表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
5/314

自称神様と最弱少年



 ……裏山にキノコ狩りに来たら、気付けば目の前に血を流した女の子が倒れている。



 面倒な用事を言い付けられ、仕方なしにしかしさっさと済ませて帰ってしまおうという気持ちでいたのに、とんでもない現場に遭遇してしまった。



 恐る恐る視線を向ける。流れる血が白い服を赤く染めている。どうやら腹に傷口があるようで、本やテレビの知識だが拳銃で撃たれたのだということがわかる。



 神力のあるこのご時世に銃とは。……ということは、犯人は神力を使えない人間か。



 ……うん、多すぎるな。



 神力とは大人になるにつれ自然と消滅していくものらしい。それでもごく一部大人でも使える者がいる。



 神力学園の先生もほとんどがそうだ。なので、それで犯人が子供か大人かの判断材料にはならない。



 ……っと、こんなこと考えてる場合じゃないな。とにかく手当てしないと……



「とは言っても……どうする」



 怪我なんて、神力でぱぱっと治せる。治療に特化していればまるで魔法みたいに傷を治せるし、そうでなくとも応急措置くらいは出来る。しかしそれは、神力を使える人間の話。



 俺は神力を使えないし、医療の知識もない。何より周りでは、神力を使った治療しか見たことがないために、普通の治療行為もどのようにすればいいのかわからない。



 かすかに息はあるようだが、こうしている間にも女の子の体は死に近づいていっているはずだ。こんなとこで考え事をしている場合ではないというのに……



 こうなれは、慎重且つ大急ぎで、この子を背負って山を下りるか?いや、それでも全く衝撃がないわけじゃないし……



 そうやってあわてふためく俺をよそに、突然どこからか……呑気な声が聞こえてきた。



「う……んん……」



 ……今のは、何だろう。この場には俺とこの子しかいない。俺では当然ないし、声色からして女。それも、すぐ近くから聞こえたのだ。それはつまり……まさかという気持ちが胸を巡る。



 まさかと思い、恐る恐る女の子に視線を向けると……



「ふぁあ……っつつ……もう、容赦なくぶちこんでくれちゃってまったく」



「うわぁああ!?」



 そこには、腹を撃たれて血を流していたハズの女の子が……いきなり起き上がった姿があった。



 それも、この場にそぐわない何とも気の抜けた声を発しながら。神力で、傷を治したのだろうか。いやそれにしては……



「ん……誰……」



「こっちの台詞だ!」



 俺に気付いた様子の女の子が、目を擦りながら呟く。言いたいことは色々あるが、何で撃たれて平然としてるんだ!?意味がわからない!



「もしかして……あなたも私を殺しに来たの?」



「えっ?」



 その言葉に、色々考えていたものが吹き飛んだ。一瞬、女の子の瞳が鋭くなったように感じられた。殺しに来た……って、一体どういうことだ?



「いや、俺は違う!何だか知らんが違う!」



「なら脱いで!」



 ……はい? 殺しに来たわけじゃないと言ったのに、脱いでとはどういう意味だろうか?



「私を殺しに来たんじゃないなら、武器を持ってないのを証明して!」



「いや、それは……」



 武器を持ってないのか確認するために服を脱ぐ……いや筋は通っているんだが、突然、初めて会った女の子に服を脱げと言われるなんて、どんなプレイだよ。



「やっぱり私を殺しに来たのね!」



 そう言って妙なポーズを取る彼女。どうやら何をいっても聞く耳を持ってくれないらしい。なら、仕方ないか……



「ほら、これでいいだろ?」



 これ以上渋っても信じてくれそうにない。仕方なくパン一になった俺は、何もないないと証明するため両手を挙げる。まったく、どうして俺がこんな目に……



「まだよ!まだ残ってるわ!」



「お前目的別だろ!」



「そんなことないわよ! 別に人間の体が興味深いからとか思ってないから!」



「うん?」



 何やら気になることを言いつつも、そう言う彼女の目は何故か輝いていた。



 結局全裸だけは免れたが、その代わりに服を没収されるという羞恥プレイを受けることになった。



「なあ返してくれよ」



「あなたが敵でないとわかるまでダメよ」



 まったく聞く耳もたない。てかこう言っちゃ何だが、神力はその気になれば人さえ殺せる。俺が丸腰だからって油断しすぎじゃないか? 俺が神力使えないのこいつは知らないわけだし……



「じゃあ変態さん、あなたの目的は何?」



「うおい! 変態って何だよ!」



「初対面の女の子の前にパンツ一枚で現れるなんて、正気の沙汰じゃないわ!」



「お前がこうしろって言ったんだろうが!」



 何こいつ! とてつもなくめんどくさいんだけど! 殴っていいかな!



