"限定解除"
見ているだけでお腹いっぱいになるほどの食いっぷりを見せたリーシャと、本来彼女を呼び出した理由へと本題を戻す。
「あ、そうだね……」
うわあ、すごい凛とした表情なんだけど。さっきまでパフェ食らってた人と同じとは思えないんだけど。
「私の正体を聞いた……ってことでしたっけ」
「あぁ。最初はあの日の二人のやり取りを聞いて、そこから気になったんでエルシャに聞いた」
「そうですか……」
と、コーヒーを一口。ちなみにコーヒーにはめっちゃ砂糖を入れていた。苦いの苦手なんだろうか。真剣な話なので茶々は入れないでおこう。
うーん……元々人見知りっぽいところがあるけど、この話になると余計に喋らなくなるな。
「……ちなみに、アカリちゃんには?」
「え、言ってないけど……」
「そうですか、よかった。なら、この先も言わないでください」
「リーシャがそう言うなら言わないけど」
アカリには言わないでくれ。その真意はわからないけど、いずれ自分の口から言うということだろうか。
やっぱり仲の良い友達には自分から話した方がいいだろうし、口出しはしないでおこう。
「それでその……リーシャはエルシャのことどう思ってるのかな、って……」
本題の中の本題……そこにうまい話を繋げる術が見当たらないため、ここは思い切って聞いてみることにした。
とはいっても、これの答えはおおよその検討はつくんだけど……
「あの女を、ですか。大嫌いに決まってます。あの女がいたせいで、お姉ちゃんは……他の天使達は、殺されたんです。それに、悪魔が攻めてきたせいでお父さんは……」
「え?」
「……何でもないです。忘れてください」
一言、大嫌いと。その理由はやはりというか、エルシャに言った通りのものだった。エルシャがお姉さんを殺したんだと、だから。
後半の言葉はよく聞き取れなかったが、確か『お父さん』と聞こえたような……そういえば、先生が話してた中にそんなニュアンスの会話があったな……
ズキッ
「っ……」
「……どうしました?」
「いや、何もないよ」
唐突の頭痛に、頭を押さえる。"また"か、ここ最近、たまに軽い頭痛に襲われる。痛くてどうしようもない、ってほどじゃないけど。確かこの前も頭痛が……
「それに今回……あの女といたせいで、私達は危険な目にあいました。私の大切なものを傷つけるあの女を……許すことはできませんよ。正直大嫌い、どころじゃありません」
その間も、リーシャは話を続ける。ぎゅっ……と握りしめている拳は、少し震えているようにも見える。
リーシャにとっては今回の件、そして過去の件とが大きなトラウマになっているんだろう。
話を振ったのは俺とはいえ、このままじゃ間が持ちそうにない。少しだけ話題を変えるつもりで、気になっていた質問をぶつけてみることにした。
「そう言えばあの時……あのメルガディスって悪魔。あいつにリーシャだけ別のとこに飛ばされた時、多分リーシャのとこにも敵いたよね。
結界が消えてあいつらも消えたって言ってたけど、ホントにそう?」
それは、以前悪魔に戦いに引き込まれた時。リーシャだけ別の空間に飛ばされた時だ。詳細はわからないが、全てが終わった後リーシャは無事だった。
あの時は逃げ回ってただけだと言っていたが……
リーシャの正体を聞いていたから、それについて少し引っかかっていた。本当に逃げ回っていただけなのだろうか、と。
そして……彼女の口から、あの時の真実が語られる。
「……隠しても、意味ないですね。私は天使と人間のハーフ……つまり、神力とは別に天使の力、天力も使えるんです。
普段は天使の力を封じてるからCランクの神力しかない私ですけど、天使の力を開放することで、一時的に力を増幅……いや、元々ある力を使うことができるんです。
これを私は、"限定解除"と呼んでいます」
自分に隠された(?)力を告白する。なるほど、天使の力を……え、っていうか何、その主人公みたいな能力!?
「本来、人間は神力、天使は天力、悪魔は魔力といったように……それぞれ種族によって、使える力は決まっているんです。
けど私には人間と天使二つの血が流れています。だから、神力と天力が使えるんです」
今しがた説明したことを、わかりやすく種族間にわけて伝えてくれる。種族っても、そもそもがこの間まで人間以外の種族がいるなんて考えたこともなかったんだけどな。
一呼吸置いて、彼女は続ける。
「けど、私の場合は二つの力を使える代わりに、普段は片方が封印……眠っているといったほうが正しいですね。そんな状態なんです。二つを同時には使えません。
人間としての神力はCランクしかないですけど、正体を公にしたくないので天力を眠らせています」
二つの力を使えて、うち一つが眠っている、か。ほほぉ、何だか本格的な話になってきたな。
「逆に天力を解放すると、本来の私の力を出せるんです。でもまだまだで、天力は限られた時間しか使えないんです。
しかもその後は、神力も使えなくなる上に体にも影響が出て……」
「成る程、だから限定解除……」
限られた時間でしか使えない、本来の力。限定解除とはその字の通りってことだな。そんな力があるんだってことは、あの時やっぱり逃げ回ってたわけじゃないんじゃないか。
その心のうちを読んだかのように……リーシャは軽くうなずいた。
「……ヒロトさんが考えてる通りです。一人孤立した私は、力を解放して悪魔を倒したんです。誰にも見られてなかったから都合がよかった。
本当は、神力だけで何とかしたかったんですけど、力が及ばなかったしそれに、頭に血が上っちゃって……」
「血が?」
頭に血が上った……自らそう話す彼女の言葉に、おうむ返しをしてしまう。無意識に言っていたのだろうか、俺の返しに対してはっとしたように口を押さえていた。




