上を目指して
『Aランクアラタ・ナルジヤ選手、Cランクリーシャ・テルマニン選手 明日初戦D会場にて』
そこに書かれていたのは、私、リーシャ・テルマニンの名前だ。そして対戦者には、この学園の生徒会長である男の名。その事実に、思わず背筋が震え上がる。
私が今まで当たってきた相手は、ランクが下の相手や高くてもBランク……Aランクという、あからさまな格上はいなかった。しかも、相手は生徒会長なのだ。
神力学園の生徒会長。この言葉の意味するところは、誰でもわかるだろう。単純に神力が強い……もちろんそれだけではないだろうが、トップクラスに位置する実力者なはず。
アカリちゃんやオルテリアさんとは違い、この学園に長く在籍している分、知識も豊富なはずだ。そんな相手が、私の対戦者。
初日の初戦に比べれば幾分か緊張もほぐれてきたけど、それでもまだ自信満々とは言い難い。
今までの相手でもそうだったのに、ここでAランクか。正直、緊張しすぎでどうにかなっちゃいそう。
でも、他のみんなには心配をかけないように自信満々を演じたしたつもりだったが……
「リーシャ、大丈夫?」
ベッドに寝転びながら心配そうに声を掛けてくれるアカリちゃんには、通用しなかったらしい。
薄ピンクの生地に桃色のシャボン玉のような模様が描かれているパジャマを着ている彼女は、とてもかわいらしい。
現在、その日の行程がすべて終わったためにこうして寮の各部屋に戻っている。
心配してくれているアカリちゃんはというとこれまで、その強大な力で対戦相手をねじ伏せていた。力押し……というのはあんまりスマートな表現じゃないけど、その表現に近かった。
ただでさえ学園内トップの実力を持つアカリちゃんだけど、最近はさらに努力しているようで……今回の戦いぶりを見ていて、以前よりも技にキレが増しているのがわかった。
実力があるからっておごらないのは、彼女のいいところだ。彼女がいっそう、鍛練に励んでいるのはおそらく"あれ"が原因だ。
……悪魔四神、メルガディス。奴との戦いが、アカリちゃんにさらなる進化を促したのだろう。
あの時は分断されて見ることは出来なかったけど、もしあの時、あの場にアラナシカ先生が現れなかったら、みんな死んでいたとのことだ。
互角に見えた二人の戦いも、実際には差が大きかったということだ。
きっとアカリちゃんは、その時に自分の力の無さを痛感して……より一層、鍛錬に励むようになったのではないか。
相手は悪魔だし、そんなふざけた存在が現れるなんて予想できるはずもない。
それを言い訳にせずさらに上を目指しているなんて、やっぱりアカリちゃんはすごい。そんなアカリちゃんの親友恥ずかしくないように、私に出来ることは……
「うん、大丈夫。勝つよ、私」
アカリちゃんの隣……っていうのはハードルが高いかもしれないけど、それくらいの実力を身につけて、アカリちゃんの隣を歩きたい。
今のCランクの力じゃ、到底遠い話だろう。もちろん、天力を使えば実力は力の向上は可能だと思う。
けど、それじゃダメだ。天力が卑怯ってわけじゃないけど……アカリちゃんの隣に立つなら、同じ神力だけの力で戦いたい。
それに……これは当然だけど、公の場所で正体を明かすなんてこと、したくないしね。天使と人間のハーフだなんて、そんな正体。気味悪がられるに決まってる。
「そっか……なら頑張れ! リーシャなら、相手がAランクだってへっちゃらだよ!」
「ありがとう。明日勝って……そしたら、いずれはアカリちゃんとも当たるんだよね。えへへ、ちょっと楽しみかも」
「お、その時は手加減しないからねー」
彼女の笑い声を聞くだけで、安心する。本当に明日、勝てそうな気持ちになる。私って、単純なのかもしれないな。
二人で笑い、共に寝る。そんな生活がどうしようもなく幸せで……ずっと、こんな生活が続けばいい。
アカリちゃんと出会った私はようやく、幸せというものを手に入れた気がするよ……お父さん。




