空腹との戦い
「ひ、ヒロトさん……話って、何ですか?」
翌日、休日を利用して俺はリーシャを呼び出した。場所は、少し遠いファミレス。
というのも、リーシャを呼んだ理由である話は他の人に聞かれてはまずいものだ。ここなら知り合いに見つかる心配は低いだろう。よって、遠い距離を選んだわけで。
そんな彼女は、今俺の正面の座っているわけだが…
「むうぅ……」
なぜだか、リーシャは少し顔が赤い。おまけにちょっともじもじしている。どこか具合でも悪いのだろうか。
アカリ曰くリーシャは人見知りらしいから、そのせいかもしれない。
「き、休日にふ、二人きりで会いたいなんて……」
「あぁ、ちょっとリーシャと少し話したくてさ。実はリーシャの正体について、えっと……エルシャから聞いたんだ」
ここは遠回しに言うより一気に本題に入らせてもらおう。
まさかいきなりこんな話題になると思ってなかったのか、リーシャは、きょとんとしている。ちょっと面白い。
「あ、そ、うですか……よかった、もしもの時はアカリちゃんに何て言おうかと……」
「え、何?」
「何でもないです」
ほっとしたような表情で何かをぶつぶつ喋っている、それが何かは結局わからなかったが、追及する前にリーシャの表情が真剣なものへと変わった。
「やっぱり喋ったんですか、あの女。……まあ口止めしてたわけでもないんですけど」
あ、ヤバい。これ怒ってる。間違いなく怒ってる。だってあの女呼ばわりだもの。小動物みたいな女の子からは想像もできないくらい乱暴な言葉が出てきたもの。
「なあリーシャ……」
一応エルシャには、今日リーシャと話をすることは伝えてある。本人も行った方がいいかとも思っていたが、話がこじれそうなので遠慮してもらった。
だというのに……せっかくエルシャに同席を遠慮してもらったのに、初っぱなからこの空気になっては意味がない。ちょっとまずいかもしれない。
何とか話だけでも聞いてもらえないだろうか。そう思って口を開いたその時……
きゅるるる……
「……」
以前にも聞いたことのある、懐かしい腹の音が聞こえた。音の行方は……正面から聞こえた。半ば確信を持ちつつ正面を見ると……真剣な表情だったリーシャは顔を真っ赤にしていた。
やっぱりこの子か。さすがは"空腹の魔女"。
「……何か頼もっか」
「……はい」
それから時間が経ち……現在、テーブルの上には、俺の目の前に一皿、リーシャの目の前には三皿が並んでいた。ちなみに一皿分の大きさもリーシャの方がでかい。
「相変わらず、よく食べるね……いいけど」
「す、すみません……あ、パフェ頼んでいいですかね?」
まだ食べるの!? もうオムライスにスパゲッティにハンバーグと食べたよね!
デザートは別腹とはいうけど、そういうもんなのか……? ……いや、リーシャが特別なんだろう。アカリがこの量を食べるとこ見たことないし。
さっきまでのちょっとシリアスな展開はどこへやら、リーシャは目の前にあるジャンボパフェを夢中で食べている。
あれ一つ食べただけでも腹が満たされること間違いないのだが、直前に三食も食べたと思えないほどの食いっぷりだ。
何だか、これを見ているだけでお腹いっぱいだよ……というか、俺はチャーハン一皿だけでお腹いっぱいなんだけど。
「……さて、話の続きに戻りましょう」
あっという間にパフェのグラスは空に。大食いな上食べるのが早いリーシャは、口元に付いたクリームを拭き取りながらしれっと真剣な表情に戻っていた。




