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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
欠けた翼
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逃げない



 脚を焼かれ、たまらずユメはその場に崩れ落ちる。これまでに味わったことのない激痛に、自分でも何を言っているのかわからない叫び声を上げる。



「あぁっ……ぐ、ぅ……!」



 リーシャ達と出会った村……そこでは、ユメ以外の全員が殺されていた。皆、こんな……これ以上の痛みを味わって死んだのかと、ユメは密かに思っていた。



 たまたま生かされただけとはいえ、自分にはみんなの分まで生きていく義務がある……それを胸に、立ち上がろうとする。



 ……が、体は言うことを聞いてくれない。その思いすら、焼けつくこの痛みに忘れてしまいそうだ。



「ふん……脆弱だな。まあ、どのみち皆殺しだ」



 痛みにもがくユメを一瞥し、『憤怒』は歩みを進める。その先には、その場に立ち尽くすオルテリアがいる。



 『憤怒』の狙いは精霊……しかし、この場に残った二人を消さない理由はない。無慈悲にもその歩みが止まることなく、大きな一歩は確実にオルテリアとの差を縮める。



 以前までの彼女ならいざ知らず……今の彼女には、『憤怒』どころか並の悪魔や魔物に対抗する手段すらない。力を使ったレイも同じこと。



「くっ……まっ……ぁ……!」



 待てと、それだけの言葉すら絞り出せない。オルテリアにもレイにも、手を出させるわけにはいかないと、ユメは這うようにしてでも『憤怒』を追いかける。



 これまで、共に生き残ってきた人達を目の前で殺されてきた。その悪夢から救ってくれたリーシャ達……彼女らに助けられるばかりで、自分には何もできないのか。



「はや、く……にげ……」



「あなた一人を置いて、逃げろって? ……そんな情けないことできないわよ!」



 せめて逃げてくれ。その願いさえも、彼女自身に却下される。



 自分よりも年下の女の子に守られて、自分だけおめおめ逃げる……そんなこと、許されるはずもない。情けないとは言いつつ、結局はユメを置いてはいけないということだろうか。



 まったく、あんなに鬱陶しそうにしておいて、記憶を失っても芯のところは変わってない。本当は優しいのだ。



「なら望み通り、二人まとめてあの世行きにしてやる」



 オルテリアの眼前に立つ大男は、拳を振り上げる。その拳には黒く燃える炎がまとっており、それは何の力も持たない少女の命を奪うには充分だろう。



 それを黙って見ているしかないのか。足が動かず、今も体力を持っていかれている。気を抜いたら意識を失いそうだ。



 それでもこのまま見殺しになんて……できるはずがない。彼女は仲間で……姉の、友人なのだから!



「や、めてぇえ!」



 喉がつぶれてしまうんじゃないか。力の限り叫ぶ。ただ叫んだだけで事態が好転するはずもない……そんなことはわかっていても。



 そしてその瞬間……『憤怒』が赤い炎に包まれる。事態が、変化する。

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