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神殺しの弾丸  作者: 白い彗星
大罪魔獣
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好きじゃなかったけど好きになった理由



「ふはぁ……」



「はぁぁん……」



「ふにゃあ~……」



 気の抜けた三人の声が重なり、空へと消えていく。これは私とオルちゃん、それとユメちゃんによるものだ。三人が揃いも揃って、こんな状況にも関わらず何でこうもだらしない声を漏らしているかというと……



「それにしても、まさか温泉を発見できるなんてねえ」



「ですわ~……」



 そう、その理由は何と、温泉を見つけたからだ。正確には、見つけた温泉に今、三人共が肩まで浸かっているからだ。程よい温度、肩まで湯に浸かれるこの贅沢さ……何より、久しぶりのお風呂だ。



 思わず腑抜けてしまうのも、許してもらいたい。



「でもまさか、こんなところで温泉に浸かれるなんて~……」



「ですわ~……」



 他二名も、満足そうである。確かに、まさかこんな世界になっている中で、温泉を発見できるなんて思わなかったもんなあ。



 近くに魔の気配もないし、こうして伸び伸び温泉に浸かっていられるわけだ。それに、こうして女三人でという空間はとてもリラックスできる。やっぱり、旅の仲間とは言っても異性の前じゃ出せない面もあるしね。



 その異性……エドさんとスカイくんはというと、離れた所で見張りをしてもらっている。スカイくんはまあ子供だし、エドさんは覗きなんてしないだろうし安心できる。



「でもちょっと意外かなー……いつも腕に抱いてるから、てっきりゴンちゃんもつれて入るのかと思ってたよー」



「あの子最近、スカイくんとも仲良いみたいなんだよねー。それと、女水入らずってことを考慮してくれたみたいー」



「へー……初めの頃はあんまり仲良くなかったのにねえー」



「ですわ~……」



 魔物であるゴンちゃんことゴンゾウは、スカイくんに預けてきたらしい。最初の頃はゴンちゃんは噛みついたりとスカイくんになついてなかった様子だが、最近ではすっかり仲良しだ。



 ゴンちゃんからしてみれは、スカイくんは自分と合体し、魔力を吸い取る存在といったところだろう。それでも、時間をかけて接しているうちに仲良くなっていったようだ。



「ま、仲良きことはいいことだよねー」



「ですわ~……」



 はぁー……すんごいくつろいでるぅ。後で男二人&一匹と変わらないといけないってのに、こんなんじゃあ湯から上がった後も余韻に浸りまくっちゃいそうだよぉ。



「それにしてもさあ……オル姉、ホントおっきいよねえ」



「ですわ……え、何がですの?」



 何だかさっきからおんなじことしか言ってなかったように感じるオルちゃんが、首を傾げて反応。わあ、何だか濡れた髪が色っぽい。頬も僅かに赤くなってるし。



 半年前ばっさり短くした彼女の青髪は、今ではすっかり肩辺りまで伸びている。



「むぅ……これで少ししか年が違わないなんて。リー姉なんて同い年なのに」



「おい」



 目を細め、ユメちゃんは不満だと言わんばかりに頬を膨らませている。年齢のことを言っているのだろうが、さりげなく私ディスられた気がする。ユメちゃんはまだ、年下だけど私は……



 改めて、隣の青髪パートナーの姿を見る。湯に浸かっているとはいえ露出した肌は白くきれいなのがわかり、まさしく『水も滴るイイ女』というやつだろう。そして……その、体つきがもう反則だ。



 胸は大きいし、締まるとこは締まってるし、胸は大きいし、何かそこにあるだけで色気があるし、胸は大きいし、胸は大きいし……



 対して私は……はあ。一言でいえば、お子様体型。胸だって……ちょっと疑ってたけど、今こうして見るとやっぱりユメちゃんにすら負けている気がするし。ちくしょう、何だよこの格差。私が何したっていうんだよう。



「……えい!」



「わひゃ!?」



 突然、ユメちゃんが後ろからオルちゃんに抱き着く。そんで、どさくさに紛れてその大きな胸をわしづかみにしている。うっわ、すっごい柔らかそう。手が埋まってるじゃん。しぼめばいいのに。



「ちょっと、ユメちゃん!」



 キャッキャウフフと微笑ましい光景が広がっている。うんうん、眼福眼福。



 ぱしゃぱしゃと、水の音が響く。そんな折、オルちゃんの体をまさぐっていたユメちゃんが、青くきれいな髪を手に取る。



「そういえばオル姉って、長髪だったんだよね。何で切っちゃったの?」



 事情を知らないが故の質問。それを受け、オルちゃんは考えるように唸っていた。



「これはまあ……何と言えばいいのか。自分への、覚悟を示すため……でしょうかね」



 問われ、髪の毛を指に絡ませて弄っている。本人も言うように、何と言葉を整理すればいいのかわかっていない様子だ。困ったように笑う様子は、その仕草も相まって何だかとても妖艶に見える。



「ふむ……?」



 返ってきた答えの意味がわからないユメちゃんは、眉を寄せてかわいらしく首を傾げている。彼女も彼女で、こうして見ると未発達な成長途中故のちょっと危険な魅力を孕んだ色気がある。……っておっさんか私は。



 ユメちゃんは、オルちゃんの立派なお胸をむにむにしながらも、言葉の意味を探ろうと思考しているようだ。けど、多分その答えは出てこないだろう。



 だって、これは私にしか話してくれたことがないから。オルちゃんから、髪を切ってくれと頼まれたときに話してくれた、彼女が内に秘めていた思い。ヒロトだってアカリちゃんだって、知らないことだ。



 ……オルちゃんは、実は初めの頃は、長い髪が好きではなかったのだという。長くて邪魔だし、暑いし。羨ましがられることはあるけど、本人としてはうっとうしいことこの上なかったのだと。オシャレとして伸ばしてみてはと親から進められたらしいので、切ろうにも思い切れなかったらしい。



 だけど……一つの転機が起こった。



『長い髪……?えぇ、私は好きですよ』



 いつの頃か、そんなことを言われたのだという。誰でもない、幼なじみであるキルデから。その瞬間から、オルちゃんはあまり好きではなかった長い髪が、好きになったのだという。その話を聞いた私は、思わずニタニタしてしまったものだ。



 ……とはいえ、幼なじみというのはキルデが人間として過ごすためにオルちゃんに植え付けた偽の記憶だ。だからもちろん、それも偽りの記憶であるという可能性もあるのだ。



 でも……オルちゃんは、その時の胸が温かくなった気持ちを、覚えているのだという。忘れていない、偽りではない。あの時感じた気持ちは、決して嘘ではないと。



 好きではなかったそれを好きになった……甘くも微笑ましいエピソードを持つ、長く伸ばした青色の髪。それほどまでに彼女の中で大切な想いの詰まった髪を、ばっさり切ったのだ。あの、人魔戦争の後に。



 キルデが好きと言った髪を、切り落とした……それこそが、オルちゃんの覚悟なのだ。オルちゃんは、キルデと戦うことになる覚悟を決め、過去の想いを断ち切ったのだろう。



 ……まあ、キルデに対するオルちゃんの想いは以前と変わってはいないようだから、決別とかそういった類のものとはまた、違うのだろうけど。

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