突きつけられる現実
ヒロトと話すことで私の周りは、少しずつ以前のように戻っていて……中学に入るころには、私と話してくれる人達も増えていた。
神力の知識を周りが周知しだした、というのもあるかもしれない。
それでも、私が変わったのか、それともヒロトが変えてくれたのか。彼との出会いがきっかけになったのは、間違いないけど。
「ところでアカリってさ、いつからヒロト君のこと好きなの?」
「っ! ぶふっ!」
できた友達と、こんなことも話せるようになっていた。いわゆる恋ばなというやつなのだが……突拍子ない質問に飲み物を吹き出してしまった。
「あちゃー、何やってんの」
「ななな、何言ってるのかな……わ、私は別に……」
「何、あれで隠してるつもりだったの?」
「正直、あれで気づかない方が無理かなー。好き好きオーラ出まくりじゃん」
「えぇ!?」
「多分気づいてないのは当事者だけよ。彼も相当なにぶちんだからね」
「そそ、そんなあ……」
思い返せば、私ってやっぱりわかりやすい性格だったのかもしれない。自分なりに、結構気を付けてるはずなんだけどなぁ。
「二人共同じ小学校だったんでしょ? もしかしてその時から?」
「……うん」
「キャー! じゃあずっと片想いしてるの?」
「声が大きい! ま、まあ……そうなるかな」
「ねえねえ、告んないの?」
「こくっ……!」
こういう話ができるというのは新鮮だけど、思った以上にこの頃の私には刺激が強かったようだ。
「……おーい。ありゃ、これだけでショートしてるよ。頭から煙出てる」
「単語だけで? 初心すぎでしょ」
こんな風に恋ばなが出来るなんて、以前までなら考えられなかったな。恥ずかしいけど。
「私が思うに、向こうもアカリに対して満更でもないんじゃないかと思うのよ」
「そ、そっかな……?」
「そうだって。で、いつするの?」
「いやあ……まだ、心の準備が。それに、今は一緒に居られるだけで充分というか……」
「……甘い! 甘いよアカリ。チョコレートより甘々だよ!そんなこと言ってるうちに、誰かに取られたらどうすんの」
「……誰かに……」
「ちょ、もう泣きそう! てかマジ泣き!?」
ヒロトが誰かと付き合うって考えただけで、胸が苦しくなっていった。この頃はもう、自分の気持ちに嘘がつけないほどに。
でも、告白する勇気は出なくて。それに……
「そんなになるなら告白すればいいのに」
「……確かに、そうなんだけど。でもヒロト、今それどころじゃないから」
「あぁ、神力だっけ?」
「うん。早くアカリみたいになりたい、なんて言って……張り切ってるの。だから今は……」
そう、ヒロトは今、頑張ってる。だからそれを私が邪魔しちゃいけない。それに私は、頑張ってるヒロトが好きだから。
「それを言い訳にしてるだけなんじゃないのー?」
「ぬぅ、意地悪」
でも……その気持ちがあるのは本当だ。あんなに頑張ってるんだからすぐに私に追いついちゃうよ。それどころか、私なんかすぐに抜いちゃうよ。
でも、現実は残酷だった。
「はあ……今日もダメだった」
「元気出してよ、ヒロト」
いくらヒロトが特訓しても、神力が強くなることはなかった。適正は確かにあるはずなのに、一定の力以上は出ないのだ。
「確かに使えるんだけどな。けど、せいぜいカーテンを揺らすとか、ろうそくみたいな火を出すとか……しょぼいことしかできねえ」
その力は、確かに神力だ。でも、一向に力は成長しないでいた。
だけどそれでめげるヒロトじゃない。それからも、時間を見つけては神力の特訓をしていた。晴れの日も、雨の日も、雪の日も……
「ヒロト……」
そして運命の、神力学園入学……結局ヒロトの神力は弱いまま、神力の専門学校に入学した。この学園は、適性のある者が入ることになる。いくら力が弱くても。
周りは、みんな神力を使える子達ばかり。
入学初日の、神力を測るテストで……私は、最高成績を叩きだした。
「おぉ、すげえ」
「やだ、憧れちゃう」
今まで、周りの人から疎まれるだけだった神力は……この日から、尊敬の対象として見られるようになった。
何だか、誇らしくさえ思えた。
「むっきい! この私が負けるなんて……アカリ・ヴィールズさん! 貴女を私のライバルと認めてあげますわ! 次は負けませんから、覚悟しておくことですわ!」
この時、おーほっほっほと笑う、青髪の面白い人に目をつけられたのを覚えている。
ここなら、楽しくやっていけるかもと……そう、思っていた。
「うわ、何だよあれ」
「しょぼ……あれ神力なのか?」
みんなから陰口を囁かれている、ヒロトを見るまでは。
この神力テストでは、入学してからの各々の神力を測り、A~Dランクへと分けられる。
だけどヒロトが叩きだした成績は、過去にないほどの低数値で……この学園で最底辺とされるDランクの記録を塗り替えた。
本来、ここまで弱い力があるのはありえないらしいのだ。どれも、最低ラインというものがある。
その最低ラインすら塗り替え、学園史上初、Eランクという新たなランクを誕生させることになった。
「ヒロト……その、元気出して? 次のテストでいい成績を出せば、ランクが上がるみたいだし……」
今まで特訓して効果がなかったものが、すぐに効果が出ると思ってるのか? ……ううん、神力専門のこの学園なら、きっとヒロトも強くなれるはず。
私の中で、二つの思いが葛藤していた。
でも……現実はそんなに甘くなかった。
「ヒロト・カルバジナ、Eランク」
ヒロトの成績は一向に上がらなかった。そしてついには、"落第生"と呼ばれるようになった。




