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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
欠けた翼
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二人の旅路



「へくちっ」



「! あれ、なになに今の可愛いくしゃみ! やだかーわーいーいー」



「……」



 びゅうびゅうと風の吹き荒れる荒野を歩くのは、オルテリアとユメだ。こうして二人(プラス精霊一体)でリーシャ達から別れて、数日が経つ。日数を重ねても、二人の関係は変わらないでいた。



 基本的に無口なオルテリアに、ちょくちょく夢が話しかける。以前までのオルテリアとならば、きっと話題の途切れることのない会話劇が弾んでいたはずだが……今では、そんな気配はない。



 話しかけられても素っ気ないオルテリア。だがそれにめげないユメが、こうしてからかったりもしながら話しかけていくのだ。



 ユメには、オルテリアとはそんなに長い時間を過ごしていない。彼女の中の人物像は、基本的には姉であるアカリに聞いたものである。なので多少の違和感はあってもリーシャ達ほどの動揺はないのだ。



 とはいえ、少しでも共に過ごしたオルテリアの人格が変わってしまったことは重い問題だ。それが、長らく一緒にいたリーシャにあんな顔をさせるならなおさらだ。



 だからこそ、今のオルテリアと一緒にいても一番ダメージが少ないであろうユメが、オルテリア離反の動向を名乗り出た。一人で行かせるなんて、もってのほかであったし。



 もちろん、自分程度の力で今のオルテリアを守ることに限界があるのはわかっている。その時は、全力で逃げる所存だ。これでも、足は速いのだ。



 今は、少しでもオルテリアが落ち着ける時間を設けることが必要だ。当面の問題は、リーシャ達に任せればいいだろう。彼女らなら、何とかしてくれる。



 だから今は、この記憶をなくしてしまった少女の道しるべに、少しでもなれるように……ユメは笑う。



「ほらほら、いつもそんな仏頂面してたら疲れない? たまには笑わないと。ほら、にーって」



 オルテリアの顔を覗き込み、口の両端を引っ張って笑顔を作って見せるユメ。



「……あなたこそ、いつもそんな顔で疲れないわけ?」



 彼女は素っ気ない。



「全然! だってあなたに笑っててほしいから!」



 どこまでも無邪気な笑顔に、オルテリアはたまらずため息。それでも、この底抜けの明るさにどこか安心感を覚えてしまうのはなぜだろうか。



 ちなみに、今のオルテリアは自身の名前で呼ばれることを嫌う。記憶がない故知らない名前で呼ばれたくないのだろうか。だからユメは、『オル姉』と呼んでいた以前とは違い名前や愛称で呼ぶことを避けていた。



 それが不便でないといえば嘘になる。それでも、今は彼女にストレスを与えることはしたくはないのだ。少しでもいいから、笑っていてほしいから。



 短い時間でも、見たあの笑顔はとても素敵なものだったから。



「ところでさー、これどこに向かって歩いてるの?」



「知らないわよ。ここがどこかも、どうしてこうなってるかも覚えてないのに」



「えー! そんな無計画だったの!?」



「ついてくるって勝手についてきたのはあなたでしょ」



 二人の関係は変わってない、とは言ったが、それでも初めに比べれば会話の量は増えたように思う。まあ、あまりにしつこく話しかけてくるユメにオルテリアが折れた感じではあるが。



 目的のない旅……それ自体はこれまでとあまり変わりはない。ないのだが、思ったより今のオルテリアは行き当たりばったりの面が大きいのかもしれないと感じた。



「やれやれー、しょうがないんだからまったくもう。このお茶目さん♪」



「はぁ」



 とはいえ、これまでに魔物や悪魔に出会うことはあってもユメの体術もしくはレイのおかげで事なきを得ている。リーシャはひどく心配していたが、そうそう強い敵に当たることもあるまい。



 これまでの旅だって、強者と呼べるのは数える程度だったというし。狙いでもしない限り、この広い世界でどうしようもない敵に会うことはないだろう。



「んー……ねえ、何だか熱くない?」



 そんな油断があったからかもしれない。起こった異変に……微かにでも、反応が遅れたのは。遅れなかったから対処できたのかと問われれば、答えはノーだが。



「熱い……どころじゃない。何よ、これ」



 異変に気付いたのは、オルテリアも同様だ。彼女の戸惑いの言葉に視線を巡らせると……いつの間にか、自分達の行き先が炎の壁に阻まれている。行き先だけではない、まるで二人を囲うように、円状に炎の壁が広がっている。



 広範囲に及ぶ、黒い炎が。

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