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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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あふれ出す思い、止まらない衝動



 その上今の理不尽な状況、自身の置かれた立場が不明……こんな不明要素が重なれば、なおさらだ。



「そんな呼び方で私を呼ばないで! そんな目で私を見ないで! 私の気持ちを理解しようともしないで、あなた達の気持ちを勝手に私に押し付けないで! 私はあなたの道具じゃない! 人形じゃない! でも、言う通りにしてればお願いを聞いてくれると思った、だからいい子になろうと頑張った! でも私のささいな願いは叶わなかった……せめて期待に応えようと頑張った! なのに結局、全部なくなった……私が家族と思ってたみんなも! 家族になりたかった人も! みんないなくなった! なくなった! 私からもう、何も奪わないで! いなくなるくらいなら最初から私に近づかないで! いなく、ならない……私が、みんなを楽しませれば、誰も離れていかない、から……私は、私が、わた、わたしはぁ……!」



「お、オルちゃん……?」



 頭を押さえ、思いの内を吐き出すようなオルテリアの姿に、リーシャ達は驚愕の表情を隠せない。こんな彼女の姿、誰も見たことがなかったのだから。



 いつも明るくて、悩みなんてなさそうで……そんなはずはないのに、勝手にそう思っていた。それが、もしかしたら彼女へのプレッシャーになっていたのだろうか。



 オルテリア自身、自分が何を言っているのかわからない。そもそも記憶がないのだ、この気持ちの正体すらもわからない。何に対しての、気持ちなのかも。



 それに、いろんなことがごちゃごちゃになっている。これはリーシャ達に対してなのか、それとも別の誰かに対してなのか……



 記憶がないからこそ、吐き出た思い。これが、オルテリアという少女に眠る気持ちの全てなのだろうか?



「……」



 ため込んでいたものを吐き出したからだろうか、落ち着いたオルテリアは軽く息を吐き……再び、鋭い視線を向ける。その目の端に涙の跡があるのは、リーシャの見間違いではないはずだ。



「とにかく、私に関わらないで。私は一人で生きていく」



「ダメ、ダメだよ! そんなことしたらし、死んじゃう!」



 こんな状況で、何もわからない彼女を一人にするなどそれは自殺を見逃すに等しい。加えていまのオルテリアからは、あの強大な神力は感じられない。おそらく少なからず『暴食』に神力をも食われたのだろう。



 そんなことが可能かわからないが、現に記憶を食っているのだ。何があっても不思議ではない。



 つまり今のオルテリアは神力をどう扱うかの記憶も、そもそも以前ほどの力すらないのだ。一人で行くなんて、認めるわけにはいかない。もしもの時は、力づくでも止めてやる。だって、死なせるわけにはいかないのだから。



「……別に、それでもいい。空っぽの私なんて、生きてても意味がないから」



「!」



 だがオルテリアは、死をも恐れぬ……というより、己の死に頓着していない。その投げやりな言葉に、ついにリーシャの中で何かが切れる。



「死んでも、いい……? ……そんなこと、言うなあ!」



 声を荒げ目を見開き、目の前のオルテリアに噛みつくように叫ぶ。瞬間、オルテリアの体が背後の岩に叩きつけられる。まるで、見えない力に吹っ飛ばされたような、そんな感覚。



 ……いや、実際に吹っ飛ばされた。目に見えない何かに。それが神力であると、今のオルテリアにわかるはずもない。わかるのはただ、体を打ち付けられた痛みだけ。



「かはっ……!」



「リー姉!?」



 吐血するオルテリアを見て、ユメが焦りの表情を浮かべる。それでも、リーシャはとまらない。壁を背にしりもちをついたオルテリアを、睨みつけている。



「死んでもいいなんて、そんなことを……アカリちゃんやエルシャの最期を見たオルちゃんが、よりにもよってそんなことを……!」



「はぁ、あかり……える、しゃ? 知らないって、けほっ、言ってるでしょ。なに、そいつらが、あんたの目の前で、死んだの? それは、ごしゅうしょう、さま……」



「……っ!」



 涙を流しながら叫ぶリーシャに対して、オルテリアはまるで挑発するように薄ら笑いを浮かべる。その言葉に、リーシャは一歩を踏み出すが……その前に、アカリの妹であるユメが立ちふさがる。



「ユメ、ちゃん……」



「落ち着いてリー姉……オル姉は記憶、ないんだよ」



「……わかってる、けどっ」



 リーシャだってわかっている、オルテリアの言葉に何の悪意もなかったことは。それでも、彼女の口から死んでもいいなんて言ってほしくなかった。それに、知らぬとはいえアカリやエルシャをあんな風に言うなんて。



 記憶だけでなく、大切な気持ちさえもなくなってしまったのか。



「……!」



 ふと、ユメが震えているのに気づく。両手を握り締め……手が震えている。姉をああ言われ、それでもユメは平静を保とうとしているのだ。



「ごめん……ありがと」



 何だか申し訳なくて、情けなくて。ユメの方がよっぽど大人ではないか。何度同じことを繰り返すのだと、リーシャは自分が嫌になる。だが、今そんな自己嫌悪に陥っている場合ではない。なぜなら……



「死んでもいい、その気持ちは変わらない。私の命を私がどう使おうと、自由でしょ」



 立ち上がる、口元から血を流しながらも不敵に笑みを浮かべるオルテリアがいるから。



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