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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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天真爛漫娘と高笑いお嬢様



 神技テストの結果が悪い俺に対し、正面に立つ元気な幼なじみ、アカリは元気に励ましてくる。学園最底辺の俺を、学園トップのアカリが励ましている。



 その様子を見る周りからの目には、やはり優しいものはない。



 「何であんな奴に……」「いくらやっても無駄だ……」……言われているわけでもないのに、まるでそういう台詞を耳元で囁かれているようだ。それほどに、俺のテスト結果は、Eランクという評価はひどい。



 例えば、遠くの的に力の塊を当てるテスト。これはダーツに似ているだろう。神力を、矢なり弾なりと自分の中で想像した形にして、それをダーツの矢として放つものだ。



 精密さが求められるこのテスト、俺の場合は狙いがことごとく外れ、挙げ句力の大きさが謝って的を壊してしまう。ちなみに、アカリは百発百中、全弾中心に命中だ。



 例えば、単に力の大きさを計るテスト。火で例えると、アカリを太陽のそれだとすると、俺はろうそくの火だ。……さすがに言い過ぎ、だと言い切れないところが悲しいところである。



 これがほんの一部であるが、とにかくテストの結果は散々なわけで。この結果には、もうため息しか出ない。



「はぁ……」



「ヒロト、ため息をつくと幸せが逃げるんだよ?」



「わかってるよ。あれだ、空気の入れ換え的な?」



「疑問系で返されても」



 日々練度を上げようと努力しているが、努力に結果が着いて来てくれない。そのことに思わず根を上げそうになることもあるが……諦めたくない。



 それに、近くで応援してくれる奴がいるから、格好悪い真似は出来ない。いや、もう格好悪いんだが、これ以上はって意味な。



 そんなことを考えながら、話しかけてくるアカリに受け答えしていたところに……妙に明るい、というかうるさい声が響く。



「アカリさん! 次は負けませんわよ!」



 耳をつくんじゃないかと思えるほどに大きな声。その聞き覚えのありすぎる声に、内心で「またか」と思いつつ声の方へ視線を向ける。



 そこへやって来ていたのは、アカリと同じくAランクである、オルテリア・サシャターンだ。



 赤髪ショートのアカリとは対称的に、腰まで伸びた青色の髪をなびかせている。それには思わず、目を引かれてしまうほど。まあ、対称的なのは髪だけではない。



 こう言っては何だが……アカリはお胸のところが成長が著しくない。対してサシャターンは……まあ、でかい。うん。



 ……今、アカリから視線を感じた気がする。



「オルテリアちゃん……今回はたまたまだよー。僅差だったし」



 次は負けない宣言をされたアカリは、たまたまだと手を振りながら応えている。僅差、というのはアカリの遠慮……というわけではない。



 この青髪の女の子は実際に、Aランクの中でもアカリに勝るとも劣らない実力者なのだ。それ故か、サシャターンはちょくちょくアカリに勝負を仕掛けている。



「僅差でも負けは負けですわ!次こそは……あら、そちらは……えっと、確か、“落第の弾丸”さんじゃなかったでしたっけ?」



 僅差でも、負けは負け。彼女はそのお嬢様みたいな喋り方から予想される通り、プライドが高いらしい。お嬢様みたいな、というか、実際にどこかのお嬢様らしいのだが。



 会話の途中、アカリの隣にいた俺に気付いたらしい。彼女の口から出た、アカリと同じような二つ名。そもそも本当に誰が付けたのか。



 この学園では良くも悪くも『有名人』に二つ名が付けられている。アカリの場合は良くもだが、俺の場合はもちろん悪くも、だ。



 そんな俺に付けられた二つ名……それがこの、“落第の弾丸”。さらっと聞いただけではかっこよく聞こえるかもしれない。が、問題はその意味。落第というのはそのまま、今の俺の状態、最底辺ってのを表している。



 弾丸ってのは、おそらく止まることがないという意味。……つまり、ずっと最底辺、最底辺のまま一直線、とかそんな意味で付けられたんだろう。



 そんな俺の二つ名を口に出したサシャターンだが、だからといって何かを気にした様子もない。そのまま彼女は、俺とアカリとで視線を交互に移して首を傾げる。



「そういえば……お二人はご一緒していることが多いですわね。お友達ですの?」



「私とヒロトは、幼なじみだよ! 友人なんかよりよっぽどかたーい絆で結ばれてるのさ!」



 そう答え何故か「えっへん」と小さな胸を張るアカリを見つつ、再び俺に視線を向けるサシャターン。その曇りのない瞳に、俺は思わずたじろんでしまう。



「何だよ、どうせAランクのアカリとEランクの俺が一緒にいるのが変だって思ってんだろ?」



 だから、とっさに口をついて言葉が出てしまう。何て態度の悪い奴なんだろう。だが実際、そんなことを言われたことは多いのだ。



 むしろ、今言ったように直接的なこともな。だから、こんな対応なってしまった。



 アカリは成績はずば抜けているし、フレンドリーな性格で裏表がない。おまけに幼なじみの俺から見てもルックススタイルはいいし、ファンクラブが存在しているとかなんとか。



 そんなアカリと一緒にいるのが学園最下位なんて、認めない奴が多いのだ。だから、何かとアカリに勝負を仕掛けているこいつもきっと……



「?いえ、そんなこと思ってませんが……というかアカリさんが望んでご一緒しているのでしょう?それをとやかく言うつもりはありませんわ」



「……え……あ、そう」



 返ってきたのは、予想だにしないものだった。てっきり、何かしら言われると思っていたのだ。まあ、何かしらは言われたが……それは今まで言われてきた悪意あるものとは別のものだった。



