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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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見たことも聞いたこともない力



 ……放たれた弾丸。とはいえ弾など入っていないのだから、見た分には空砲と同じだ。神力を、弾丸の形に想像して放っただけの、百パーセント神力弾。



 それを、襲いくる蔦に向けて放った。それは間違いない。放ち……俺の少量程度の神力は、確かに蔦にぶつかった。その瞬間、何が起きたか?



 結果は俺もナタ・サルテマも、おそらく会場の誰も事態を予測できなかったのではないだろうか。



 俺に襲い掛かってきていた太い蔦。それは……消えていた。



 まるで、風船が割れるように。まるで、ものが弾け飛んだかのように。いや、そんな安易な表現では済ませられない。まるで、初めからそこになかったみたいに……



「……は?」



 その様子に思わず声を漏らしたのは、俺かナタ・サルテマか、それとも両方か。予測もしていなかった事態に、放心していたのは確かだ。



「……こ、こざかしい! どんな手を使ったかは知らないが……!」



 次の瞬間、我に帰ったナタ・サルテマは、今度は残った四本の蔦を一斉に放ってくる。意味不明の現象の解明より、目の前の敵を排除することを選んだのだ。



 しかし俺は、慌てることはなかった。何が起きたかわからない。でも、何が起きたかわかっている。……冷静に、状況を分析する。



 確信には程遠いが……それでも俺は、蔦に向けて銃口を構える。



 それを、撃つ! 四本の蔦に、四発続けて。弾丸の形となった神力が、蔦へとヒットし……ヒットした蔦は、やはり消え去った。



 さっきまで俺を苦しめていた蔦は跡形もなくなり、唖然としているナタ・サルテマが立っていた。奴は、何が起こっているのか理解できないといった表情だった。



「何だ……何なんだお前!」





 会場も、驚きに包まれていた。何せ見た限りでは、Eランクのヒロトの神力がBランクの神力を消し去ったように見えたからだ。



 格上の神力使いならともかく、格下も格下、ヒロトの神力ではあり得ないことだ。



「おい、何だよあれ」



「さあ」



 ざわつく会場。周りと同じく驚いきを見せているのは……先程ヒロトに喝を入れたアカリも同じだった。そして、リーシャも。



「あれ……見間違いじゃ、ないよね。何あれ……」



「わからない。仮に同威力の神力で相殺したにしては妙な消え方だったし……そもそも、ヒロトさんにそんな力はないはず」



 知っているのだ、アカリは。ヒロトがどれだけ努力しても、大したレベルの神力使いになれなかったことを。それを今、目の前で異様な光景が広がっている。



 吹けば消えるような小さな神力。うまく制御することもままならないそれは……今確かに、ヒロトの危機を救っている。



「ありゃ、どしたの?」



 驚き悩むアカリ達。だがそこに、何ともひょうきんな声が掛けられる。この場には似つかわしくない、そしてこの場にいなかったはずの人物の声。



「え、エルシャ!? 何で……」



 そこにいたのは、今別会場で試合に挑んでいるはずの彼女だ。なのに、なぜ彼女がここにいるのか? 考えられるのは二つ。残念ながら負けてしまったか、それとも……



「そりゃ勝ったからに決まってるじゃない」



 淡々と告げるエルシャは、しかし多少なりどや顔してピースしている。豊かな胸を張り、どんなもんだいとばかりに腰に手を当てている。



「え、もう!? だって相手Bランクの人でしょ!?」



「どうせ汚い手でも使ったんでしょ」



「ち、違う! ちゃんと正々堂々勝ったわよ!」



 素直に驚くアカリと、相変わらず辛辣なリーシャ。卑怯な手など使わず正々堂々勝ったという彼女は、力を失ったとはいえさすがは神様といったところだろうか。



 本来なら手放しで喜びたいところではある。のだが……



「で、どうしたの? 何か会場中ざわめいてるけど……もしかしてヒロトくん、タコ殴りにされてて会場引いちゃってるとか?」



「いや……」



 会場の異変には、エルシャも気づいていたらしい。素直に観戦、誰を応援、という雰囲気ではないからだ。



 その異変の正体に真っ先に思い付くのが、ヒロトタコ殴りなのはちょっと物申したいところではあるが。



 異変の理由を語ろうにも、アカリ自身何が起きているのかわからないのだ。あんなの、自分にだってできやしない。ともかく、見てもらった方が早いだろう。



 そう考えたのと、会場が湧いたのは同時だった。何事かを見ると、試合中のヒロトが、ナタ・サルテマの猛攻を防いでいるところだった。



 襲う蔦以外にも、彼の神力を次々と消し去って。



「あんなの、見たことないから……」



「……ふぅん」



 エルシャは、神力云々に詳しいわけではない。神力の元を辿れば神である自分の力らしいというのは知っているが、人間達がそれをどう使っているのか、全く興味はない。



 それでも……神力を、己の神力で消し去るヒロトの姿には何か思うところがあるのか、じっと目を細めて見ていた。





「……ほぉ」



 驚いているのは、何も生徒達だけではない。別席に居た教員、ティファルダ・アラナシカもその一人だ。神力担当の教員で、以前この学園でSランクの神力の使い手だった女性。



 彼女をもって、何が起きているのか明確な答えは出てこない。見た限りでは、あの銃がこの現象に作用しているのは間違いないと考えるだろう。



 だが、あの銃に細工などしていない。調べてもらえば、正真正銘ただの銃だというのが証明されるはずだ。



 となると、可能性は一つ……



「カルバジナの元々持っていた力、か?」



 銃はただ、ヒロトの不安定な神力を、一点に集中して放つだけの道具に過ぎない。言ってみれば、神力をうまく扱えないヒロトのための制御装置、といったところか。



 そして仮にも、そのヒロトの神力が、ナタ・サルテマの神力を消し去っているのだとしたら……それは。



「つまり"神力を消し去る神力"ということか……?」



 ヒロト・カルバジナが有している神力……それは『神力を消し去る神力』である可能性が高いと予想した。それならば、この異様な現象にも説明はつく。つくのだが……



「成程、打ち消すだけのそんな力が評価されるはずもない、か。……だがそんな力、見たことも聞いたこともないぞ」



 消し去る力、そんなものが正当に評価はされるはずもない。それが、ヒロトのランクが低い理由なのか? ……仮にそうだとして、だ。



 頭を抱えるティファルダ。長年神力に関する研究を行っている彼女でも、そんな能力には初めて触れる。見たことも、聞いたことも、ない。



 歴史上にも、そんな特異な存在は確認されていない。



 もし、まだ未発見の神力、というだけのものなら大変喜ばしいことだ。いろいろ調べ尽くした後に、学会で発表するのも悪くない。だが……



「……何だろうな、この胸騒ぎは」



 本来なら、研究心が勝ってしまうこの局面。そのはずなのに……ティファルダは、言い様のないモヤモヤが胸の奥で生まれたのを感じていた。

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