形勢
「ぅあぁああああァアあア!!」
左足をレーザーによって貫かれた痛みから、ピルカの悲痛な叫びが轟く。それは聞いたことのない叫び声で、聞いているだけで胸を締め付けられる。
その上、それは俺を助けた結果によるものなのだ。
「ピルカ!!」
倒れたピルカに駆け寄り、顔を覗きこむ。顔は青くなり、口からは血が流れている。撃たれたのは足とはいえ、ダメージは身体中を襲っている。
「か、り……よかっ、ぶじ…………」
「いいから、喋るな!」
苦しげに声を出すピルカは、瀕死の状態なのは明らかだ。
確かに、足を貫かれ重症とはいえ……この弱り方は、少し異様に感じる。何か仕掛けでも……いや、今はそんなことはどうでもいい!
「ピルカしっかり! 今手当てを……」
「ピルカァアアア!!」
とにかく傷の手当てをしなければいけない。俺に神力があれば、この傷も手当てすることができたんだろうか。
手当てを決めるが、仲間はあの人造人間に邪魔され動けない。俺一人でどうにかするしかない……そう考えていたときだ、ベルの……妹を傷つけられ、怒りに燃える兄の叫びが聞こえたのか。
視線を向けると、対峙していた悪魔を振り切ってこちらに向かっている。空を蹴り加速して、すぐにたどり着くことだろう。
ベルならば、きっと手当てもうまくいく……そんな確信があった。ベルならば……
「よそ見は、イケないねェ……」
不気味な声とともに……目の前を、鮮血が舞う。すでに目前まで迫っていたベルの腹部から、血が吹き出したのだ。
なぜそんなことになっているのか……それは、ベルの背後にいる悪魔によるものだと確信できた。見えない剣により、ベルの腹部を貫いたのだと。
「べっ……!」
「誰かガ傷つクトすぐ二冷静さヲ失う……いやハヤ、人間トは実にハかリやすイ。我が作品ノ試運転にはモっテこいダ」
ピルカが瀕死に陥り、ベルがやられ……リーダーも足止めをくらっている今、最悪の結末が頭を過る。
「くっ……あまり、人間を……なめる、なよ、悪魔……!」
だが、当の本人……傷を負ったベルは、まだ諦めていない。見えなくても自分の腹を貫いているそれを素手で握り、同時に見えない剣を持っている悪魔の動きを封じる。
その状態のままは辛いはずなのに、瞳に強い光を宿しながら悪魔に振り返る。
「ヌッ……?」
「お前の……思い通りに、なるか!」
吐血をしながらも叫び、ベルはそのままの体勢で背後の悪魔に思い切り頭突きをおみまいする。
あまりの至近距離からの攻撃に、悪魔も避ける手段はなく顔面に直撃する。
「ぐぅッ……!」
「お、れの石頭……効くだろうが!」
ベルの頭突き、その威力は俺達はよくわかってる。あいつの石頭は俺達の中でも一番だ。
悪魔の拘束が緩み、ベルは無理やり見えない剣を引き抜く。それにより出血がひどくなるが、出血多量になる前に神力によって傷を塞ぐ。
「ピルカ!」
「お、にぃ……」
「喋るな、今手当てを……ぐっ!?」
倒れているピルカに駆け寄るベルは、自身の傷も構わず早速ピルカの治療を開始しようとする……が。
突然、胸を押さえて苦しみ始める。それは見えない剣を貫かれた、傷を塞いだはずの場所だ。ベルの神力で傷を塞いだはずなのに、そこが痛むのか?
「やれヤレ……そんナもので傷を塞イダなどト思わレテは心外だネ」
そこへ響く、低い声。いつの間にかベルの背後に立っていた悪魔は、不気味な笑みを浮かべている。
魔物をいじくったり、人造人間を造れるような奴だ。神力で回復することができないような攻撃を放つことなど、いくらでもできるのかもしれない。
ピルカの傷を塞ぐためには、それに集中しないといけない。しかし当のベルは、自身も受けた傷からそれどころではない。
いったい、どうすれば……




