悪魔との死闘を繰り広げている。だからこそ、こんな状況にもみんなほど混乱せず対処できたのだろう。
しかし悪魔はあちこちに広がっている、その全てを包み込むことは出来ない。
その派手な炎により、周りの悪魔の狙いが一斉にアカリに向く。このままじゃまずい!
「アカリ!」
「アカリちゃん!」
四方八方から悪魔が向かっていく。しかしアカリは慌てた様子はなく、次の手を……
「私のお友達に、近づかないでくださいまし!」
次の瞬間、アカリに向かっていた悪魔達が一瞬のうちに凍り付いた。凍ったことにより飛ぶことができなくなったそれらは、地に落ちていく。
「あ、オルテリアちゃん!」
アカリを救った神力の正体は、そのアカリとさっきまで激しい戦いを繰り広げていたオルテリアだった。
彼女もアカリと同じく、消耗しているはずなのに……一瞬でこんなことが出来るなんて、さすがだ。
「何が何だかわかりませんが……無事、ですの?」
「あ、うん、ありがと……というかオルテリアちゃん今、私のこと初めてお友達って言ってくれたね! 嬉しいよー!」
「っ、そ、それはぁ……!」
どうやら二人は無事みたいだ。それにしても、こんな状況でも絶えないアカリの笑顔にオルテリアの顔は赤い。真っ赤だ。その光景に、少しだけ安心する。
「はいはい、二人でイチャイチャするのは後でねー」
「してませんわ! まったく…………で、どういう状況ですの?」
俺達三人と、二人が合流。死角を作らないために、五人が背中合わせで輪になる。これで、後ろからの奇襲はひとまず心配しなくてもいいだろう。
「簡単に言うと、こいつらは悪魔って呼ばれる存在。狙いは多分私かなー……って」
「悪魔……って。それにエルシャさんが狙いとはどういうことですの?」
「もーエルシャ、そういうこと言わない。えっと……エルシャは神様で、故郷の天界ってとこが悪魔に侵略されたみたいで、あいつらは生き残りのエルシャを狙って来たの」
「…………え? もう一度お願いします」
「やっぱり、あの時追い出しておけば……」
「リーシャもそんなこと言わない!」
「……私の頭がおかしいんですの? 神様? エルシャさんが? 天界って?」
「あー、まあそういう反応になるよな。大丈夫、オルテリアがおかしくなったわけじゃないから」
いきなりこんな状況下に放り込まれたんだ、むしろこの反応が正常。おかしいのはオルテリアの頭ではなく、こんな状況にしたあいつら、悪魔だ。
このまま好き放題暴れられたんじゃ、いろんなものがめちゃくちゃにされてしまう。物はもちろん、もしかしたら人の命さえも……そんなことはさせない!
エルシャやリーシャ、それにアカリやオルテリアに比べて俺に何ができるかはわからないけど……それでもじっとしてなんて、いられない!
大丈夫だ、この異常にすぐに、先生達が駆けつけてくれるはずだ。だからせめてそれまで、耐え忍ぶ!




