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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
最弱と最強の出会い
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ハーフエンジェル



 ……危険なことに、巻き込みたくはない。だから私は、必要最低限にしか関わらないつもりだった。だけど彼女は、固く閉ざした私の扉を開けてきて……



 それでも、私の正体を明かすことはできない。それだけは。アカリちゃんだけは、巻き込むわけにはいかない。



 ……それなのに……“あいつ”と一緒にいるせいで、今みたいな危険な目に合っている。あいつがいるせいで。



 また、私から大切なものを奪おうというの?何でアカリちゃんまで巻き込むの!……私から、何もかも奪うつもりなのか。



 ……けど、アカリちゃんは強い。いくら相手が悪魔とはいえ、簡単にはやられないはずだ。それでも、確実ではない。早く戻るためにも、この空間をどうにかしないと……



「……また……」



 今、私だけ別の空間に飛ばされている。そして地面からは、さっき見たようにスライムのようなものが生まれている。



 Aランクのアカリちゃんの力でも、倒しきるには至らなかった。Cランクの力で、何とかなるとは思えない。



 ……そういえばさっき、ヒロトさんの攻撃は聞いてたな。もしかして打撃に弱い? ……だとしたら、不死身なんて言われないと思うけど。



 そもそも、アカリちゃんみたいな力があるならともかく、力がないに等しいただの人間にどうこうできる相手じゃない。いったい……



「……!」



 ……っと、考え事はここまでみたい。新手か。



 空間が歪み、黒い渦が生まれる。そこから、二体の悪魔が現れる。悪魔を見るのは初めてだけど……翼に角といかにもだ。それに、嫌な感じがする。



「何だ、小娘一人かよ」



「メルガディス様も部下使い荒いよなあ。こんな小娘一匹、人形に任せときゃいいのによ」



 喋ってる……ってことは、ただ向かってくるだけの人形とは違って、ちゃんと意思があるっていうこと! 油断は禁物だ!



「……えい!」



 とにかく、先手必勝だ。さっき人形の頭を撃ち抜いたように、奴の頭も撃ち抜いてやる! 手を向け、手のひらから火の弾丸を放つ。



 放った私の攻撃は、狙い通り悪魔の頭に向かっていく。このまま当たれば……そんな淡い期待は、振り払われた。悪魔が、手で振り払いそれだけで火の弾丸が消滅したのと同時に。



「そ、そんな……」



「あぁ? 何だ今の」



 何かやったのか……そう言いたげな顔だ。バカにするように、ゲラゲラ笑っている。



「こ、のおぉぉ!」



 火の弾丸を、次々に放っていく。まるでマシンガンのようだ。……でも、その猛攻も奴らには届かなかった。



「何だこりゃ、火遊びでもしてんのかあ?」



「風圧だけで消えちまうぜ?」



 バサッ、と翼を羽ばたかせただけで、無数の弾丸は消えていく。嫌なほど呆気なく。しかも、風圧の勢いがこっちまで届いてきて……



「くっ……きゃあ!」



 防ごうにも、神力で作った壁を割られ吹き飛ばされる。アカリちゃんは、メルガディスの攻撃を防いだというのに……



「おいおい弱すぎだろ。ほらほら、急がねえと人形にヤられちまうぜ?」



「くっ……」



 奴らの言うように、次々人形が増えていく。多勢に無勢すぎる、奴らは完全に楽しんでいる。



 奴らに気を取られていたら人形が近づいてきて、しかも倒してもキリがない。土人形の人形は倒せはするが、すぐに復活する。



 このままじゃ……



「しかしお前も不運だよなあ、あんな神様守ろうとしたばかりに。……そういや、あの神様を庇ったせいで死んだ、マヌケな天使もいたっけなあ!」



 ゲラゲラ笑う悪魔。その口から出た言葉は、不思議なほどに頭の中に浸透していく。



「あー、いたなー。バカな奴だぜ、力だけは強かったのに……奴を守らなきゃ長生きできたのによ」



「どのみち皆殺しだ。我らが魔神様に敵うわけねえし、延命も大して変わりゃしねえよ」



「それもそうか! しかしどうせなら、悪魔の手で犯し堕としても良かったんじゃねえか?」



「天使にとっちゃ最大の屈辱だろうしな。堕天でもすりゃ、一族の恥だぜ!」



 ぎゃははは……と耳障りな笑い声が聞こえる中、私の中で何かが切れるような音がした。



 “堕天”とは、天使にとって最大の屈辱とされるもの。ある意味、死よりも恥とされると聞いたことがある。



 あぁ、ダメだ。できるだけ使いたくなかったんだろうな。でもダメ、こいつら、お姉ちゃんをバカにした。許せない!



「まあおしゃべりはこれくらいにして、さっさと……ん?」



「おい……この感じ……」



 私は、神力Cランクの……ただの、学生。みんなそう思ってる。こんな低級悪魔にすら力負けする弱い奴。それが私だ。



「この嫌なオーラ……それに、髪が金色に……?」



 ホントは、神力だけで勝ちたかったんだけどな……だってこの力、反動がスゴいんだもん。



「その金髪……そのエメラルドの瞳……何より、その翼……まさか、お前!」



 茶髪が金に変わり、瞳の色も変化していく。増幅していく力は、悪魔の嫌がる聖なるものだ。



 私の姿を見て悪魔は、びっくりしてるみたい。そりゃそうだよね。こんなとこにいると思わないもの……天使が。



「何故……天使が下界に! 天界にいた奴らは皆殺しにしたはずじゃ……」



「辛うじて逃げてたのか!?」



 辛うじて、どころか逃げた天使はそれなりにいるよ。したっぱだから知らないのかもしれないけど。ただ……私は違うよ。逃げた天使じゃない。



「正確には私は天使じゃないよ……天使と人間のハーフ」



「ハーフ……? も、もしかして、ゴディルズ様が始末したと言ってた、二大天使の落とし子じゃ……」



 焦る悪魔は、ペラペラと情報を喋ってくれる。お父さんを殺した悪魔の、名前まで。



「そっか、ゴディルズっていうんだ……お父さんを殺したクソ野郎は」



「ひっ……へ、へへ、何余裕げにしてんだ! さっきまでヘタレてた小娘がよぉ!」



 焦る悪魔だったが、先ほどの私の様子を思い出したのか急に強気に。攻撃も防御もままならない、無様な姿だ。



 すると悪魔は、闇の塊みたいなものを放ってきた。



「風圧程度とは訳が違うぞ! これでお前も……」



 ……確かに、これは防げない。……こうなる前の私なら、ね。



 余裕げな悪魔。けどその余裕は、塊が私の前に届く前に砕け散ることで崩れていく。



「なっ……!?」



「一つ訂正しといてあげる」



 狼狽える悪魔とは対照的に、自分でも驚くくらいに今の私は何だか冷静だ。どうしたんだろう。



「私のこと、神様を守ろうとしてって言ってたけど……誰があんな奴守るか。お姉ちゃんを殺したくせに」



 冷静さとは別に、湧き上がってくるものがある。……怒りが止まらない。あの女に対する怒り。そして……



「お姉ちゃんって……まさかお前……」



「そうそう、お姉ちゃんを侮辱したお前ら……楽に死ねると、思うなよ?」



 お姉ちゃんを侮辱した悪魔に対する、怒りが。

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