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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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出会いのキノコ狩り



「なあアカリ、何で機嫌悪いんだよ」



「べっつにー? 機嫌なんてこれっぽっちも悪くないし」



 現在、俺とアカリは、いつものように中庭で昼食をとっていた。雨の日はさすがに室内で済ませるのだが、晴れの日はこうして毎日中庭に足を運んでいる。



 しかも今日は雲一つない快晴というやつで、外で食べるにはうってつけの日だ。



 他にも、わいわいと賑やかな声が聞こえる。俺達と同じように昼食中の者、元気が有り余っているのか走り回っている者、お喋りに夢中になる者……ここは、みんなにとっての憩いの場なのだ。



 中庭の、というより神力学園の象徴の一つとされる巨大な噴水。その傍らのベンチに腰掛け、俺とアカリは弁当を食べている。俺にはそんな技術はないので、これはアカリのお手製だ。 



元々アカリは料理が得意ではなかったのだが、神力学園に入学することになったのをきっかけに料理を覚えたのだと。



 ちなみに神力学園は全寮制で、学園の近くにある寮に生徒は住むことになっている。



 実家から離れるということもあり、料理の一つでも出来なくちゃと意気込んだらしい。料理の教えを指導してくれたのは、アカリの妹であるユメちゃんだ。



 ユメ・ヴィールズ。アカリの妹で、現在中学生になったばかりだ。小柄であるアカリよりも背が低いのだが、アカリよりもしっかりしているためたまにどちらが姉かわからなくなる。



 アカリの家に遊びに行ったときなんかはよく遊んでいたものだ。そして、これがアカリにそっくりなのだ。双子なのではないかと疑いたくなるほどに。



 肩辺りまで伸びた明るい赤毛を後ろに一本にまとめポニーテールにしているのだが、髪型を揃えれば本気で見分けがつかないかもしれない。



 というか何度か二人による悪戯でどっちがどっちだとか、互いに入れ替わったりとそういうことがあり、その時俺はわからなかった。



 そのユメちゃんに料理を習い、全く料理が出来なかったアカリは人並みに料理が出来るようになっている。その料理の腕を、昼食の弁当として振るってくれているわけだ。



 俺は適当にパンを買ってもいいのだが、栄養バランスが悪いし、どうせ作るなら一人も二人も三人も変わらないからと押し切られた。ちなみにこの三人もというのは、アカリのルームメートのことで……



 ……おっと、話がそれてしまった。まあつまりはアカリお手製の弁当を食べながら、機嫌が悪いアカリに話しかけているわけだ。



 本人は機嫌は悪くないと言うが、どう見ても悪いだろ。わかりやすくツンとそっぽ向いちゃって、弁当もパクパク食べ進めている。ぷりぷり怒っている。アカリぷりぷり。



 機嫌が悪いその理由はわからないが、さっきの神技テストの時からだというのはわかっている。そしてそんな状況にも関わらず俺に弁当を渡してくれるということは、どうやら本気で怒っているんじゃないということも。



「そうだよねー、ヒロトはお胸のおっきい人に応援された方がいいよねー」



 とはいえ、原因がわからないのでは機嫌を治す方法もわからない。おまけにさっきから訳わかんないこと言ってやがるし……いきなり不機嫌になられてもなぁ。うお、卵焼きうめえ。



「それに、す、すすす……きって……」



 それに何かを呟いたかと思えば、急に顔を赤くして俯いてしまうし。これが漫画なら顔が赤くなった描写にボンッという効果音が付くだろう。見ていて飽きない。うお、唐揚げうめえ。



「好きがそういう意味じゃないのはないのはわかってるけど……でも。……ふんだ、何さちょっと胸が大きいからって。私だって……」



 ぶつぶつ呟きながら、何故か自分の胸に手を当てている。もう小さくなっているため声は聞こえないが……



 胸に手を当てているアカリからは「うぅ……」と悲壮めいたうめきが聞こえてくる。まるで、その大きさに絶望しているかのように。



「ぅ……ぬぁあああ! いいもんまだ成長期だもん! これから大きくなるもん! ヒロトのバカ! オルテリアの泥棒猫!」



 いきなりそんなことを叫んだかと思えば、ガツガツと弁当を食い始めた。一体アカリの中では何が起こっているのだろう?そして何故にオルテリア?急に呼び捨て?



