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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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これは格差社会だ、脂肪の暴力だ



「ねーねー、もっと詳しく教えてよー」



「ちょ、ユメちゃ、くすぐったいですわよ。あははっ」



 むにむにむにむに



 詳細な説明を求むユメちゃんは、背後からオルの胸をむにむにしている。その度にその大きな脂肪の塊は、形を変えていく。



 本人達は楽しそうにキャッキャウフフしている。でも何でだろう……二人ともそんなつもりはまったくないのだろうけど、すごく見せつけられている気がしている。



 わ、私だって少しは……



 手を当ててみる。



「……」



 ペターン……



「ぐ……くぅ……」



 揉むほどもなかった。せいぜいが手のひらに収まる程度……私の小さな手のひらに、収まる程度。収ま……あれ、私これ、以前より小さくなってない? え、やだ。



 この年で成長期通り越しちゃったっての? 嘘でしょ? 嘘だと言ってよアカリちゃん。



 ……べ、別に悲しくないもん。身軽に動くためにはむしろあんな脂肪の塊は邪魔で、だからこの……平らな方が、戦闘には有利だもん。ホントだもん。強がりじゃないもん。羨ましくないもん。



 そこでふと、思い出す。



 ……私、オルちゃんに手合わせ試合で勝ったこと一度でもあったっけなぁ……



「ん、リーさんどうしましたの? そんな、ん、自分には手に入れられない高級、おもちゃを見た、ん、期待と絶望の入り交じった顔は」



 揉み続けられて妙に色っぽい声を出すオルちゃんが、私の今の表情を細かに伝えてくる。あぁ、今私そんな顔してるんだ。



 それは多分合ってるだろう。私もいずれはあんな身体に……という思いが完全になくなったわけじゃないけど、一方でもう無理じゃないかなとも思う。



「……」



「な、何ですの? そんな人の体をなめ回すように」



 じーっと見つめる。



 年相応、いやそれ以上に発達した身体。ぼんきゅぼんでスタイルに関して言うことなし。顔だってきれい系だし、手足もすらっとしてる。いい身体してるねえこりゃ男はほっときませんようん。



 それに……強いし、優しいし、明るいし、賑やかだし、ポジティブだし、モテるだろうなって要素はてんこ盛りだ。



 加えて、幼なじみが敵側の悪魔で、彼を止めるために旅をしている……明確な理由のある行動理由。



 ……あれ、これ、オルちゃんすごい主人公っぽいな。



 私といえばちんちくりんで、弱いし、人見知りだし、ネガティブだし……唯一天使と人間のハーフという、他にはない要所があるものの、それだけだ。



「いや……持つ者と持たざる者の差を認識したっていうか……」



「はぁ……」



 ありゃー、これは嫉妬の念すら湧かないや。完敗だね。別に勝負してないけど。



 そんな私の肩に、手が置かれる。オル胸(オルちゃんのお胸略称)を堪能し終えたユメちゃんだった。彼女はうんうんと頷きながら……



「大丈夫、私達にだって、需要があるって言ってくれる人はきっといるよ」



 と、微妙に嬉しくない励まし(?)の言葉をかけてくる。いやそれ、ほとんどロリコンだよね?



 こうして実際に見ると、私よりもユメちゃんの方が少しスタイル良く見えるし……ユメちゃんの方が私より成長期だし……その励ましがまたつらい。



 ユメちゃん自体は、そのことを自覚してないみたいだけど。



「二人とも、さっきから何の話をしてますの?」



 と、どうやら会話の内容を読み取れてないらしいオルちゃんが首を傾げている。あぁ、オル胸がお湯に浮かんでるよ。



「オル姉は綺麗だしモテそうだなーって話」



 さすがにスタイル云々の話をするのは抵抗があったようで、とはいえ無関係でもない話を引っ張り出す。



 事実、この中で一番モテるのはオルちゃんだろうなーとは思うわけだし。



「そ、そんなことないですわよ。お二人こそ、何かこう小動物みたいで愛らしいし、モテるはずですわよ?」



 少し照れているのか頬を染めつつ、逆に私達もであると返答。これは多分、お世辞とかじゃないんだろうなぁ。



 しかし、小動物みたいって……それ要するに体が幼いっていう意味じゃないですかね?



「むぅう……何か勝者の余裕を感じる」



「何ですのそれ!?」



「そんなおっきい爆弾ぶら下げて勝ち組のつもりなんでしょ!」



「だから何の話!?」



「嫌味だ! 脂肪の暴力だよ!」



「そうだそうだ!」



「初めて聞きましたわよそんなワード!」




 再び、ユメちゃんがオルちゃんに飛びかかる。それに驚いたオルちゃんは驚きつつ避けることもなく、楽しげに笑っている。



 巻き込まれないように何気に離れて見守って笑っていた私も、いつの間にか巻き込まれて体をまさぐられてしまう。



辺りにはお湯が跳ねる音、キャッキャと三人が騒ぐ笑い声、それらが響き渡る。ここ最近では聞くことのできなかったもの……いわゆる、幸せの音というやつだろう。



 こんな状況だけど……いや、こんな状況だからこそ、みんなそれぞれ思いっきり笑いあった。これまで溜めていたものを、吐き出すように。



 アカリちゃんもいて、エルシャもいて……そんな光景が、あったかもしれない。そう考えないわけではないが、今は、三人で存分に楽しむことを考えよう。



 茨の道の中にも、小さな幸せを見つけていこう。



 だから、私は気づかなかった……



……



「はぁ……」



「ねえドッ兄ちゃん、僕も温泉入りたいな」



「すまない、彼女達が上がるまで待ってくれないか。一人で居たら、何かこう、いろんな誘惑に負けてしまいそうで」



「ゆうわく」



「ちょっと自分の中で戦ってるから。お願い一人にしないで。一人になったら負けそうなんで」



 その裏側で、ちょっとした戦いが起こっていたのを。

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