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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
欠けた翼
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思いの力



 オルテリアの神力の象徴ともいえる水が、ユメの体を包み込んでいるのだ。だからといって、ユメの呼吸に支障をきたすわけではない。それはオルテリアが自身の力をコントロールできていること、そしてユメとの気持ちが同調してきていることを示している。



 それに伴い、ユメの力が、速さが上がっていく。一人では決して敵わない力……それも、二人がいれば乗り越えることもできる。



「ぬっ、小娘どもが!」



 とはいえ、それだけで簡単に乗り越えられる相手ではない。二人の力を合わせてもなお、未だ倒せぬ敵……『憤怒』もまた、ここで負けるわけにはいかないと感じていた。



 たった二人の少女に、それも一人は力が覚醒したばかり、一人は何やら本調子ではない様子。そんな相手に負けるのは、自身のプライドが許さない。



 だから全力で叩きのめすため、渾身の一撃を放ち続ける。のだが……倒れない。どんなに重い一撃を放っても、力の差を思い知らせても。



 拳は届かなくても、衝撃は届く。それにこの熱気、いかに水に包まれていても完全に防げるものではない。ゆっくりと、しかし確実に疲労が彼女を襲っているはずだ。



「はぁっ……負け、ない……倒れて、やるもんかぁあ!」



 その小さな体で、なぜ立ち向かってくる……『憤怒』には理解が及ばない。それはそうだろう、彼女には……ユメには、守るものがある。プライドなんかとは違う、引けない理由がある。それは『憤怒』には決してわからない感情。



 後ろに、今は離れたところに、守られるだけじゃなく守りたい仲間がいる。会って聞きたいことがある相手がいる。それは……自知らないところで死んでしまった姉に代わって、自分がやらなければいけないことだ。



 それらの想いが絡み合う。想いが力になるなど、物語だけの話だと思っていたが……嘘ではない。ユメの中の気持ちが、どんどん大きくなっていく。



「! 気のせいか……力が……?」



 拳を打ち合う度に、ユメの気持ちが大きくなっていく。そしてそれは、単なる気持ちの膨らみに留まらない。それは決定的な形となって、表れる。



 力で押し切り、けれども倒れない少女……その変化に気づいたのは、他でもない。拳を打ち合っている『憤怒』自身だ。少女の拳の力が、打ち合う度に強くなっているのだ。



 ユメ自身は気づいていないが……初めこそ、『憤怒』の拳に打ち込んだ反動で押されていたものが今や反動なしに打ち合えるほどだ。その変化はだんだん、見逃せないものになっていく。



「私は……負け、ないぃい!」



 疲労しているユメを支えているのは、もはやその気合いだけと言ってもいい。その気合いが、自身の中に眠る気持ちがユメの力を増幅させているとでもいうのか。



 ……結果的に言えば、それは正解だ。誰も、ユメ自身気づいていない彼女の力の根本にあるもの。それは、自身の思いを力に変えるもの。強い思いがあればこそ、自分の力が強くなっていく。



 物語の中のような力が、ユメの力そのものなのだ。思いが強ければ強いほど、本人の力も強くなっていく。そして、仲間を守りたいという気持ちが爆発しているユメに……ブレーキなど、ない。



 強大な差は、ゆっくりではあっても確実に縮まっていく。加えて、小柄な分ユメのスピードは初めから『憤怒』を凌ぐ。次第に、拳の力も数もユメに天秤が傾いていく。



 敵わないはずの力は、手が届くすぐそこに……



「うりゃああああ!!!」



「ぬぅ!?」



 ユメの思い、オルテリアの神力、そのすべてが乗った拳が、ついに『憤怒』の拳を砕く。砕くというのは表現ではなく、まるで炭のように物理的に砕けたのだ。



 体が砕けるなんて、現実にはあり得ない光景。しかしユメは今までにあり得ない光景をいくらも見てきた……だから、躊躇することはない。



「おのれぇ!」



 瞬間、『憤怒』から凄まじい炎が燃え上がる。それは間近にいるユメを巻き込み、黒い炎が二人を包み込む。

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