「機嫌が悪いな、ヴィールズ」



「あ、先生」



 ガツガツ弁当を食べていくアカリと、ゆっくり味わって食べていく俺。そんなところへ声がかかる。



 そこへ現れたのは、神力テストの時に担当していた教師、ティファルダ・アラナシカ先生だ。



「何ですか一体……」



「おいおい私にまで噛みつくなよ? それに用があるのはキミではない。……そこの落第生くんだ。なあ、カルバジナ?」



 機嫌が悪いアカリは、先生にも「ふしゃー!」と威嚇している。だが先生はそれを軽く笑い飛ばし、俺を見る。



 その視線に、俺は嫌な予感を感じる。実のところこうして先生が俺に用だと言って会いに来るのは今日が初めてではない。



「あの……俺に何か?」



「何か?だと? キミ自身わかってるだろう? それでとぼけるなんて、芸達者な奴じゃないか!」



 はい、その通りです。言ってみただけです。……何かおかしかったのか高笑いする先生と、きょとんと首をかしげているアカリ。



「あの、今ご飯食べてるので後でもいいですか」



「むしろ休憩中だから呼びに来たんだがな。まあ、せっかくのヴィールズの愛妻弁当を味わって食べたいという気持ちはわかるがな」



「あっ、あああ……!?」



 どうやら逃げられないらしい。仕方ないか。隣で真っ赤になって「あ、あああ……」と言っているアカリを横目に、観念した俺は、急いで弁当を体内にかきこんでいく。



 先生の用事というのは……まあ要するに、先生の仕事の手伝いというやつだ。もちろん仕事というのはあらゆる項目が含まれるわけで……詰まるところ雑用だ。



 これには、海よりも深く空よりも高い理由が……



「ふぃー、ごっそさん! 美味かったぞアカリ!」



 急ピッチで食べ終え、お茶で流し込む。正直かきこみすぎて後半味がわかんなかったが、美味かった!うん!



「というわけで、カルバジナを少し借りるぞ?」



「ああ、あ……って、え、ちょっと!」



 空っぽになった弁当箱を片付け、お礼を告げる。忙しない様子に困惑するアカリだが、それをよそに先生は俺を引っ張っていく。悪いなアカリ、これを断ることはできないんだ。



 遠ざかっていくアカリは、呆然と立ち尽くしていた。そんなアカリを背に、俺は歩き出していた。だから、遠ざかる背中に、彼女の呟きは届くことはなかった。



「……バカ」



ーーー



 俺が連れてこられたのは、先生がいつも使っている部屋だ。今日は快晴だというのに部屋は薄暗く、それがカーテンが閉められているためだと気付いた。



 さらにそこは何の片付けもされてないらしく、物が散乱していた。



「で、これが今回の仕事の手伝いですか?」



「あぁ。それとこれな」



 そう言って先生は、大量の資料を机の上に置いた。ズシリ、と紙の音ではないものが俺の耳に届いた。あぁ、やっぱり嫌な予感が……



「それは?」



「今回テストを受けた……まあ全生徒だな。なに、その資料に印を押してくれるだけでいい」



 簡単に言うけど全生徒って……何百いると思ってるんだ。しかも、そのチェックにも似た作業を一生徒、しかも落ちこぼれ扱いの俺に任せていいのか?



 散乱した部屋には、資料や何かの実験道具、それらが乱雑に散らばっている。とても女性が使っている部屋とは思えない。その中で、俺に作業を任せる資料だけを纏めてあるのは何だか不思議だった。