 アカリがいるから直接的には言われないかも、どころのものでもなく、そこには何の悪意もなかった。。



「聞きますわよ、貴方の噂。落第生、最底辺。実力もその二つ名の通りひどいものです。さっきのテストを見てそう思いましたわ。正直才能の欠片も感じられません」



「ちょ、ちょっとオルテリアちゃん……」



 続けて言われるのは、ボロクソな内容の俺への評価。まあ、その通りだから言い返す言葉もないんだがな……



「……けど貴方、相当努力しているみたいですわねら見ればわかります。報われない努力なんてありません。いえ、それ以前に、その努力の量は誇っていいものでさ。周りが何と言おうと、貴方は堂々としていいと思いますよ?」



 ボロクソな内容……だと思っていたが、その後紡がれたのはまたも予想だにしない言葉。その言葉に、俯きがちになっていた俺は顔をあげる。



 素直に、驚いたり今まで陰口や暴言を吐かれることはあっても、こんな言葉をかけられたことなんてなかった。



 いや、アカリ以外には、なかった。



「ちょ、何で泣いてますの!?」



「いや……神様は不公平だけど、天使はいたんだなって……」



 今目の前に天使を見た。今までお嬢様タイプのいけすかない奴だと思っててごめん。



「オルテリア様……」



「様!? 止めてください!」



「おい、“爆炎の魔女”が落第生を泣かせてるぞ」



「違いますわぁー!」



 おかしい、涙が止まらないや。そんな俺を見て慌てるオルテリア様と、はやし立てる周りの生徒達。ちなみに今台詞にあった“爆炎の魔女”、それが彼女、オルテリア様の二つ名だ



 その由来はというと、学園内の家庭科室で料理をしていたところ、調理室の半分を吹き飛ばしたという話から来ている。本人曰くハンバーグを焼いていただけとか。神力関係ない。



「ちょっと! 様付け止めてください!」



 心の中で様付けしていたのがばれてしまったらしい。



 ……涙も引っ込んだところで、何気なくアカリを見る。するとさっきまでの俺達のやり取りを見ていたらしいアカリが、何だか不満そうな顔をしているのだが……どうしたのだろうか?



「私のことはオルテリアで構いませんわ、落第さん」



「わかったよオルテリア……って、落第さんって俺のこと?」



「はい。あ、もちろん侮辱の意味はありませんわ。落第……最底辺というのはむしろ、これより下はないということ。何事も前向きに考えることですわ」



 オルテリア様でなく正式に名前で呼ぶ許可を貰う。逆に俺に対しては、何とも、何ともな呼び方だ。うーん……いいこと言ってるんだろうけど、その呼び方はどうにかなんないかな。



「あの……名前とかで呼んでもらえませんかね?」



「あら、おきに召しませんでした? では……お名前、何でしたっけ」



 名前で呼んでくれという願いは、予想外の方向から切り捨てられた。いや、同じクラスですよね!?



「……ヒロト・カルバジナだ。よろしく」



「おっほん、では私も。オルテリア・サシャターンですわ。こちらこそよろしくお願いしますね、落第さん」



 話聞いてた!?



 驚愕の表情を浮かべているであろう俺の視線の意味がわかったのか、彼女は照れたように笑って口元を隠す。その仕種が、何だかとてもお嬢様っぽい。お嬢様なんだけど。



「すみません、殿方を名前でなんて恥ずかしくて……それにこういったあだ名も親しみがあるじゃないですか」



あだ名についての意義を唱える。そ、それはそうだろうが、果たしてそれはあだ名なのか? まあ俺としては別に呼び方に大した執着はないんだけどさ……



「アカリさんのように、私が真に認めた人は名前で呼ぶことにしていますの。だから貴方も頑張ってくださいね?」



「はは、まあ頑張るよ」



 名前で呼ばれる為に頑張る……とは違うが、応援してくれる人がいるというのは素直に嬉しいものだ。しかし、名前で呼ばれる条件がアカリクラスってレベルたけーな。



「努力はいずれ身を結びます。それに私は努力している人が好きですから、応援したくなるんです」



「!」



 何気なく言われたその言葉に、思わず顔が熱くなる。さて何と反応したらいいものか……返答に迷っていると、その前にアカリが出てきた。俺と、オルテリアの間に割り込むようにして。



「オルテリアちゃん……次のテストでは私が圧倒的に勝つから」



 それに、普段は勝負の勝ち負けにこだわらないアカリからの思いがけない言葉。何だろう……笑顔なのに、何だか怖い。



「宣戦布告ですわね!? ですが、珍しいですわねアカリさんがそのようなことを言うなんて」



「どうしたんだよアカリ。何からしくないぞ?」



「知らない!」



「ぐはっ!?」



 勝負に勝つ、よりは楽しむがモットーだというオルテリア。それはアカリにも似たところがあり、勝負だ勝負だとは言っても何だかんだ楽しくやってきていたはずだ。が、今のアカリからは無言のプレッシャーを感じる。怖いくらいに。



 そこで俺は、らしくないと告げる。それだけで……アカリは俺に、無言の腹パンをおみまいして去っていく。神力がなければ非力な女の子、というわけでもない。



 普段から基礎体力も大事だと体を鍛えているアカリの力は素でもなかなかのものだ。おまけに油断しているところにだ。



 思わぬ攻撃にしゃがみこんでしまう。情けないと思うならどうぞくらってみてほしい。神力の拳は電柱を砕くとはいえ、素の拳でも瓦一枚くらいなら割れるのだ。



 ……正直……痛い。な、何で俺は殴られたんだ……?



「どうしましたのアカリさん……」



「さ、さあ……」



 痛むお腹を押さえ、殴られた理由のわからない俺は、怒っているらしきアカリが去っていくのをただ見ているしかなかった。

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