コピー
「あ、あそこ!」
声の主を見つけたピルカが、上空を指す。そこには、黒い翼を広げて飛んでいる男がいた。黒い翼ということは、悪魔か!
「アァ、申し訳なイ。わたシのことはいナイものトシてどうゾ気にせズ」
「そうはいかにゃい。お前が悪魔なら、私がここで倒す!」
俺達を見下ろす男は、その容姿の部分以外でも不気味さを感じさせた。
青白い顔に、ヒョロヒョロいた体……見た目だけなら、俺でも倒せそうだ。なのに、この言いようのない不安感は何だ?
「わたシを……倒す? ハハ、実二興味深い……ガ、それはわたシの試作体を倒しテカらにしてモライたい」
「にゃっ……!?」
決して油断していたわけではないだろう。しかし、男を見上げていたリーダーが魔物に視線を戻す寸前の一舜……魔物が飛び出し、リーダーの体に体当たりを直撃させた。
とっさに魔物を押し返そうと手を突き出したリーダーだが、そんなものは意味がないと言わんばかりに魔物は直進する。それに伴い、リーダーが後ろに押し出されていき……
「ぐぅ……!? ……か、はっ……!」
背後の岩に激突し、同時に岩が破壊されることでその威力を物語っている。魔物と岩にサンドイッチにされたリーダーは、たまらず吐血していた。
まさか……あのリーダーが、苦戦している? このまま黙って見ているわけには……!
「待てカリィ、下手に手を出せば、かえってレイさんの邪魔になる。あの人の本領は、こんなもんじゃないだろ?」
飛び出しそうになった俺を、隣でベルが止める。確かにベルの言うとおりであり、俺達が行っても邪魔にしかならないだろう。
とはいえ、このまま指をくわえてみているのはもどかしい!
「だったら……あいつを倒せばいいってことか!」
リーダーを信じて戦いを任せるなら、俺達はリーダーの負担を軽くすることを目的としよう。飛んでいるあの悪魔が、リーダーの戦いに手を出さないように。
「ほォ、わたシを倒すト?」
「その通りだ変な悪魔め。どうやらお前はただの悪魔とは違うみたいだが、俺達が倒す!」
相手がただの悪魔でないのは何となく感じる。だが俺達は引きはしない。
こっちにはベルがいるし、他にも神力を使える奴はいる。数の有利はこちらにある。今まで乗り越えてきたんだ、俺達ならだれが相手だって負けやしない!
「行くぞ! はぁ!」
俺達は神力によって強化した武器を手に、ベル筆頭に雄叫びを上げる。相手は空を飛んでいるが、関係ないとばかりにベルはジャンプし……そのまま、まるで階段を上るように上空へと向かっていく。
ベルは神力を『気の塊』として、空中に見えない足場を発生させる。それを踏んでジャンプすることで宙を跳躍しているのだ。それは傍から見たら空中ジャンプのよう。『気の塊』は目には見えず、故にベルがいつも使うのは気で作った『見えない剣』だ。
「ホぉ」
「取った!」
空を渡ってきたことに驚いているのか、悪魔は避ける素振りはない。よってベルの軌道は一直線に、横払いの薙ぎが悪魔の横腹を切り裂いて……
「な、に……!?」
だがそれは、悪魔の体に触れることはなかった。なぜなら、剣が当たる直前に何かに防がれているように見えたからだ。
だがそれは、武器で防いでいるわけでもましてや素手で防いでいるわけでもない。防いでいる何かを押し切ろうとしているのだろう、そこからは剣が打ち合っている証拠である火花が散っていた。
そこに何かがあるのは明らかだ。しかも火花が散るほどの強度の。なのに見えない。まるで、見えない剣が『見えない何か』に防がれているような。
「……まさか」
そこまで考えた時、一つの結論が浮かんだ。ベルも同じ結論を得たのか、目を見開く。
考えられるのは……奴もベルのように、『目に見えない』何かを使って剣を防いでいるということ。それが盾なのか何なのかわからないが、見えない攻撃、防御を成すのが奴の能力……?
「ンー、スコーし違うねエ。わた?の能力はそんな安っぽイものデハない」
そこへ、俺の心を読んだかのような奴の声。心を読む力があるのか、読唇術に長けているのか……それよりも、奴の言った言葉が気にかかった。俺の考えた能力ではないということか?
「……まさか、コピーか」
その意味を察したのは、実際に打ち合っているベルだ。今コピーだと言った。それはつまり、相手の力をコピーするということ。
だとすれば、今ベルの剣を防いだのは……奴の能力で『見えない剣』を作り出したというより、『見えない剣』をコピーして作り出したと付け足した方が正しいということ。
「おヤオや、頭の回転ガ早い。ご名答……が、ただのコピーと一緒二してもらッテは困る」
「……! 二刀目……!?」
ベルが気がついた時には、すでに動きが開始されていた。ベルの剣を防いでいると思われる剣を持ったのとは逆の手を振りかぶっており……それを、振り下ろす。
「くっ……!?」




