神技冠祭のお知らせ
「しんぎかんむさい?」
悪魔と戦った日から後日……とは言っても翌日だが。俺とエルシャは、アラナシカ先生の部屋に呼ばれていた。
あれからまだ一日しか経っていないのというのに、もう随分前の出来事に思える。
一日しか経ってなく呼ばれたので、呼ばれた内容はてっきり昨日の件についてもう少し深堀りするのかと思っていたのだが……要件は、全然違うもの。
今エルシャが言った通りのことだ。
「……って、何それ」
「やはり聞いてないか。カルバジナ、同室なんだからもう少し学園のことについて話してやれ。開催は近々なんだし」
「あはは……」
と、初めて聞く単語にエルシャは当然意味不明といった顔だ。
確かにエルシャに伝えてなかったのは俺のミスだ。ただ、同室だからと、そう言われても……最近は色々考え事ばかりでさ。
ほら、いろいろなことがいっぺんに起きたから、しょうがないじゃないですか。
「ぶっちゃけ忘れてました」
「……はぁ」
そんな俺の返答に、やれやれ、と大きなため息をつく。そんな呆れなくてもいいじゃないっすか。泣いちゃいますよ?
「確かにお前にとっては忘れたくなるような内容かもしれんが……一応伝統ある学園行事なんだから」
「学園行事?」
その台詞に、ピクッと反応するのはエルシャ。内容はまだ聞いていないが、行事と聞いては黙っていられないのだろう。お祭り事とか好きそうだもんな。
「あぁ。神技冠祭……神力学園唯一にして、最大のイベントだ」
「へぇ、どんなのなの?」
興味津々と身を乗り出すエルシャに対し、先生は指を一本立てる。
「ざっくり言ってしまえば、神力を競いあって戦うトーナメント形式の祭りだな」
そして、この説明である。ていうか、ざっくりしすぎだろ!いや要点は押さえてあるんだけどさ! それにしたって、もう少し細かな説明を……
「あぁ……トーナメント試合なんて、異能学園物にありがちの設定ね」
「設定言うな!」
こっちはこっちで何てこと言うんだこの神様は! 一応伝統ある行事なんだぞ!
「神力を競いあう、ねぇ……確かにヒロト君は忘れたいものかもしれないわね」
行事の内容を噛み砕いて、エルシャは何て言うか、いやらしく笑う。何とも言えないその顔は、とても殴ってしまいたくなるほどにムカついた。
ぐっ……そうだよ、神力ありきのこの学園最大の行事を、神力の使えない俺がどう楽しめってんだ。だから忘れたいんだ。
そんな俺に、楽しむような、それとも哀れむような、複雑な目を向けてくるエルシャ。くそ、そんな目で見るんじゃねえ!
「けど面白そうじゃない! 私も参加していいの!?」
「行事ではあるが、同時に学園の生徒は強制参加となっている。生徒の神力の力をより良く測る目的があるからな」
「そのためには、機械的なものじゃなく実戦的な方がより測りやすいと……色々考えてるのね。けど、それだとランクが高い人が勝っちゃうんじゃない?」
エルシャの言うことも一理あるだろう。数字だけで見ればCランクがAランクに勝つのは難しいように思える。だがそこは、問題ない。
「ランクとはいっても、あくまで総合的なものだ。例えばAランクのヴィールズとCランクのテルマニン……一見大きな差があるが、コントロールに関しては両者同じ。
いや、もしかしたらテルマニンの方が優れてるかもな」
そうそう、そこが面白いとこなんすよ。
とまあ、典型的な例だが……あくまで総合的なランクが自らのそれになるわけで、中には一つ二つ、能力値が特化している者もいる。力だけでなく、いろいろ工夫して戦えってことだな。
「ふぅん……けどいいの? 神力を競いあう、って私の、別に神力じゃないけど」
そこが複雑なところではある。その疑問に対し先生は……
「元々が神力は神から与えられし力とされてるし……根っこの部分は同じだしいいだろ」
と、何とも適当だ。確かに神力とは元々神様から与えられた力と言われているし、言ってしまえばエルシャはオリジナル神力ってわけだ。
それを聞いたエルシャは、嬉しそうに笑っている。
「きひひ……そっかそっかぁ。こういうお祭り大好きだし、久しぶりに大暴れしたかったのよね」
訂正、不敵に笑っている。
「それに、何も神力のみを競うわけじゃない。体術や知力……あらゆる項目を見させてもらう。だから、必ずしも神力で相手を叩きのめす必要はない。
素手で高ランクの神力使いを倒した者も過去にはいるしな
「それ、神技冠祭の由来意味なくなってません? あとそれ先生とか言いませんよね」
「……今年はなかなか楽しそうな祭りになりそうだな」
無視! え、冗談のつもりだったんだけど……まさかそんなことがあったりするのか? でも先生ならありえるよな。むしろ優勝してそうだもんな。
「高位Aランクのヴィールズ、サシャターン……Cランクだが狙いは正確無比なテルマニン。その力はCランク相当の神エルシャ。そして……」
それぞれ印象の強い生徒の顔を浮かべているのか、天井を仰ぐ先生。そして最後に俺を見て……
「……学園唯一にして最弱のEランク、カルバジナ」
妙に引っかかる言い方。それにその哀れみにも似た瞳は何だ!? どうせ俺は最弱ですよこの野郎!




