二人だけで話をしよう
話が一旦収束し、俺達はそれぞれ部屋へと戻ることに。先生がお開きだと手を叩き、それを合図にみんな立ち上がる。が……「ちょっと待った」とそこへ先生が声をかける。
足を進めていた俺達は、同時に振り返り……
「先生?」
「いや、一人だけ残ってくれないか。二人で話がしたくてな……多分、それはお前も同じだろう、テルマニン」
俺達の中の一人、リーシャを示す。二人だけで話がしたいとは、俺達には聞かれたくない系の話なのか。指名を受けたリーシャはというと、特に驚いた様子もなかった。
どうやら、話がしたいというのはリーシャも同じようだ。
……と、いうことはだ。先ほど話に出てきた、天使と人間のハーフの女の子というのは、やはりリーシャである可能性が高い。
先生はその可能性に気づき、リーシャもそれが自分である可能性を見たってところか。
「はい。私も……先生と話がしたかったんです」
頷くリーシャは、部屋を出ようとしていた足の向きを変え、自ら部屋の中に戻っていく。その際に、アカリが心配そうな表情を浮かべているのに気づいた。
「リーシャ、先生と話って……?」
「大丈夫、ちょっとした世間話だよ」
あくまでアカリに自分の正体を知られたくないリーシャは、他愛ない話だから心配しないようにと微笑みかけていた。
だが、世間話というのは……さすがに無理がありすぎないだろうか。
案の定、アカリも納得するには程遠い表情を浮かべている。
「……わかった」
それでも、親友が大丈夫だと言っているのだ。納得しきれていなくても、無理やりに自分を納得させたようだ。
最後にお互いに頷き合ってから、部屋を出る。この後部屋の中でどんな会話が行われるのかは、リーシャに聞かない限り明らかになることはない。
アカリほどの神力使いであれば盗聴することも可能だろうが、アカリはそんなことしないだろう。
「うーん……二人きりで話なんて、どうしたんだろ」
部屋に戻る道中、事情を知らないアカリは不思議そうに話している。まさか俺の口から(しかも予想を)告げるわけにもいかず、「さあな」とだけ返した。
これにはエルシャも、口を閉じる。彼女も勘付いているのだろう、リーシャが部屋に残った理由が。
むしろ、話を聞いただけの俺よりも、詳細に近い位置にいるだけに細かな内容を把握しているはずだ。
「……これからどうなるのかな」
神様が学園にやって来て……今日、悪魔に襲われ、戦い、殺されそうになって、助けられて……いろいろなことを聞いた。
これだけのことが、たった数時間のうちに怒ったのだ。不安になるのも無理はない。
もしも俺が、何かこう、とんでもない力を持っていたなら……安心しろとか、俺が守ってやるとかそんなキザったらしい台詞を吐けたかもしれない。
だが残念なことに、俺にはとんでもパワーどころかアカリよりも遥かに弱い力しかない。だから……
「何とかなるさ……多分」
こんな、確証もない頼りなさすぎる言葉しか返せなかった。




