進んでいく試合
……試合が終わり、会場の外へと出る。次の試合はどうやら俺達は誰も出ないようなので、一旦休息をとるためにも連絡を取ってみんなと集まった。
「いやぁ、それにしてもめでたいわねぇ! ヒロト君の神力が判明した上に、一回戦勝利なんてね!」
高らかに告げるのは、エルシャだ。彼女も試合をしたはずだが、俺よりも早く勝利をおさめたらしい。
一回戦突破は彼女も同じはずなのだが、どうやら話題の中心にいるのは俺らしいな。
「はは、どうも。俺もびっくりだよ」
ま、それも仕方ないとは思う。自分で言うのも何だけど。俺自身、この結果には驚いているし……何より、この力にも。こんな力があるなんて、思いもしなかったしな。
こんな力、っていうのが、何せ……
「神力を打ち消す神力、ですか」
「それなら、ヒロトの力が評価されなかったのもうなずけるわね。うんうん、これでもうヒロトがやいやい言われることはなくなるわけよ!」
神力を打ち消す神力、というものだというのだからな。そりゃ確かに、そんな力では周りに評価されるわけもない、か。
でも、こんな力聞いたことすらないっていうのが引っかかるんだが……
「よかったじゃぁん、実は隠された力があった、とかで」
そう言って俺をつついてくるのはエルシャ。以前言っていたことが現実になったからか、どこか嬉しそう……ってわけでもなさそうだ?
何だか複雑そうな顔をしているが……声だけは、元気だ。
ふむ隠された力、ね。実際に自分がその立場になると、どうしていいかわかんなくなっちゃうな。
この力のこと、試合が終わったら先生に聞きに行こうと思っていたけど……先に、しなきゃいけないことがある。
「それにしても……ありがとな、アカリ」
「へ?」
そ、アカリにお礼を言わないといけない。本人はきょとんとしているが、自覚ないのか? それともいきなりだから驚いているだけか……ま、いっか。
「あの時、活を入れてくれてさ。あれがなかったら、負けてたかも」
そう、試合中、いよいよ手立てがなくなってどうしようもなくなった時……アカリの言葉に救われたんだ。
あれがあったからこそ、勝てたんだと思うし……ううん、あれがなかったら間違いなく勝てなかった。というか、その気持ちすら湧かなかった。
「ふぇ……」
お礼の意味を理解したのか、アカリの顔はみるみる真っ赤になっていく。白かった顔があっという間にリンゴのようだ。
「あ、あれは別に……ひ、ヒロトがあまりにみっともなかったから……そ、それだけ! それだけだから!」
「それでも、助かったのは事実だしさ。礼を言いたかったんだ、ありがとな」
「うぅ……」
腕を組んでそっぽを向いているが、その耳まで真っ赤で、ついには俯いている。あの時のことを思い出して羞恥を感じているのだろうか。
確かに、あの人数の前で叫ぶのは恥ずかしかったんだろうか。
何か、悪いことしちゃったな。
「多分ヒロト君の想像は合ってるけど合ってないよ~」
「ん?」
唐突なエルシャの言葉に、首をかしげる。何を言っているんだ? 合ってるけど合ってない……なぞなぞか?
「と、とにかく! おめでとヒロト」
深く考える前に、改めてアカリが祝ってくれる。何度も言われているけど、やっぱり、嬉しいものだ。あぁ、勝つってこんな気持ちいいものなんだな。
「私達も負けてられないね」
気合を入れているみんな。とはいえ、俺以外のメンバーはある程度勝ち進めるように思える。
Aランクのアカリは言わずもがな。リーシャはCランクだが、アカリと同等のコントロールを持つから的確に攻めていけば勝てるんではないだろうか。
同じくCランクのエルシャは、先ほどBランクの相手に勝ったようだし……やはり神様、力の使い方がうまいのか?
