崩壊の始まり
……
「うっ、これ、は……」
……一体、何が起きたんだ。目の前の景色が、ついさっきまでと様変わりしている。辺りは煙が立ち込め、会場が崩壊しかけている。
確か、アカリとオルテリアが戦っていて……二人の技がぶつかり合う直前に、突然爆発が起きて……それで……
「あ、あれ……会場に、穴が開いてるぞ!」
誰かの声に反応し、会場を見る。すると、今まで二人が戦っていた会場の床が……中央辺りに巨大な穴が空いているのだ。。
まるで、地下から何かが吹き出したかのように深い穴だ。
「! この気配!」
「まさか……!」
謎の穴、だがそれが何かを考える間もなくエルシャが、そしてリーシャが反応する。何かの、気配を感じたようだが。
「え、どうしたんだよ?」
この二人が深刻そうな顔をしている……とても、嫌な予感がする。それに、悪寒のようなものが背筋を走っている。
その時……
「キャアアアア!」
誰かの叫び声が聞こえる。ほぼ同じ瞬間に、割れた穴から黒い塊が天高く吹き出してきた。まるで逆流する巨大な噴水だ。
「おい、何だあれ!」
「やばいんじゃね?」
突然の異常事態に、場内が騒然となる。アカリとオルテリアの戦いの影響……でないことは明らかだ。
って、そうだ……
「アカリ!」
あんなものの近くにいたアカリとオルテリアは、果たして無事なのか。最悪の光景が想像されてしまう。
すると、穴より少し離れた場所にアカリがいるのを発見した。反対側には、オルテリアもいる。二人とも無事みたいだ。
「よかった……」
二人の無事を確認するが、この状況の原因は掴めていない。……が、この空気、覚えがある。確か、悪魔四神の一角、メルガディスと戦ったときの、あの……嫌な感じ。
「! くる!」
エルシャがその言葉を放った直後、穴から黒い塊とは別に何かが現れる。さっきのは黒いエネルギーのようなものだったが、今回は違う。
小さな物体が、複数……人型や獣型、様々な形をしたものが、次々と穴から飛び出してきたのだ。地下から、嫌な感じのする何かが……
「悪魔……それに、魔物……」
何か……その答えを、姿を現したそいつらを、エルシャは睨み付けながら、憎々しい声でそう呼んだ。
「悪魔……だって?」
エルシャのその台詞は、とても冗談には思えない。いや、実際にその表情は青ざめてさえいる。
そして俺も……その禍々しい姿を、見間違えるはずもなかった。
目の当たりにした悪魔はメルガディウスという奴だけだが、あの禍々しさは奴に似通うところがある。もちろん、力は奴には遠く及ばないだろうが……
問題なのは、ここにいるはずのない奴らがここにいることだ。何故、こんなところに現れたんだ?
「おい、何だよあれ……」
「何あの黒い翼……まるで、悪魔みたい」
周りは、騒然となっている。そりゃそうだ、今の今までアカリとオルテリアの試合を見ていたのに、いきなりこんなことになっているのだ。混乱して当たり前だ。
みんな空想上の生き物として、悪魔という存在は知っているだろう。だがそれが実在し……しかも、こんな状況で現れるなんて思いもしないだろう。
「! みんな逃げて!」
エルシャが叫ぶが、それと同時に悪魔達の攻撃が始まる。
大群で押し寄せた奴らが放つのは黒い塊。野球ボールほどの大きさだが、それを何十、いや百以上はいるだろう数が一斉に放つのだ。
それはたちまちすさまじい攻撃の嵐となり、辺りを襲う。
会場に張ってあった結界は、先程の衝撃で破壊されてしまったらしい。攻撃を防ぐ術はない。
悲鳴や怒号が飛び交う中、辺りは瞬く間に火の海と化す。何だ、この光景は……
「これはまずい、よな……そうだ、二人共!」
まるで悪夢としか思えない光景が、あっという間に広がっていく。ほんの数分前までアカリとオルテリアの試合を観ていたのに、どうしてこんなことに……?
逃げ惑う人の中、近くにいたエルシャとリーシャの姿が見えないことに気づく。どこに行ったのか、逃げたとは思えないが……いた!
逃げる人の波に逆らうように、二人は悪魔達に向かって走っていた。まさか、立ち向かうつもりなのか……?




