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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
欠けた翼
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二人の戦い



「てやぁあああ!」



 ユメの体を、淡い光が包み込む。それが精霊であるレイによるものだということは肌で感じた。力がだいぶ減ったとはいえ多少なりの回復はできる。万全とは言えないがそれでもユメは、『憤怒』へと突っ込んでいく。



「ふん、性懲りもなく」



 とはいえ、これまでの戦闘から少女の戦法が肉弾戦のみというのはすでに見抜いている。突っ込んでくるしか、ないのだ。



 しかしその攻撃力はたかが知れている。この強大な力の前には、為す術もないだろう……



「はぁあ!」



 突っ込んでくる少女の背後から、幾本の水の槍が飛んでくる。それはユメを追い抜き、一直線に『憤怒』へと狙いをつけるが……



「しゃらくさい!」



 黒の炎は、それらを一瞬にして呑み込む。槍は虚しくも『憤怒』へは届かないが、それでも道を作ることならできる。相性で数のごり押し、それにより黒炎を晴らし、ユメはその中へと突っ込んでいく。



 その向こうにいる『憤怒』へと拳を突き立てる。が……



「やはりそんなもんか」



「くっ」



 この巨体をどうにかするには至らない。尚も殴り続けるが、『憤怒』に通用した様子はない。そうしている間にも、『憤怒』の体はどんどん熱くなっていく。



「離れて!」



 何かを感じ取ったオルテリアの言葉に弾かれるように、その場から後退。直後、『憤怒』を中心に爆発が起こる。



 広い範囲の爆発ではないが、それでも離れるのが後一瞬遅ければあの爆発に巻き込まれていた。体が熱くなっていたのは、爆発のためのエネルギーが蓄積されていたからだろう。



「自爆……じゃないよね」



「それなら楽々だけど、希望的観測すぎるわね」



 当然、『憤怒』は無傷。それどころか、体が一段と大きくなっている気さえする。



 同じ炎でも、ユメのそれとは質量も威力も桁違いだ。だからといって、やられてやるつもりはない。相手が大罪魔獣だからといって、そんなものは言い訳には……



「大罪、魔獣……」



 そこまで考えたところで、ふと思い出す。本当ならもっと早くに思い出してもよかったものを。



 彼が大罪魔獣というのなら、オルテリアの記憶を奪った『暴食』についての情報を持っているかもしれない。それを聞き出すことができれば……そんな考えが、浮かぶ。それを聞き出すためには、やはり倒すしかない。さすがに今、この状況で聞ける余裕はない。



 負けられない理由が、希望が、見えた。



「ねえ、あんたに言われた通りに槍をイメージしたら出たけど……全然通用してないわよ」



「けど、イメージはできてる。続けていれば絶対、いつか隙ができるはず」



 今は戦いに集中だ。昔アカリが言っていた、神力というのはイメージが大事だと。何をしたいか、より強いイメージを持つことでその力も強くなると。無論、その者の潜在能力にもよるが。



 それをオルテリアに教えたら、うまくいった。だがその威力は元には遠く及ばない。やはり記憶をなくしているだけあって、ちょっと教えただけでうまくいくほど甘くはない。



 『憤怒』を倒し、同じ大罪魔獣である『暴食』の情報を聞き出す。死なないこと、それ以外でそのためにユメ達は……ユメは、負けるわけにはいかない。



 相手は強大な力を持っている。こちらは即席も即席のチーム。力が足りないどころか、チームワークすらままならない。



 それでも、諦めるわけには……



「来るわよ!」



 オルテリアの言葉に、ユメははっと我に帰る。次の瞬間には黒い炎が、まるで津波のように襲いかかってくるではないか。



 考え事はあと。諦める諦めないを考えるなど、この窮地を越えるのには邪魔なだけだ。だからユメは、軽く首を振って……



「とぉりゃあぁあああ!!」



 一歩前に出て、津波へと拳を突き出す。津波を押し返す……まではいかなくても、拳をぶつけた衝撃により空洞の空間を作ることができる。



 衝撃を作り出しているユメはもちろん、その後ろにいるオルテリアにも炎は届かない。が、熱気は別だ。しかも炎の勢いは、ユメの拳程度では止められない。



 黒炎は、ユメの腕を覆う炎の鎧を上回り、鎧を徐々に溶かしていく。それにより熱さが、痛さがゆっくりと、しかし確実に素肌へと近づいていく。



「ぐ、ぅ……!」



 呑まれる……覚悟したユメの体が、ふいに軽くなる。同時に、拳や体に伝わっていた熱さ、痛さも消え浮遊感がユメを襲う。



 直後に、まるでユメを避けるように辺りを黒炎が呑み込んでいく。

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