表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
266/314

本当の家族



 ------



「ん……ふわぁ、よく寝たなぁ」



 時は、オルテリアが絶望を味わった日。本家サシャターン家、そしてそこに集まっていた人々が消え去った日に遡る。



 つぼが割れ、そこから飛び出した"何か"は屋敷を、人間を呑み込み……今ここに"何か"は落ちてきた。



 今この場所には、何もない。本来は木々がたくさんある森林だったのだが、まるで隕石でも落ちたかのように辺り一帯にクレーターができている。



 だがもちろん隕石など落ちてはいない。木々も地面も、"何か"に呑み込まれただけのことだ。



 非常識な光景に、非常識なのんきな声が響き渡る。つぼから出た直後のそれは、まるで空気のように目に見えない塊であった。つぼに封じられていたはずの、強大な災厄……それが落ちてきたはずだ。



 だがそこにいるのは……何も身にまとっていない人間の、子供だ。だがこの異様な場にただ一人の子供……それがただの人間の子供でないことは、一目瞭然だ。



「ん、どこだろここ……今まで、なにしてたっけ?」



 その子供は眠たそうに目を擦っている。誰ともわからぬ子供だが、その声、短く切り揃えられた髪……子供なので判断はつきにくいが、性別は男であろうことを思わせる。



 さらに、彼には今まで何をしていたかの記憶がないようだ。つまりは"記憶のない少年"だ。



 少年は、歩き出す。どこへ行けばいいのか、どこへ行こうとしているのかもわからないまま。歩く度地面が、草花が、木々が……自身に接触、接近したものが跡形もなく消えゆくのを気にすることもなく。



 その恐ろしい力は……少年自体が、異形の存在であることを示していた。そしてそれは、ありえないだろう見解……その少年自体が、つぼに封じられていた災厄であることを導くもの。



 少年の歩みは止まらない。が、次第に恐ろしい力の効力は消えていく。そのうち、少年が何に接近してもそれは消えなくなっていた。故に、それはもう普通の少年の歩みだ。



 ……一つ結論を出そう。災厄が封じ込められていたつぼが割れたのは、誰による策略でもないし、むしろ誰も故意に割ってなどいない。全ては偶然……偶然誰かがぶつかり、つぼが落ちて割れた。それだけのこと。



 だからこれは、誰が仕掛けたものでもない。偶然がこの事態を引き起こした、それ以上でも以下でもない。



 少年は進む。"空色"を宿らせた瞳を彼方に向けて。



 ------



 これが、オルテリア・サシャターンという一人の少女の過去。そして、彼女が犯した罪だ。



 本当の母親ではない人物に育てられた。この点においては、リーシャ・テルマニンと酷似しているが、決定的に違うところがある。



 リーシャは、血の繋がりがなくとも育ての親であるカーリャと本当の親子のように接していた。対して、オルテリアはどうだろうか。本当の母親ではない……ひどい言葉を投げつけ、それを謝ることもできなかった。



 こんなこと、いくらパートナーであってもリーシャに話せるはずもない。もしもそれを口にしてしまったら、リーシャとの関係が壊れてしまう……そう、いつも感じていた。



 だからオルテリアは、自身の過ちをリーシャに話すつもりはない。リーシャの過去を聞いておきながらそんなの卑怯だ……そう言われたって構わない。



 リーシャに、パートナーに、友に嫌われたくはないから。



 いつか見た、リーシャとカーリャの関係が羨ましかった。自分もああなれたら良かったのにと、どうしてああなってしまったのかと日々悩み続けた。あの頃に戻れたらと、どれほど思ったことか。



 でも、悔やんでも過去には戻れない。だからオルテリアは……今を、未来を精一杯生きると決めたのだ。うるさい奴だと言われても、バカな奴だと言われても構わない。



 言いたいことを正直に言って、したいことを力いっぱいして……そうやって、自分のやりたいように生きてやる。



 そう、決めたから。



「アカリさん、今日も勝負ですわ! 今日こそは負けませんわよー!」



 在りし日の神力学園には毎日、一人の少女の元気な声が響き渡っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