アカリちゃん成分
「う……ん……」
翌日、カーテンの隙間から射し込む光で、目を覚ます。目覚ましに設定した時間より、一時間も早く起きてしまった。
やはり緊張していたのだろうか、私は。うぅ、昨日アカリちゃんのおかげで安心したのに……
「すぅー……」
二段ベッドの上の方では、小さな寝息が聞こえてくる。覗くと、そこにはもう一人の住人、アカリちゃんがまだ眠っていた。
……で、だ。その寝姿を見て一言。
「か、可愛い……」
この一言に尽きる。ヤバい、何これヤバい。
アカリちゃんより早く起きると、こうして彼女の寝顔を拝むことが出来る。なので、とても役得なのだ。
アカリちゃんも小柄ではあるが、私よりは大きい。けど、寝ている姿というのは小さく丸まっているのだ、可愛い。あどけない寝顔に、成長しつつある大人の色気も垣間見える。
「んぅ……んへへ、そこはダメだってー、ひろとぉ……」
そんな可愛らしい寝姿とは裏腹に、何の夢を見ているのかと突っ込みたくなる寝言を漏らしている。顔が崩れているけど、よだれすら垂れているけど、それすら可愛い。
それにしても、夢にまで出てくるんだヒロトさん………アカリちゃん、やっぱりわかりやすいなあ。
本人は隠しているつもりでも、一緒に暮らしていたらそりゃあその想いにくらい気づく。もちろん、私がアカリちゃんの想いを知ってることは、アカリちゃんは知らないけど。
ただ……ヒロトさんに対するアカリちゃんの想いは、ヒロトさんの試合の件で、大部分に知られてしまったのは間違いないだろう。
だってアカリちゃん、試合中あんな大胆なことを……
『逃げ回るだけじゃなくて、ちゃんと勝ちに行きなさいよ! 勝って……優勝するんでしょ!? ならこんなとこで立ち止まるなバカァ!!』
きゃああああ! 私もあんなこと言われてみたい! まるで王子様だよぅ……
この一件はあっという間に広まってしまって……『“閃光の輝き”アカリ・ヴィールズ、意中の相手はあの“落第の弾丸”!?』とまで噂される始末だ。
本人はまだ知らないし、おそらくヒロトさんも知らないだろう。噂されるだけで本人に聞きにこないのは、今が神技冠祭でそんな暇がないからなんだろう。
まあ、悪い噂ではないし事実なんだけど。
あぁ、神技冠祭が終わった直後が怖いよ。これを知った時のアカリちゃんが果たしてどんな照れ顔をするか……あ、想像したらよだれが……
「うーんへへ……」
そんなことは知る由もなく、小さく呻きながらもぞもぞ動いている。はあ、見てるだけで癒される。けど、それだけに留まるつもりはない。
「アカリちゃん成分、補給しまーす」
小声で告げながら、アカリちゃんの布団に入っていく。
ふわあ……やっぱり温かい。いい匂いする可愛い……
実はときどき、こうしてアカリちゃん成分を補給しているのです。これで、エネルギーを貰えるような気がして。
今日は、大事な一戦。そのためにも、こうしてパワーを貰っておかなくては……これで私は、もっと頑張れる。そう、これは決してやましい気持ちからではない。必要なことなのだ。
それからしばらくの間……アカリちゃん起きる少し前まで、アカリちゃん成分を補給していたのでした。




