『電体』
禍々しく変化した姿に、緊張感が高まる。何が起きても対応できるように、神経を張り巡らせていく。
「グルル……ガラァアアア!」
吠え、突進……別の魔物の方へ。そして同じく食し、体を変貌させていく。どうしてあんなことをしているかはわからないが、放っておいてはまずいのは確かだ。
「止まるにゃあああ!」
それを察したのだろう、リーダーが魔物にアタックする。しかしその攻撃は通ることなく、ますます防御が厚くなっているのがわかっただけだ。
何発受けても魔物は倒れることなく、さらに何発受けても魔物はリーダーを無視し同族を喰らうことに集中している。あくまでも、己のパワーアップが目的ということか?
「くぅ……! なら、これでどうにゃ!」
ただ同じ攻撃を打ちこんでも意味がないと判断したのか、会長は一旦距離をとる。続けて自分の体に力を溜め始める。それが見てわかるように、まるで放電しているように体から電気が弾けている。
身体強化に似たものだという。自身の力を身体に集中させ、一時的に身体機能を上昇させる。ただしリーダーの力が強すぎるため、その体から力の象徴で圧電機があふれているのだとか。
電撃が得意なら遠距離から攻撃すればとも聞いてみたのだが、曰く私にはこっちの方が合ってるとのこと。確かにあの人、頭を使うよりとりあえず体を動かすタイプだもんな。
「"身体強化"『電体』! とくと味わうがいいにゃ!」
放電によりうっすらと発光した体を接近させ、食事中により隙だらけの魔物の体へと拳を叩き込む。
「グゥ、ウゥ……!?」
最初に比べて体が倍近く大きくなっている魔物だが、その分攻撃を当てやすくなった。リーダーの一撃を受けた魔物は、先程と違いぐらりと体勢を崩す。よし、効いてる!
「もう、いっ、ぱぁつ!!」
打ち込んだのとは逆の拳を、再び打ち込む。それにより、先程までビクともしなかった魔物の体が吹き飛んでいく。
吹き飛んだ巨躯が地面に激突したことで、辺りには轟音が鳴り響く。
「さすが脳筋ネコ……」
「シズ、それ本人には言うなよ。一応あの人も女の子なんだから」
さすがはリーダーであるが、その力任せの戦いぶりからちょくちょく仲間内からいじられている。『脳筋ネコ』はその一例である。
あとベル、お前のそれもフォローになってないぞ。フォローしてるのかすらわからないが。
「せいや!」
魔物が吹き飛んだのを確認し、リーダーは周りの魔物も一掃していく。元々俺達や、あの魔物によって数が減っていた。そう時間はかからない。
身体強化したことで本人曰く本気を出せば電気の速さで動けるとのことだが、その真偽はともかく確かに速い。さらにその拳を持って、あっという間に魔物を片づけてしまう。
……やっぱり脳筋かもな。
「よっし、これで終わ……りじゃにゃいみたいだね」
辺りの魔物はいなくなった。だがリーダーが強化を解く様子はない。
それもそのはず。吹き飛ばした魔物は、土煙を上げながらも起き上がってきたのだから。向こうも強化されてるとはいえ、『電体』状態のリーダーの二撃をまともに受けたんだぞ?
「これは、ちょっぴり本気でいかにゃいと……」
「いやいヤイや、すばラしい! まサカここマでヤるとは、やはリ人間も捨てタものジャありまセンねえ!」
リーダーが魔物に再度特攻しようとしたその時、どこからか声が響き渡る。この状況でどこか嬉しそうで、それでいてどこか独特的な声。当然俺達の中の誰かではない。
……誰だ? それに、どこだ?




