消滅の力
「ユウキ、無事か?」
「う、うん」
ユウキを背後に庇いながら、俺は注意深く辺りを見渡す。リーダーが暴れてくれているおかげでこちらに来る魔物は少ない。それに、そのほとんどもベルが倒してくれている。
……だが、どこから湧いてくるのか魔物の数が減らない。今までこんなことはなかったのに、やはり最近変だ。何かよからぬ前兆じゃないといいけど……
「! ヤバい、ピルカ!」
数が増えるにつれ、俺達も守りが手薄になってしまう。先ほどまで戦闘員の影に隠れていたはずのピルカが一人になっていた。その一瞬をつかれたのか、一匹の魔物が飛びかかっていく。
一番近くにいるのは俺だ。他のみんなも、気付いてはいても間に合わない。それに、頼みのリーダーやベルの周りには魔物が集まっている。あいつら、知性がないんじゃないのか? それとも危険度の高い人物を察知しているのか?
……いや、今そんなことはどうでもいい。この先どうするか考えるまでもない、というか考えるより前に体が動いていた。
駆け出し、ピルカを突き飛ばす。直後、右肩に強い痛み。それは、右肩を魔物に噛まれているからだ。凄まじい痛みが、体中を駆け巡る。
「ぐぅぁっ……!」
「「カリィ!!」」
ユウキとピルカの声が重なる。二人を心配させないためにも俺は声を押し殺そうとするが……ヤバい、思った以上に痛いわこれ。無理やり引きはがそうとすれば肩を持っていかれるかもしれないが……仕方な……
「ダメえ!」
ドンッ
覚悟を決めようとしたところへ、軽い衝撃。誰かに体を押された……いや、正しくは誰かが魔物を押したのだ。そのせいで、噛まれたままの俺にも衝撃が。
その人物を確認すると……それはユウキだった。このバカ、考えなしに飛び出してきたのか……! そんなことしたら、魔物の標的がユウキに変わるだけだ!
「おい、早く逃げ……!」
逃げろ……そう叫ぼうとした。だが、その必要はなくなった。なぜなら、俺の肩から痛みが……俺の肩に噛みついていた魔物が、跡形もなく消滅したのだから。
「えっ……」
今、何が起こったのだろうか。俺の見間違えでなけれ、ユウキが突き飛ばした魔物が消滅した、よな?
「ゆ、ユウ……」
「カリィー!」
「おぶっ!?」
ここは当の本人に聞くべきだ……そう思っていたところへ、横腹辺りに強烈な衝撃。だがそれは魔物によるものではなく、ピルカによるものであった。
痛い、めちゃくちゃ痛い。魔物に噛まれたのは肩とはいえ、今は衝撃を加えてほしくない。ので、抗議をいれようと思ったのだが……
「うぅう、無事でよがっだぁ……ひっく!」
顔を涙で濡らし、泣きじゃくる彼女を見ては何も言えなくなってしまう。あーあ、かわいい顔が台無しだよ。
「大丈夫。平気……ってわけでもないけど、大丈夫だから」
だから俺は、安心させるためにピルカの頭をポンポン撫でてやる。いつの間にか一番頼りになる存在になったかと思ってたけど、こうしてるとやっぱ妹みたいな感じだ。
でもまあ、感傷に浸ろうとしても痛いのはごまかせないんだけど……
「カリィ、無事か!?」
そこへ、魔物の包囲網から突破したらしいベルとシズが駆け寄ってくる。二人とも、俺の傷を見るなり表情を固くする。
「よー二人とも。まあ、何とか……」
「今、治療する。すまん、ピルカを庇ってこんな……ありがとな」
ベルの神力により、噛まれた傷口はみるみる塞がっていく。さすがは便利な能力だなあ、神力ってやつは。
治療が終わったその後も、ピルカは離れないままだ。もう大丈夫なのだが、無理やり引き離すわけにもいかないしなあ。とりあえず安心させるために大丈夫だと言葉はかけているが。
「とにかく、ピルカが無事でよかったよ。それより……」
俺のことでこんなにも心配してくれるのは嬉しいのだが、今気になるのはユウキのことだ。ユウキが触れた魔物が消滅した……それが間違いでないのなら、あの力は何なんだ?




