戦いのあと
「おぉ怖イ。わたㇱを逃さナイそノ気迫は結構。……だガ、お忘レか? わたㇱの能力」
リーダーの足からは逃げられない……そう考えていた俺の目に、驚くべきものが映った。悪魔の体から発せられる、電気……それは、リーダーのものと同じものだ。そこへ、黒い魔力が重なっていく。
奴の能力……それは、相手の技をコピーし、それをアレンジしてより精度を上げて自分のものにするというものだ。リーダーの電気に、己の魔力を重ねて自身の体を強化しているのか。
「ンん、これはイイ……が、消耗モ激しソウだ」
身体強化故の消耗か、まだ体に馴染んでいないのか……その状態はあまり長く続きそうにない。が、この場から逃げるには充分な時間だろう。
「ではマタ、いずレ……」
「させにゃい!」
優雅に一礼する悪魔に、身体強化で迫るリーダー。一瞬のうちに距離を詰めたはずだが、繰り出したリーダーの拳は空を切る。今の今までそこにいた悪魔の姿が、消えていたのだ。
……俺達は呆気なく、悪魔を取り逃がした。
「っ……まだ! 今から追いかければ……」
「待って!」
悔しさに歯を食いしばる。リーダーはすぐに追いかけようとするが、そこへ大きな声が響く。それは、さっきまで苦しそうにしていたピルカのものであった。
「深追いは……禁物……」
上半身を起こし、足を押さえながらも先ほどに比べたら楽になったようなピルカの姿。それに安堵しながらも、強がっているんじゃないかと心配になる。
すぐに体を支え、顔を覗きこむ。
「ピルカ、大丈夫なのか!?」
「う、うん……心配してくれるのは嬉しいけど、ち、近い……」
大丈夫であると頷くが、顔が赤い。傷口からバイ菌でも入って、熱でも持ったんじゃないのか?
俺を庇ったばっかりに……
「ベルくん、ピルカちゃん! 二人ともすぐ治療するから!」
そこへ、リーダーが駆け寄ってくる。敵がいなくなった今、真っ先に考えるは仲間のこと……それがこの人だ。
他にもやられた仲間はいるが、重症なのがこの二人だ。リーダー自身も消耗しているはずだが、そんなものは後回しに仲間の治療にあたっていく。
治療は得意ではないと自称しているが、それでもベルがこうなっている以上、一番頼りになるのはリーダーだ。本人もそれをわかっているから、自分のことを後回しにしているのだろう。
「うっ……」
「うん、傷口は塞がったみたい。ピルカちゃんも……よし。私は他のみんなのとこにいくから、ここは任せたよ!」
ベルとピルカを治療し、他にも倒れた仲間の所へと向かっていく。ピルカの意識ははっきりしているが、ベルは最中に気絶してしまったようだ。
腹部を貫かれ、今まで気を張っていたのだから当然だろう。
「二人とも……よかった」
二人の治療が終わったことを確認し、安心したのかユウキはふらふらと膝から崩れ落ちる。
……正直、気になることはたくさんある。特に、ユウキの……けど、今はやめておこう。それどころではないし、それに……
おそらく、ユウキ自身もわかっていないことだろう。それを問い詰めても意味がない。
「……ずいぶん、やられちまったな」
周りを確認し、呟く。今までの悪魔、魔物とはレベルの違う相手……とはいえ、まさかここまでやられるとは思わなかった。
「でも、生きてる」
それにユウキが応える。確かに……あれだけの戦闘があったとはいえ、誰も死んではいない。それは救いであり、心の底からよかったと思える。
みんな、頑張ったからな……
「っ……」
「お、おいピルカ!?」
突然、腕の中のピルカが頭を押さえる。まさかまだ何かあるのかと思い、肝を冷やすが……
「へへ、何でもないよ……」
「けど……」
「大丈夫だって。心配しすぎ」
まだ完全にとは言えないものの、先ほどに比べれば顔色はいい。が、俺達を心配させないように本人が強がっている可能性もあるし。
「ホントに……大丈夫なんだな?」
「だからー、言ってるじゃん」
心配するなと言いたげに、その表情には笑みが浮かんでいた。そこには、とても無理をしているというようなものはなかった。
だから、俺もほっと胸を撫で下ろしたのだ。
「安心してよ……だイじョウぶだから」




