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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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新しい母と幼なじみ



 不満は募るばかり。一度こっそり外へ出ようとした。だが見つかって、三日間地下に閉じ込められた。食事は与えられたが、暗い部屋の中でネズミや蛇と格闘もした。



 以降、オルテリアが家を抜け出そうと思うことはなくなった。それは同時に、あることが確定した瞬間でもあった。



 オルテリアとユウキ達の約束が叶うことのないまま……三年の月日が流れた。



「ごきげんよう、みなさん」



 その頃にはすっかり、オルテリアもサシャターン家の娘としての自覚が形になっていた。毎朝決められた時間よりも早く起きて、使用人人一人一人に挨拶して回る。



 勉学は同い年どころか高校生にも引けを取らないほどで、言語もすでに五か国をマスターしている。



 十の歳にして、大人顔負けの社交性を持ち、かといって嫌味はなく大人に気に入られる術も持っていた。エリザスにとって、まさに理想の娘にオルテリアはなっていた。



 生活も、慣れというのはあるもので、初めこそ窮屈に感じていた生活も今となっては当たり前のものとなっている。やらなければならないものではなく、なくてはならないものに。



 彼女は学校でも抜きん出ていた。お坊ちゃんお嬢様の集まる学校で、常に学年の上位五には入っていたのだ。だがエリザスは、それでは満足しない。



「サシャターン家の娘なら、常に一番でいなさい」



 そんな母の言葉を、厳しいと思いつつも受け入れないことはなかった。母の理想の娘であるように、オルテリアは努めた。



 だがそんな彼女にも、一つだけ心残りがある。自室の机に向かい、引き出しから写真を引っ張り出す。そこにあったのは施設で、最後にみんなと撮った記念写真だ。



 毎日これを見て、勇気を貰う。みんな、どうしてるだろう。私みたいに、引き取り手が見つかったかな。ユウキはまだ泣き虫かな。カリィとはうまくいってるのかな。



 母には隠している。とはいえ、バレている気もするが……オルテリアの活力になるものとして、残してくれているのだろうか。



 そしてもう一つ、勇気を貰うことがある。



「おはようございます、オルテリア」



 同じ学校に通う、キルデ・オスロ。彼の存在がオルテリアに勇気を与えてくれる。辛いことがあっても、乗り越えていこうと思えるのだ。



 大切な幼なじみ……それが彼だ。正直、いつから一緒にいたから覚えてないのだが。施設にいた頃からだった気もするし、サシャターン家に引き取られてからの気もするし……



「えぇ、おはようですわキルデ」



 だが、そんなものはどうでもいい。彼と会うと勇気を貰えるし、心がぽかぽかする。それだけで充分。



 学校に通ってる間は自由……というわけではなく、やはり名のある学校だからかそれなりにきちんとしていなければいけない。それに送り迎えがあるため、学校帰りに寄り道を、なんてこともできない。



 だから、この日彼がこう言い出した時には目を丸くした。



「オルテリア、キミが昔住んでたという施設、見に行きませんか?」



 それはあまりに唐突な言葉。確かにキルデには施設の話をしたことはある。だが見に行こうなんて、第一に無理に決まってるのにどうして。



「お母様にバレるのが怖いですか? ……大丈夫、私が魔法をかけてあげましょう」



 どうしてか、信じてみようと思った。そして彼とこっそり、授業中抜け出した。こんな悪いこと、今までしてこなかったのに。バレたら……



「……?」



 だがどうしてか、誰も何も言わない。先生の声だけが響く静寂な教室、そこに二人の人間が歩き回っているというのに。



 外に出ても、待ち構えているであろう護衛は声をかけてこない。あり得ない。しかし、あり得ないことが起こっている。



 キルデの魔法に、目を輝かせた。これが授業で聞く『神力』かと聞いたが、彼は違う違うと笑うだけだった。



 誰にもバレない。何も言われない。道行く人にも、声をかけられることはない。まるで私達を"いないもの"であるかのように。何て素敵なんだろう。



 自然と足取りは軽くなる。施設から去って以来通っていなかった道、しかし不思議と道取りはわかる。足が勝手に進んでいく。



 早くみんなに会いたい。こんなにも背は伸びたし、髪だって伸びた。すぐには会いに来れなかったけど、今、約束を果たしに行くから……!



 あの曲がり角を曲がればすぐ。みんなに会ったら何て言おう。元気? 久しぶり? ……いろんな話をしたい!



「……みんな!」



 そして、オルテリアのそれだけのささやかな願いは。



「……え?」



 叶えられることは、なかった。



「……ここ、ですよね」



「えぇ……その、はず……ですのに……」



 膝から、崩れ落ちる。目の前の光景を頭が受け入れられない。道を間違えた? あり得ない。この体が、確かに覚えているのだから。



 一体どうして、何がどうなって、こんなことになっているのか。これは現実なのか?受け入れたくはない。



「みんな……」



 以前……三年前まではそれなりに大きな施設が建っていた場所。そこには……何もなかった。



「どこに、行ったの……?」



 目の前に広がるのは大きな空き地のみ。施設どころか建物すらない、ただただ何もない空き地が広がるだけだった。

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