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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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嵐の前の静かな夜



「……はあ」



 どんな風に過ごしても時間というのは誰にも平等に流れる。時間はあっという間に過ぎていき、早くも明日には神技冠祭が開催される。



 結局のところ、いくら特訓しても人並みにも神力を使えるようにはならず……明日、この身一つとこの拳銃で挑むしかないということになった。



 ま、入学してからこっち結構特訓してたのに、この短い期間で力が使えるわけないよな。



 別に、初めの頃より憂鬱を感じるわけではない。が……やはり不安は拭いきれない。果たして俺が通用するだろうか。結局この拳銃が通用するのかも謎だし。



 その不安を払拭するため、だろうか、今は夜、何となく一人になりたくて……こっそり寮を抜け出してきて、外を歩いている。



 あぁ、静かな夜だな。空を見上げると、数え切れないほどの星が輝いていた。何だか、こんな夜空を見ていると落ち着くな……



 学園内の中庭にやって来た。こんな時間だからか誰も居ない。ま、一人で物事を考えるにはうってつけってやつだな。



 いつもはアカリの明るさに救われたりもするけど、今ばかりは一人でいたい。



「あれ……ヒロトさん?」



 ベンチに座って空を見上げていると、ふいに名前を呼ばれた。かすかに聞き覚えのある声だなと感じ、その方向に視線を向けると……



「あれ……キルデ?」



 そこには、みんなで買い物に行ったあの日に出会った……オルテリアの幼馴染みである、キルデ・オスロがいた。……学園の生徒ではないはずの、キルデが。



 先に挙げたように、ここは学園の敷地内である。それなのにどうして……



「どうしたんですか? こんなところで」



「え……あぁ、ちょっとね。そっちこそ、何を……」



 しているのか。そう問いかけようとした。だがその直前、彼の手に持っていた袋を見せられる。コンビニの袋だ。コンビニ帰りとでも言いたいのだろうか。



 いや、そうじゃなくて……何をしてるのかではなくて、何でここにいるのか……



「聞きましたよ……神力学園、明日からお祭りなんですって?」



 だが疑問は言葉になるより先にキルデに遮られる。俺もわざわざ答える必要はないだろうに、その問いかけに答える方を優先してしまう。



「別にお祭りってわけじゃ……ないよ?」



「なぜ疑問系ですか」



 聞いた、ってことは、幼なじみであるオルテリアからだろうか? 確かに、彼女ならばこの行事もお祭りだとか言いそうだ。



「……ま、今考えてるのはそのことだよ」



 気づくと俺の中からは、先ほどの疑問は消えていた。代わりに、一人で考えていた思いが口から流れる。



「俺には神力が宿ってる……けど、それはとても小さい力でさ。学園内じゃいわゆる落ちこぼれってやつで、明日もうまく立ち回れるかわからなくては」



「ほぉ……それで、憂鬱だと?」



「そういうわけじゃ……いや、そうなのかもな。何て言うか、不安、緊張……ってのは安直な言い方だけど、それもある。もちろん勝つつもりで挑むけど、こんな俺が通用するのかって……」



 何で俺は、こんなことを話しているのだろう。何だろう、この……自分の内側にある全てを吐き出してしまおうとさえ思える感情は。



「心配要りませんよ」



 すると、いつの間にか正面から、座っている俺を見下ろすキルデは告げる。心配いらない、と。俺の不安や緊張を振り払うかのような不思議な言葉だった。



 その目は、ただ正面を見据えている。つまり、正面に座っている俺を……なのだが、なぜだろうか。彼の目は、俺を見ていない。俺を見ているのに、俺を見ていない。



 どうしてこんなことを思うのか、そもそも自分でも何を思っているのかわからない。



「自信を持って努めれば、きっと応えてくれますよ。今は神力を使えないにしても……貴方には、きっと力が眠っているはずです」



 そう告げるキルデの言葉を聞いていると……不思議と、気持ちが落ち着いてくる。



「そう、かな……」



「私は神力は使えないのでよくはわかりませんが……神力を使えようが使えまいが、根本のところは同じだと思いますよ。結局は、やるかやらないか……気力の問題でしょう」



 根本のところは同じ、か……



 神力なんて関係なしに、諦めなければきっと報われるはず……そういうことかな。それは、俺が常々考えていたはずのことでもある。こんなことを忘れちまうなんて、焦ってたな俺。



「……ありがと。何か、気が楽になったよ」



「それはよかった」



 お礼を告げると、キルデは薄く笑みを浮かべる。それから、足を進める……彼がやって来た方向へと。来た道を戻り始めた。



「では、私は行きますね。オルテリアもですが……貴方のことも、応援していますよ」



 最後にこちらを見る目は、何だか鋭く感じて……闇に隠れてよく見えなかったけど、どこか歪んだ笑みを浮かべているように見えた。



「頑張ってくださいね……私も、楽しみにしていますから」



「? あぁ」



 何だか意味深な言葉を残して、キルデは去っていく。



 明日のことで不安やら緊張でいっぱいだった気持ちが、今は楽になっている。……そういえばなぜ、キルデはここにいたんだろう。学園の敷地内の、この場所に。



 姿が見えなくなってしまう前に、その背中に声をかけようとした。だがそこへ一際強い風が吹き思わず目を閉じてしまう。



 それも一瞬のこと。目を開けたときには……すでに、キルデの姿は消えていた。

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