守りたかった約束と守りたい奴
最後のこと……それは、彼女自身から聞いたことがある。悪魔が攻めてきて、学園は崩壊し、理由はわからないが知らぬ場所に飛ばされたのだという。だが彼女が思い出したのは、おそらくそのことではないだろう。
彼女自身の、もっと大切なもの。ネコミ・レイの旅の『目的』であるそれは……
「例の、生徒会長のことですか?」
神力学園で生徒会長を務めていたという、アラタ・ナルジヤという人物の捜索だ。どうやら学園での決戦時、その男は『魔剣』というものを持ち悪魔側に加担していたらしい。
そして、実際にリーダーと戦い……リーダーを敗亡に追い込んだ。その際に殺されそうになったが、別の悪魔が現れアラタ・ナルジヤをその魔剣で突き刺したのいう。その直後、リーダー自身も。
「そ、会長のこと。あの時胸を刺されて倒れて……そのあとに私は別の場所に飛ばされちゃったから、生きてるか死んでるかもわからにゃいんだけどね」
暗い過去のはずだが、あくまでも明るく振る舞っている。生きているかも死んでいるかもわからない生徒会長の捜索……リーダーの目的は、完全なる私情だ。それも、その男は悪魔側についていたというのだからなおさらだ。
それでも、俺達がリーダーについていくと決めたのは、恩人だから以上に彼女の『目的』を、彼女がどれだけ真剣か感じたからである。
「リーダーは、いいんですか? その男はリーダーを……みんなを裏切ったわけですよ? それなのに……やっぱり、気持ちは変わらないんですか?」
「にゃはは、初めて会った時と同じ質問だね。……うん、変わらない。会長がそう思ってても、私は会長といた時間が好きだった。生きているなら今度こそこっちに連れて帰る。あの頃より私、強くなったからね。死んでたら……ちゃんと、供養してあげたいから」
同じ質問……そして、同じ答え。こんな世界で、なんて甘い考えだろう……でも、だからこそ、それは尊い考えだ。変わらない気持ちに、あぁこの人についていこう、と思えたんだ。
「じゃあ……その会長を刺した悪魔を見つけたら、どうします? あなたは。あなたが大事だという生徒会長に致命傷を負わせた挙句、あなたにもそんな傷を……」
そこに、ベルが会話に入ってくる。結果的にリーダーがアラタ・ナルジヤに殺されることはなくなったが、その悪魔はアラタ・ナルジヤにもリーダーにも深い傷を残した。
「うーん、どうかにゃ。私自身のことは置いといても、やっぱり許せないって気持ちはあるけど……まだ、わかんにゃいや」
仇とも呼べる悪魔にあったら、どうしたいか……その質問に、会長は困ったように笑う。俺達の方を振り向いて……左目を覆う、眼帯に触れながら。
リーダーは、アラタ・ナルジヤがその悪魔をこう呼んだのを覚えている。「キルデ」と。名前と性別以外わからないが、多分かなり強いとはリーダーの評価だ。
キルデは、アラタ・ナルジヤを刺した後にその刃をリーダーにも向けた。そして、刃は振り下ろされ……リーダーの左目を抉った。その時のショックで、リーダーは気絶してしまい気づけば見知らぬ場所に……ということだ。
本人は、殺されても仕方のないあの状況では命があるだけ儲けものだと言っていた。だが、キルデがなぜリーダーの命を奪わなかったのかはわからない。
命を奪う価値がないと判断したのか、それともそれどころではないほどに、悪魔側も緊迫した状態だったのか。今となってはわからないが、結果的にリーダーは左目の視力を失った。
剣で斬られた傷が痛々しく残っており、それを隠すために眼帯で左目を覆っている。眼帯といっても、服を千切って、などの応急的なものであるが。
「まあ私のことはいいよー。ベルくんやカリィくん、ユウキちゃんにピルカちゃんにシズちゃん、他にも……私なんかについてきてくれて、ありがとね」
お礼を言うのは、こちらの方だ。リーダーに助けられたから今の俺達がある。……でも、素直にそう言うのは気恥ずかしいので……
「いえ。俺達もリーダーが大好きだって言う会長さんを探すのに全力を注ぎますから」
「にゃはは、うん、よろし……って、べべ別に大好きじゃにゃいから!」
からかうように応対しておいた。赤くなって慌てるリーダーだが、あれで隠し通せると思っているらしい。かわいらしい人でもあるのだ。
「お前自分のことだとアレなのになあ」
ベルが何か言っているような気がするが、まあ大したことじゃないだろう。
俺は、俺の目的のために。あいつを守ること、そして……もう二度と、約束を破ってしまわないために。
……夜が、更けていく。




