表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
欠けた翼
307/314

炎と水と



 力を奪われたわけではない、使い方を忘れただけ。ならばコントロールなど、細かい作業を必要としないのならば以前に近い大きさの力が使えるはずだ。そうでなければ水の壁もろとも吹き飛ばされていた可能性もあったが、ユメの賭けは見事に成功した。



「我ながら危ない賭けだけど……そうでもしないと」



 勝てない。それは、これまでの戦いで嫌でも痛感したものだ。魔物やただの悪魔程度には通用したことも、ここでは通用しない。



 自分はリーシャのように天使の力を持っているわけでも、オルテリアのように強力な神力が使えるわけでも、エドのように剣の扱いに強いわけでもないのだ。



 危険でも何でも、無理を押し通さないと勝つどころか戦いにすらならない相手……それが目の前にいるのだ。今までの自分では、守れない。守れないなら、何のためにオルテリアに着いてきたのかわからない。



 だから……



「無理してでも……明日を掴むために、私は負けない!」



 こんなところで、明日への道を閉ざされるわけにはいかない。自分も、オルテリアも、生き抜いて目的を果たす。オルテリアの記憶を、取り戻すという目的を……



「小娘が……多少の無理を通したところで、この『憤怒』サタンを殺せると思うな!」



 決意を新たにしたユメの耳に、怒りに満ちた声が届く。とたんに周囲の温度が上がっていく。場の熱気が増しているのだ……『憤怒』の、黒い炎によって。



「一撃与えた程度で図に乗るな。小娘ども……怒れる炎で焼きつくしてくれる!」



 『憤怒』……名は体を表すとはよく言ったものか。怒号に比例し、黒き炎が大きくなっていく。



「くっ、おぉおお!」



 オルテリアは後衛。前衛のユメをアシストしつつ、隙を見て攻撃をぶつける役割だ。オルテリアの神力ならば『憤怒』にも通用するし、いろいろな応用が利く。



 だから突撃するユメを水のバリアで覆っていく。これならば黒い炎を防ぐことができるし、下手に手を出すよりも効果的だ。ユメの邪魔をせずに、彼女を守ることができる。



「せいや!」



 炎の鎧に加えて水をも纏っているともなれば、強大な黒い炎にも負けはしない。壁を打ち破り、小回りの利く体は隙を見つけて転がっていく。



 先ほどまでとは明らかに動きが違う。だんだん、自身の力にも慣れてきたのだろうか。



 今までは接近しては突き放されていた『憤怒』との距離も、拳を伸ばせば届くところに。互いに、息を合わせたように右腕を振りかぶって……



「とりゃあああ!」



「むん!」



 拳を、ぶつけ合う。体格も腕の太さも段違いなのは明らか、それでも打ち合えるのはオルテリアによる神力サポート……そして何よりユメ自身の気合いの問題だ。



 比例して、炎の鎧の強度も増していく。打ち合った拳が離れても、次なる拳をお互いに叩き込む。拳と拳が、ぶつかり合いその度にユメの拳は痺れる。が、その程度気にも止めない。



 体格差も力の大きさも関係ない。こうすることでしか打ち合う手段がない……だから、体が悲鳴をあげようと骨が折れようと、ここで引くわけにはいかない。



 バゴッ



「くぅ……ぉおぁあ!」



 嫌な音がした。炎の鎧に、亀裂が走る。やはり力の差が大きすぎるのか、気合いだけではどうにもならない。徐々に黒い炎に、侵食されていく。



 気合いでは決して負けない。しかしそれと現実とは話が別だ。このまま炎の鎧が壊れれば即座に黒い炎に呑まれ、拳のぶつけ合いを続けても疲労から動けなくなる。いずれにしても時間の問題だ。



 このままなら……



「せぇええい!」



 だが、ユメは一人ではない。この体を包む温かな力が、それを教えてくれる。それは背後に構える、オルテリアのものだ。記憶がなくなっても彼女は、間違いなくユメ達の仲間なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