「わざわざ俺に任せる資料だけわけて纏めるくらいなら、部屋も片付けてくださいよ」



「バカ者、部屋もお前に片付けさせるのに私が片付けてどうする」



 やっぱりか。つまりこの人は、この膨大な資料の処理と散らかりまくった部屋の片付けを俺にやらせようというのだ。



「片付けくらい他の生徒や先生に任せればいいじゃないですか」



「この部屋は私の部屋でもあるんだ。そんなことでは示しがつかんだろう。これでも、学内じゃミステリアスな美人教師として通っているんだ。そんな雑な姿は見せられん」



「俺に任せてる時点で示しは?」



「何だ、欲しくないのか? 単位が」



「くっ……」



 腰まで伸びる水色の髪。耳にかかったそれを払う姿は、なるほど確かに一枚の絵画のようにさえ思える。流し目で俺を見る目には、鋭いものがあるけれど。



 ……そう、俺が先生を手伝う理由は彼女が今言った言葉にある。神力を持つ生徒の為の学園とはいえ学校は学校。進級するにも一般の学校と方針は同じわけで……



 要するに、DならまだしもEランクの俺では進級すら危ういというわけだ。もし進級、卒業できなければ一生をこの学園という檻で過ごすことも考えられる。



 何せここは神力の使い方を学ぶ場所。卒業できないような、神力もろくに使えない奴を野に放つと何が起こるかわからないからな。



 だがこうして、先生のパシリ……いや手伝いをすることで、進級に必要な単位を何とか誤魔化してくれるという。



「でもいいんですか? こんなことでおれの単位を上げて、Eランクのおれが進級……卒業することになって、野に放たれちゃっても」



「何だ、お前進級も卒業もしたくないのか?」



「したいです……」



 自分で自分の首を絞めるような発言だが……進級も卒業も、したいのは事実だ。



「はは、だよな。まあこんなことで進級はともかく卒業できるわけないだろ?」



 そして先生の手伝いをしても、進級はともかく卒業はそれだけでは無理だと言われてしまう。



 まあ当然であるのだが……そんな当然みたいな顔で当然のこと言われると……当然のことなのに何だか殴りたくなる。当然当然うるさいな。



 しかし、先生はこう続けた。



「まあお前が努力してるのは知ってるが、さすがに単位を誤魔化すのも限界がある。卒業までのレールは、まあ何とかしてやるが……結局最後はお前次第だ」



「先生……」



「それに私も楽できるしなー」



 先生からの言葉に胸を打たれていたのに、最後の一言で台なしになる。今の感動を返してくれ。



……



「……やっと終わったぁ」



 結局あの作業は昼休みだけでは終わらず、次の時間まで使ってしまった。ちなみに次も当然授業だったのだが、先生が誤魔化してくれたという。ホント何者だよあの人……



 そんなこんなで教室に戻ってきた……と言いたいのだが、残念ながら俺は今学園の裏山にいる。その名の通り、学園の裏にあ巨大な山だ。ここにいる、その理由はというと…



『裏山にキノコが生えていてね。ちょうど頃合いの時期なんだ……取ってきてくれ』



 と先生にめいれ……頼まれたからだ。単位を盾に命令されてるとは思わないようにしよう。曰く、一番美味しいのがこの時期なのだとか。焼いたらお前にも食わせてやると言われたので、内心満更でもない。



 この学園には噴水のある中庭や裏山、さらに水場や池、神力を扱うための訓練所などと色々なものがある。……で、……裏山に登っているのだが……



 山といっても、生い茂る木々の景色はむしろ森に近いかもしれない。登山中と言ってもいいのだろうか。



 学園の裏手にあるこの場所を裏森と命名するのが嫌だったのか、それとも本当に何らかの山なのか……まあそんなのは定かではない。木々が生い茂り、道なき道が俺の行く手を阻む。手入れされてないにも程がある。



 こんなの神力を使って木を切ったり草を分けたりして道を作れれば楽なのだろうが、いかんせん俺にはそれすらもできない。試してもいいがどうなるかわからん。



 それに、神力をうまく扱えれば空を飛ぶことも可能なのだ。むしろ飛べる奴に頼めよキノコ狩り、とも思う。



 まあせっかくの単位ゲットのチャンスだ。なのでこうやってせっせと歩いている。わけなのだが…



「あちぃ……」



 これでもかというほどに憎々しげに照りつく太陽、山道(森っぽいけど)が俺の体力を削っていく。先生が言っていた場所はもうすぐのハズだが……



 こんな所にしか生えていないのだから仕方ないが、あの人こんな所までキノコを取りに来させて。まさか楽しんでるだけじゃないよな。



 そんな悪態すらつき始めた頃、ようやく視界が開けてきた。生い茂る木々の向こう側に現れたのは、思わず目を奪われてしまう程に広大な景色だった。



 見事というべき雄大な滝、水が一面に広がる湖、倒れている人、真っ青な空、照りつけるたいよ……



 ……倒れている人?



 今、何かおかしなことがあった。俺はもう一度辺りを見渡し、確認する。見事というべき雄大な滝、水が一面に広がる湖、倒れている人、真っ青な空、照りつける太陽。



 おかしいところは何もない……と言いたいが、残念ながら倒れている人、というのは見間違いではない。



「お、おい!」



 駆け寄るとその姿がはっきりと目に映る。仰向けに倒れている人物……女の子だ。



 まず一番に目を引いたのは、その輝くような銀髪だ。背中辺りまで伸びた銀髪に所々金色が混じっており、照り付ける太陽のおかげで眩しく光っているよう。



 年代は、同じくらいであろうか。眠っているようだからまじまじ見るわけにはいかないが、長い睫毛に整った顔、出るとこは出てるスレンダーな体型、そして流れる血……血!?



 よく見ると……いやよく見なくてもそうなのだが、この子の体には血が付着している。見たところ拳銃で撃たれたようだが……ドラマで見ることはあっても、実際に撃たれた人を見るというのは初めてだった。



 ……これが、俺と自称神様を名乗る少女との出会いだった。

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