「はぁ……目的って、キノコ狩りだけど」



「キノコ!? そんな格好でキノコ狩りなんて……何て変態なのかしら!」



 おーい誰か助けてくれ! こいつ話通じねえんだけど!



「えっと……つまり俺は別にあんたがここにいるからとかそんな目的じゃなく、純粋にキノコをだな……」



「……まああなたからは邪気を感じないし、本当に何も知らずに来たみたいね。なら危険じゃないか……」



「何言ってるかわからんけどそれ元々俺に危険がないってわかってる口振りだよな? つまり俺がこんな格好する必要もなかったってことだな?」



 とんでもなく理不尽な目にあっている気がするが、ようやく話が進みそうだな。向こうからばかり俺に質問しているが、俺からも聞きたいことがあんだけどな。



「次はこっちの質問だ。あんたは誰で、何でここで倒れてた?誰にやられた?何で何もないみたいに立ち上がってる? 神力使いか? まああの怪我を自前で治すとかそれ以外考えられんけど」



「もー……質問多すぎ。質問の多い男の子は嫌われちゃうぞっ?」



 俺が質問を畳みかけてしまったのも悪いが、それを受けてこの女の子は舌を出して首を横に振っている。やべー、人を本気で殴りたいと思ったの初めてだよ。



「ま、私としても逃げ回るの疲れちゃったし、休憩がてらお話しするのも悪くないかな」



 そう言って近くの岩に腰かける。逃げ回るとか気になるワードを残しつつ、可彼女は俺を見つめる。きっと何か深い理由があるんだろう。



 俺も聞く姿勢に移る。……パン一だけど。いったい、何を言われるのであろうか。その疑問は……



「こほん。えっと……こんにちは、私は神様です」



 ……次に放たれた言葉により、吹き飛んでいった。は、え、神……はぁ?



「……はぁ?」



「あ、信じてないでしょー!」



 いけね、心の声が出ちまった。今かなり意味不明だったんで、思わず。……けど、初対面の相手に唐突にこんなこと言われちゃそうなるよな? な?



「信じるも何も……バカバカしい。信じる方がどうかしてるそもそも俺は、神様の存在自体信じてないんだ。

 それが、目の前の人間にいきなりそんなのと言われたら頭おかしいなこいつくらいにしか思わないよ。それとも、さっき撃たれた時頭撃った?」



「むぅ……この人間風情が……」



 何て口の悪い神様だよ。まあ仮にこの女の子が神様だとして……神様なら、あの傷から何事もなかったように復活したのも頷ける。頷けるだけで、まったく信じたりはしないけども。



「とりあえずさっきの質問に答えてあげる。私はエルシャ。

 神様で、あんたら人間に追い回されてお腹に一発もらっちゃって、それでも逃げてたけど崖から落っこちゃって……そこをキミに見つかって、現在に至るよ」



「……カルバジナだ。どうしても神様設定続けんのか。……じゃあ、神様だとして質問する」



 とりあえず、怪しいのでフルネームは名乗らないこととしよう。



「神様よ」



「神様がこんなとこにいるってのも疑問だが、神様ならそもそもどうして人間に追いかけられてたんだよ。それに拳銃なんかでダメージを負うのも変だ」



 イメージでの話になるが、もしも全知全能の神である神様だというのなら。拳銃なんぞでダメージを負うとは、考えられない。



「それは……事情があって、神としての力をほとんどなくしていたので」



「ほぉーん?」



「やっぱ信じてないわね」



「出会い頭いきなりほぼ全裸にしてくる初対面の相手が神様だって言ってそれを信じる奴はどうかしてると思うぞ。あんたが、相当レベルの高い神力使いってのはわかるけど」



 自称神様の戯言は置いておいて、高度な神力使いなのは認めている。でなければ、瀕死のあの状態から回復するなんて無理だ。



「神力? ……あぁ、人間が確かそう呼んでるんだっけ。何の捻りもないわね」



「無茶苦茶だなあんた。……とりあえず、服返してくれ。あと、そんな怪我してたんだしあんたが頭おかしいと思っててもほっぽってはいけないから、何なら一瞬に学園に……」



 自称神様だという、痛々しい彼女の頭がアレだとはいえ、腹を撃たれていた状態を見てしまったからには放っておくわけにもいかない。



 何しろ撃たれていたのは事実なのだ。事情は知らないが、ひとまず話を聞いた方がいいだろう。ここは危ないかもしれないから、学園へ。



 とにもかくにも、服を返してもらわなきゃ移動も出来ない。なので服を返せと手を伸ばすが、相手からの返答はない。



 聞こえてなかったのかと、もう一度声をかけようとしたところで、彼女はこちらを見て口元に指を立てる。静かにしろ、とジェスチャーしているようだ。



 いったい何事か。首を傾げる俺の耳に、ガサガサ……と草をかきわける音が届いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