それぞれのやる気スイッチ
「今年はこれまで以上に盛り上がるに違いないからな。キミ達も、その役の一端を担っているんだ、頑張ってくれたまえ」
今年は優秀な人材が多いからな……と呟く先生。一年生にしてすでに学年でもトップクラスに有名な人物が一人どころか二人も揃っていることからも、それは明らかだ。
アカリとオルテリア、この二人は要注目人物だ。
他にも、一般には知られてないだけでもそれなりも人材がそろっている。ここにいるエルシャも然り。神技冠祭の間にも話題になるだろう。
そのエルシャはともかくとして、俺は別の意味で話題になりそうだ。学園唯一の最弱Eランク、としてな。
「ちなみに休日に行われるから、一般の入場もあるからな」
「そうなの!?」
思い出したよ先生の言葉に、食いつくようなエルシャ。別に驚くことはない、学園行事なら体育祭や文化祭もそうだろう。が……うわ、絶対目立とうとしてるよこれ。
「テレビ中継もあったりする」
「うわ、スゴい! 俄然やる気が出てきたわね!」
更なる情報に、テンション上がりまくりである。これが漫画なら、エルシャの体には今メラメラと炎が燃え上がっていることだろう。
でもあんた、一応狙われてる身だってこと忘れてない?
……って、悪魔を逃がしてる時点で居場所を隠すも何もないか。
テンションマックスのエルシャとは裏腹に俺はというと、テンションが上がらないどころの騒ぎじゃない。ダダ下がりだ。
今でも学園の中じゃ落第生として有名なのに、これからはそれ外へと歩いていくのか……憂鬱だ。
そんな俺に、先生が一言。何だよう、大抵の言葉じゃ俺のやる気に火はつけられない……
「ちなみに、神技冠祭で優勝した場合……この先向こう一年間の授業必要単位が、一切免除となる」
「! 単位が……免除……だと?」
「優勝=力も精度も問題なし、に繋がるからな。そう、つまり優勝してしまえば、授業に出なかろうが、例え神力を使えなかろうが……一年間は己の身が保証されるということだ。
無論、素行にある行動をすれば保証もパーだがな」
単位免除……それは俺にとって、何ともありがたい、夢みたいな話だ。
先生の雑用を押し付けられることでようやく単位を貰えているこの状況ともおさらばできるってことだ!
それに、今はこうでも、一年あれば神力を扱えるようになっているかもしれないしな!
「それって、神力で勝たなくても?」
「言ったろ? 勝てばいいのさ……素手でも何でもな」
ヤバい、俄然テンション上がってきた!
「うおー! やったるぞー!」
「うるさい! しかも神力関係ないの問題ないのかよ!」
怒られてしまった。だがエルシャの言葉も何のその、声のトーンは落とすが、小さくガッツポーズをする。さっきまでの沈んだ空気が嘘のようだ。
「でも優勝ってそんな途方もない。それにまだ決まってもいないのに、そんな喜んじゃって」
「確かに、周りは強敵ばかりさ……けど、強敵を打ち倒していくっていうこういう展開嫌いじゃないんだろ?」
「……まあ、ね」
エルシャの言うように、簡単にはいかない。何せこの身一つと、この拳銃……これで、勝利をもぎ取らないといけないのだ。
魔法超能力紛いの力の前に、生身とこの何の変哲もない拳銃が通用するもんかね。
……ま、やるからには全身全霊、がんばるか!
「あ、そうだそうだ、エルシャ。これを渡しておくのを忘れていた」
これまた思い出したように、先生がエルシャに何かを手渡す。渡されたのは、正方形の平べったい箱で……液晶画面が付いている。
携帯に似たような形状だな。あ、あれ俺持ってる。
「携帯……とは違うが、お知らせ機みたいなものだ。試合の対戦相手がそこに表示され、知らされるようになっている。一応学園の生徒は全員持ってる」
「ふぅん」
表裏を見たり、くんくん匂いをかいでいる。初めて見る機器に興味津々といったところだろうか。なかなか面白い光景だ。
さてと、神技冠祭まで後僅かか……それまでに、準備を整えないといけない! これまで以上に、気合を入れよう!
「やるぞー!」
「うるさい!」
怒られた。