「……あ、次オルテリアちゃんだよ! 見に行こ!」
話し込んでいるうちに、見知った人物の試合が近づく。俺としても、レベルの高い人の戦い方は見ておきたいものだ。
それに、まったく知らない仲でもない。単純に応援ということで向かおう。
…
「ま、ざっとこんなものですわ!」
長い髪をかきあげるようにして、青髪の少女オルテリアは告げる。余裕の笑みは、見ていて余程の自信の表れだろうと理解できる。
息切れすら起こしてないんだから、余裕どころの騒ぎではない気もするが。
オルテリアの戦い方は、実に鮮やかだった。相手はBランクと格下ではあったが、余裕は合っても油断は決して見せなかった。
迫る攻撃を全てかわしつつ、カウンターを交えてこちらの攻撃を正確に当てていったのだ。
その動きはまるで、ダンスでも踊っているかのように鮮やかであった。
「それにしても、見ましたわよ落第さん!あんな秘技を持っていたなんて!」
「あはは……」
てっきり彼女の勇ましい試合の感想が語られるのかと思ったが……その話題は、俺のことだった。まあ予想はしていたが。それにしても、秘技扱いって。
俺も初めて知ったことなんだから秘技も何もないんだけどね。
「エルシャさんも、勝ったみたいですわね。正直どちらを直接見ようか悩みましたが……」
うーん……と悩んでいる姿のオルテリア。腕を組んでるだけでも様になるなぁ……というか、腕に胸が乗っかってるし。何とまあ、けしからんですな。
そんな煩悩をちょっとだけ抱えて見つめていると、何やら視線を感じた。その視線の主はというと、アカリである。
「……アカリ? どうした?」
「……別に」
拗ねたように顔を背けているアカリ。その顔がほのかに赤い気がするのは気のせいだろうか?
「あんまり嫉妬深いと、嫌われちゃうぞー?」
「……!」
そのアカリに、エルシャが何かを耳打ちしている。何を言われたのかアカリの顔はまたも赤くなっていく。
どうやらうるさいうるさいと怒っているようだ。よく赤くなる奴だな、熱中症か?
その後、時間が経つにつれてそれぞれの試合が開始されていく。俺の予想通り、アカリは危なげもなく、リーシャは焦りを見せながらも冷静に対処し、勝ち進んでいく。
一人一日一試合……というわけではなく、場合によっては一日で何試合する場合もある。日にちを設けてあるから、うまく調整はしてあるらしい。
とりあえず一日目は、誰が脱落することもなく終わりを告げた。
そういや、結局先生に会えなかったが……まあ、明日でもいいだろう。先生だし、いろいろ忙しいだろうしな。
ー
日をまたぎ、それぞれが試合を重ねていく。みんなも、そして俺も運よく、全員が勝ち進んでいた。
俺はまだこの力の使い方に慣れないながらも、相手にとってはトリッキーに違いないその力で相手を打ち破っていた。
何せ、相手の神力にこの拳銃から放たれる神力の塊をぶつければいいのだ。それだけで、打ち消すことが出来るのだから。
そうやって自分の力とも向き合いながら、時間は過ぎていく。どれほど試合を重ねたか……試合に勝ち進むと当然、みんなと過ごす時間は減る。試合に出る回数が増えるからな。
だからみんな揃っているこの時間、次の試合に備えていると……次の試合を告げる着信が鳴る。
「お、次は誰かな、っと……」
試合に勝ち進めばその分、ここにいる誰かとぶつかる可能性も高くなる。避けれないことではあるのだが……いつも、そこに書かれている文字を見る瞬間は緊張してしまう。
機器を見て、そこに並んだ文字を目で追う。そこに書かれていたのは……
『Aランクアラタ・ナルジヤ選手、Cランクリーシャ・テルマニン選手 明日初戦D会場にて』
次の試合メンバーがリーシャであることが、そこには記されていた。オレではないことにほっとするが、それは一瞬のこと。すぐに別の名前に目が行く。
何てったって、その対戦相手は……
「……アラタ・ナルジヤ。神力学園生徒会長」
そう、リーシャの対戦相手である生徒は……この神力学園の生徒会長であり、Aランクの実力者なのだ。開会式で話していた、あの男がリーシャの次の対戦相手、か。
「……うん、相手にとって不足はないよ」
それに対してリーシャは……不安そうにはしていなかった。相手が格上だと知りつつも、その表情はどこか晴れ晴れしているようにも見えた。




