共食い
ユウキが触れた魔物が消滅した……それは紛れもない事実だ。
見たところ、ユウキ自身も何が起こったのかはわかっていないようだ。まさか、突然神力に目覚めたとかか?
「戦況は、どうだ?」
「あぁ、数は多いが……所詮ただの魔物だ。落ち着いて対処すれば問題はない」
他に、ユウキの行動を見ていた奴はいないのか……それとも、今話す時ではないと判断したのか。とにかく、誰も話題に出さないので、俺もその件は後で個人的にユウキに聞くことにする。
それよりも、この状況を打破する方が先だ。幸い、数が多いのに手間取っているだけでそこまで苦戦はしていないようだ。みんな、それなりの修羅場はくぐってきているからただの魔物になんか負けはしないだろうが。
「ちっ、言ってる側から……」
文句を言っても仕方ないが、次々現れる魔物に思わず舌打ちしてしまう。しかし先程までのような群れではなく、今度は一体のみ。体のサイズが他より少し大きいくらいだ、さすがに奴らも打ち止めか。
周りの魔物を片づけたリーダーが、新たに現れた魔物へと飛びかかる。他と同じく、一気に倒してしまおうということらしい。
「"ビリビリパンチ"!」
ただの魔物にとっては一撃必殺の、拳が直撃する。上空からの重い一撃に加え、拳から流れる電流に為す術もないはずだ。
……だが。
「にゃっ?」
拳を叩き込んでも、魔物が消滅しない。それに違和感を感じたのか、リーダーは魔物から飛び退き距離をとる。今まで魔物を一撃で仕留められていた技が、通用していない?
ただサイズがでかいってわけじゃないのか? 体がでかいから防御力が高いとか、毛並みが鋼みたいな硬さとか……そんなところだろうか?
「グルルルラァアア!」
「なっ?」
そう分析していた次の瞬間……驚くべきことが起こった。サイズのでかい魔物が、近くにいた魔物に飛びかかり……その喉笛に、噛みついたのだ。
「ひっ?」
「なに、あれ……」
ピルカが悲鳴を上げ、シズが困惑の声を上げるほどに……その光景は異様だった。噛みつき、そのまま噛み砕き……仲間のはずの同族を、食べていっているのだから。
「魔物が……魔物を、食べてる?」
魔物は、知性のない生き物。よってどういう原理で判断しているのかはわからないが……少なくとも、これまで魔物が仲間であろう魔物を食べる、なんてことは見たことがなかった。
群れを成すこともこともあるし、もしかしたら魔物特有の仲間として判断出来る何かがあるのかもしれない、そう思っていた。だから目の前で、魔物が魔物を食べるなんて行為が行われるなんて思ってもみなかったし……何より、おぞましかった。
「あれは、いったい……」
「と、共喰い……?」
目の前の光景に、別の意味で緊張が走る。生々しいその食事シーンに、思わず目をそむけたくなるほどに、衝撃的な光景だったから。
だが驚くのは、それだけではない。抵抗する間もなくその体を食べられる魔物と、それを食べる魔物。まるで、食したその体を吸収しているかのように、魔物の体が大きくなっていく。
自身の強化のためなら、同じ魔物であろうと容赦なく食べる……そういうことなのだろうか。だが、それなら他の魔物も同じようにならないのは不自然だ。
ならば、あの魔物だけが特別なのか……そう考えている間にも、魔物は食事を終える。そしてこちらに視線を向けて……
「……え」
魔物の体が、変化していく。より巨大に、より強大に。獣というより、化け物と形容するのに問題ない姿に。魔物の首の横から、吸収した魔物の首が出現し、手足も増えている。




