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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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もう一つの悪意



彼女はリーシャではない。その確信があった。ならば、一体誰だというのだろうか……?



まさか、倒したと思っていた『色欲』が? ……いや、それはないだろうない。『色欲』だとしてリーシャに化ける必要はないし、これでも半年以上悪魔を殺してきたのだ。皮肉にも、殺した殺してないの分別くらいつくはずだ。それが大罪魔獣だろうと関係ないだろう。



 ならば……? わからない。まるで、アカリとうり二つのユメに出会った時のよう。姉妹だからとそっくりに感じ、動揺してしまったあの時と……



 ……目を凝らす。よく見れば体型が、彼女のそれと違う。出るとこは出て締まるとこは締まっている、誰もが羨む理想的なスタイル。リーシャには悪いが、身体付きはこっちがよっぽど女性らしい。



 髪も、茶の混じってない金髪だ。それを腰辺りまで伸ばしており、風になびく様は思わず見惚れる。そして、宝石のようなエメラルドグリーンの瞳。



 彼女はそう、まるで、リーシャを成長させたような人物で……



「……まさか」



 ここで一つの結論に至る。目の前にいる者の正体。だがそれはない、はずだ。リーシャ自身が言っていたではないか。彼女は……親友であるエルシャを庇って、死んだと。



「あ……」



 バサッ、と。翼がはためく音がした。風を切る音が。『それ』はゆっくりと広げられ、オルテリアの前に存在を主張する。漆黒に染まった、天使の翼が。



「そ、んな……」



 心の整理が、落ち着かない。何が起こっているのか。目の前に誰が立っているのか。



 漆黒に染まった天使の翼。それは『堕天』の証だと、リーシャは言っていた。もしそうなら……目の前にいるのは、死んだはずの、リーシャの……



 こんなのは単なる想像だ。あるはずがない、あってほしくない。自分の想像が現実であると、認めてしまいたくない。



 複雑に絡み合った気持ちが、激しく彼女の心を乱していく。故に……もう一つの乱入者に気付かなかったのは、必然だ。



 そこには、影……というよりは霧といった方が正しいだろう……が生まれていた。さっきまで、あんなところに何もなかったはず。



 黒い霧が、形を成していく。それは見ているだけで、自然と警戒を与えてくるのものだ。見ている、ただそれだけでまるで呑み込まれそうになってくる。



 そして……突然に、『それ』は訪れる。



「あ……なん、ですの?」



 黒い霧……まるで生き物のようにオルテリアに狙いを定めるそれは、一気に距離を詰める。ろくに息をする暇もない。だが、それによってオルテリアが遅れを取ることはない。警戒を露にしながらも、残った神力を集中させて……水の壁を作る。



 何かはわからないが、このまま水の壁に衝突してしまえばただでは済むまい。……だが……



「えっ……?」



 実体を持たないそれを防ぐ術はない。黒い霧は、そこに何もないと言わんばかりに水の壁をすり抜け……それどころかより黒く、大きく広がっていく。不気味に力を、増幅しているかのようだ。



 そして今度こそ、何の抵抗をすることもできなくなってしまった、立ち尽くす青髪の少女を黒い霧は……大罪魔獣『暴食』ベルゼブブは、何の躊躇もなくあっさりと呑み込んだ。



「こ、れは……な、ぁっ……!?」



 黒い霧はオルテリアの華奢な体全てを包み込んでいく。まるで砂嵐の中に一人放り込まれたかのように、体中に痛みが走る。しかし外傷はなく、まるで体の内側からビリビリと電気を流されているよう。



 『暴食』……それはただ、己の腹を満たすことのみを考えている。そこに誰かを殺すという意思はなく、ただただ喰らうのみ。だから……例えば餌食にあった者が命を落とすことがあっても、それは結果であって殺すこと事態は目的ではない。



 いや、殺す……そんな生易しいものでは、ないのだ。



「ぁ……リー、さ……」



 『暴食』は何もかもをも喰らっていく。 衣類も、髪も、肉も、神力さえも……そして……



「……ぁ……」



 光り輝く何かを最後に瞳に映して……オルテリアの意識は、完全に喰われた。

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