アレンジ
「安心しナサイ。あなたタチは、立派ナ研究材料とシテ役立てテ……」
「うぅ……うにゃあらぁあああああ!!」
俺達にまさに、魔の手が忍び寄る中……そんな絶望をかきけすような叫び声が、辺りにこだました。
その直後、悪魔の背後で激しい音とともに、土煙が舞い上がる。
「! ……おやオヤ」
音と土煙の正体……それは、巨大な魔物によるものだ。その場に倒れ、まるで吹き飛ばされてきたかのように。
そうなっている理由……思い至るのは、一つしかない。
「ぜえ、ぜえ……私のかわいい仲間達に、何してる!」
先ほどまで、魔物と戦っていたリーダー……彼女が、その魔物を吹っ飛ばしていたのだ。肩で息をしながらも、激しく悪魔を睨み付ける。
その体からは、バチバチと音をたてて電気が激しく放たれている。あまりの勢いに、体が少し発光しているほどに。
「これハ驚イた。試作体とはイえ、アレを吹っ飛バスとは」
「ちょっと手こずったけどね……あとはあんただけだ!」
驚いた、とは口にしつつも愉快そうな悪魔と、残りはお前だけだと豪語するリーダー。だが、他には人造人間もいたはずで……
そう思い目を凝らすと、魔物に押し潰されるように倒れる人造人間が。どうやら、魔物を吹っ飛ばし一緒に人造人間も巻き込んだようだ。
その力業に言葉も出ないが……とにかく、これで残る敵はあの悪魔だけだ。
「ベル、ピルちゃん……ちょーっと待っててね。こいつをすぐにぶっ倒して治療するから!」
「それハ楽しミ」
今まで見たことのない怒りの気配を隠すこともなく、リーダーは悪魔を睨み付ける。ベルを、ピルカを、みんなを傷つけられた怒りがそこには見えた。
対して常に余裕げな悪魔。その不気味な気配に呑まれる……前に、駆け出したリーダーはほとばしる電気を増加させていく。
「にゃらぁあああああ!」
バチバチと電気を体にまとわせたまま、リーダーは突撃する。どういう原理かはわからないが、スピードはかなり上がっている。
あのスピードから繰り出されるパンチは、相当な威力だろう。強力な電気をまとっているなら尚更に。
現に、その拳が打ち込まれた岩は粉々に砕け散る。……しかしその場にいたはずの、悪魔の姿はそこにはなかった。
「どこに……そこ!」
「おっトト……」
消えたと思われた悪魔は、すんでのところで攻撃をかわしていたらしい。しかしそれにも反応はしたリーダーの蹴りが舞う。
だがそれも、悪魔に避けられてしまう。まるで、風に舞う紙のように鮮やかな避け方だ。
「この、避けるな!」
「それハ無理な相談」
攻めるリーダーと避ける悪魔。リーダーの攻撃はキレのある動きなのだが、それを涼しい顔で悪魔は避けていくのだ。
このままでは平行線……かと思いきや、気のせいか悪魔の体が発光しているように見える。……いや、実際に発光している。しかも、電気をまとって。
「! それ……」
「ほい、お返シ……!」
一瞬の隙……リーダーの拳のラッシュの隙をつき、悪魔は電気をまとった拳をリーダーの顔に打ち込む。あれは……ベルの時と同じように、リーダーの技をコピーしたのか!?
「ぐっ……おもっ!」
まともに拳を浴びたリーダーは、そのまま吹き飛び……そうになるのを、何とか堪える。しかし口の中を切ったのか、口からは血が流れている。それをペッと吐き出し……
「にゃるほど……技のコピー、それも自分流にアレンジして威力を上げてるってことか」
「察しの通り……電撃と、魔力を織り交ゼて、ネ」
納得したように、頷く。それを受けた悪魔は、自ら認めるように話している。
ただのコピーではなく、それをアレンジしてレベルアップした上で跳ね返す……単にコピーされるよりも、こおれは厄介だ。自分の技をいとも簡単に、威力を上げて返されるんだから。
これでは、まともに攻撃することさえ……
「ふん、にゃら……コピーする暇もなく攻撃するだけ!」
しかしリーダーは、物怖じすることなく突撃していく。そうだ、リーダーは力押しの部分が強いから、小難しい小細工なんか気にしないで突っ込んでいくタイプなんだ。
再び距離を詰め、怒涛のラッシュを繰り出す。それでも悪魔には当たらず、避けられるだけ。これじゃ、先程の二の舞だ。何とか悪魔の動きを止めないと……




