二人だけの思い出
……
「これおかしくないか!?」
みんなと遊び始めたことを、俺は早くも後悔していた。今の状況はというと、俺の首から下が土の中に埋められている。頭だけ外に出て、何だかつくしになった気分……
ってやってる場合じゃない!
困ったように見ているアカリと、満面の笑みを浮かべているエルシャ。
なぜこうなったかと言うと、みんなが見てないうちにエルシャに誘導され、抵抗する間もなく埋められてしまったのだ。あれは驚くべき速さだった。
「え、でもこれがスイカ割りってやつなんでしょ?」
「違う! 何その知識! そもそもスイカじゃないだろ!」
「それもそうね……じゃあこうしましょ」
俺の頭の隣に、スイカが置かれる。
「さて、それじゃ気を取り直して……」
「何も解決してない! 俺を助けろ!」
「…………」
「すでに目隠ししてる!?」
このままじゃ確実にヤられる……逃げ出そうにも、肩まで埋まってるから身を動かすこともできない。やばい、目隠しをしたエルシャがじりじり寄ってきて、このままじゃ……
「ちょ、ちょっと待ってって!」
もうだめだ……そう思った時、俺とエルシャの前に割って入る影があった。アカリだ。
「ほ、ほら当たったら怪我するかもしれないし……やめとこうよ」
いや、かもじゃなく当たったら確実に怪我するんですが。あともう少し止めに入ってほしかったな。
神力が使えれば、防御壁みたいなものを張れるんだが……残念ながら、俺が使えるのはみんなのとは系統が違うし。
「……そうよねー、愛しのヒロト君が怪我でもしちゃったら大変だもんね~」
「なっ、何言って……べ、別にそんなんじゃ……」
アカリの肩を叩き、何かを言っているようだ。会話の内容まではわからないが、何だかアカリの耳が赤いような気がする。
「……ぷ、あははは! 冗談だって、冗談! そんな必死にならないでよ!」
「え、そうなの?」
そう言って笑い出すエルシャであるが……その割には、一切の躊躇がなかった気がするんだけど?
「もー、そうならそうって言ってよー」
そして素直に信じちゃうアカリ。こいつ、悪質な詐欺とかに引っかからないだろうな、不安なんだけど。
「じゃ、改めてスイカ割りしましょうか!」
「その前に俺のこの状態どうにかして!」
……その後、何とか土の中から出してもらった。今度こそ正真正銘のスイカ割りを楽しみ、割ったスイカを射食べる。食後の運動ということでビーチバレーなど、再び思いっきり遊んだ。
そして……楽しい時間というのは、なぜかあっという間に過ぎるものだ。
「はぁあ、遊んだ遊んだ。もうこんな時間……あっという間ねえ」
エルシャがそう呟く。そう、すでに辺りはオレンジ色に包まれていたのだ。
「それでは、そろそろ片づけますか」
「そうですわね」
あまり遅くなってもいけない。なのでそろそろ区切りをつけて、各々片づけに向かう。シートやパラソル、散らかした物の片づけ。それに……
「じゃあ俺はゴミ捨てに行くよ」
海でどんちゃん騒ぎしたんだ、これが一番大変だろう。途中海の家で昼食をとったりと、結構量がある。ま、これくらいなら一人でもいけるだろう。
「あ……わ、私も行く!」
一人で行こうと思っていたところへ、はいはい、と挙手し志願してきたのはアカリだ。そんなに勢いよく……そんなにゴミ捨てに行きたかったのか?
お互いに一袋ずつ持ち、ゴミ捨て場に向かう。持たせるのは悪いと言ったのが、それでは着いてきた意味がないからと正論を返されたため、一袋を持ってもらうことに。
「楽しかったね、みんなで一緒に遊ぶの」
「あぁ、そうだな」
やはり、アカリも同じように感じてくれていたらしい。みんなとの距離も縮まった気がするし、あまり話す機会がないキルデとも話すことができた。
まあ、エルシャとリーシャは相変わらずだったけどな。ビーチバレーの時なんか、リーシャは執拗にエルシャを狙ってたし。しかも結構強めに。
「よし、と」
ゴミ捨て場にゴミを捨てこれにて任務完了、なんちゃって。
あとは、来た道を戻るだけ……だったのだが。
「ねえ、せっかくだから海岸に行かない?」
と、アカリから提案されたために、それに従うことにした。まだ海が名残惜しいのだろうか? ま、断る理由もないから構わないんだけどな。
辺りはすっかり夕焼けのオレンジ色に変わり、片づけをしている家族やカップルが、ちらほらといた。
「わあ……キレイ」
海岸に着くなり、アカリが感嘆の声を漏らす。夕日に照らされた海は確かにうっとりするほど幻想的で、何というかとても芸術的であった。
芸術には疎い俺でも、思わず目を奪われてしまう。
海に来た締めにこんな景色を見ることができるなんて、やはり来てよかった。
それに、アカリが着いてきてくれてよかったな、一人でこの景色を見てもここまで感動しなかったかもしれないし。
「ふふ、やっぱり着いてきてよかった。ヒロトとこんな景色を見られたんだから……二人だけの思い出、だね」
「え?」
この景色に関しても、俺と同じことを思っていたのか。けれど、今の台詞はどこか、ニュアンスが違うようにも感じられた。
俺は思わず、アカリに視線を向け……そこで、目を奪われてしまった。
幻想的な景色を前に目を細め、風になびく髪を押さえながら微笑むアカリは……この景色に負けないほど、幻想的で……とても綺麗だったから。




