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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
欠けた翼
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あたたかい炎



 『憤怒』の黒炎に触れた影響で焼けていたはずのユメの右足は、赤く燃える炎によりつつめれていた。炎に包まれているのに熱くない……どころか、今までの痛さや熱ささえも感じない。まるで、この炎が傷を治してくれているようで。



「あったかい……」



 傷を包み込み癒してくれる……癒しの炎と表現すべきだろうか。不思議と温かさを感じる。炎が包み込む、というより、炎をまとっている、と言った方が正しいだろう。



 しかし、この現象を追及する暇はない。まずは目の前の敵をどうにかしなければいけない。幸いにも、『憤怒』の意識はユメに向いている。



 これでオルテリアに被害が向くことはなくなったはずだ。とはいえ、形勢が好転したわけではない。それでも、ユメは逃げるわけにはいかない。



「どうせやるしかないなら……信じるよ!」



 何を信じるのか、誰を信じるのか……それは謎の炎に対してか、それとも自分自身に対してかはわからない。だがそれは、やけくそではなく覚悟を決めての言葉だ。



 その場から駆け出し、向かうは一直線に『憤怒』。走り幅跳びの要領で、助走をつけた状態で跳躍する。先程と同じく……しかし先程とは違った、右足での蹴りをぶつける。



「てやぁああ!」



 炎をまとった右足が、『憤怒』の顔に直撃する。今度は、先程のような焼けるような熱さはない。これは、クリーンヒットしたはずだ。



「よしっ、熱くな……」



「その程度か?」



 直撃したことで表情を明るくするユメだが、『憤怒』にダメージどころか動揺すらも見られない。ユメはとっさに離れ、『憤怒』はそれを追撃。



 黒炎の弾が連続して襲い掛かる。一つ一つがバスケットボールほどの大きさで、当たればただでは済まない。が、ユメは避ける気配はなくむしろ特攻していく。



 迫る黒炎、それに拳を突き出して……



「うりゃぁあああ!」



 黒炎を、炎を纏った拳が打ち抜く。続けて反対の拳で別の黒炎を打ち、さらには蹴り飛ばしていく。予感があったわけではない、だが直感した。きっと大丈夫だと。



 飛んでくる黒炎を全て消し飛ばしたユメの両腕、両脚は共に炎を纏っていた。それは、まるで炎の鎧。肉弾戦を得意としたユメにおあつらえ向きの力と言える。



「すごい……」



 あの猛攻を凌げる力を宿した炎。とはいえ、先程のユメの蹴りは通じなかった。となれば、『憤怒』が今やったように炎を飛ばしてみてはどうだろうか。



 もしかしたら特別な攻撃力があるかもしれない。そう考えたユメは、早速炎を纏った自分の手のひらを突き出し……



「はぁああ!」



 炎を飛ばすために、とりあえず力を入れてみたのだが……何も起こらなかった。



「あ、あれぇー……?」



 予想が外れ、唖然。何度試しても炎は出ない。本当に、鎧の役割しかないということだろうか。それでもないよりマシではあるが。



「確かお姉やリー姉は……あれぇ?」



「防ぐだけでお終いか?」



 この力は間違いなく神力だろう。神力にはいろいろな用途があると聞いたことがあるが、これもその一種なのだろうか。そういえばエドワードの神力は、『星剣』を出し入れする空間を作るものだと聞いたことがある。



 その一瞬の思考が……『憤怒』の接近を許した。



「しまっ……くぅっ!」



 ユメにものとは比べ物にならない拳。とっさに腕をクロスさせモロに食らうことだけは防いだものの、そのあまりの力の勢いに紙のように吹き飛ばされてしまう。



「っ、かはっ……」



 飛ばされ、そのまま黒炎の壁の中へと突っ込んでしまう……かと思いきや、吹き飛ばされた先の、地面から突き出た岩にぶつかったおかげでそれは免れる。



 それでも、岩に叩きつけられる衝撃は消せない。両腕、両脚以外に炎の鎧はないのだ、受け身も取れずにダメージはダイレクトに伝わる。



「あ、あんた……!」



 座り込むように崩れ落ちるユメを心配し駆け寄るのは、近くにいたオルテリアだ。いかにユメの身体能力が高いとはいえ、その体はまだ少女のもの。神力の防御もなしに、生身でのこの衝撃は辛い。



「オル、ね……うぅ、っ……!」



「喋るんじゃないわよ! ひどい怪我……早く手当てしないと!」



 そうは言っても、この場に治療器具なんてないし、そもそも何をどうすればいいのかわからない。何より、そんな暇を与えてくれるとも思わない。

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